君が払い、僕は吐く。

第1話

廊下ですれ違う彼女は

いつもこちらに目をやることはなく、


まるで知らない人の横を通り抜けるかのように

しらんぷりの表情で。



実際、クラスの違う僕らは傍から見たら

なんの接点もない同学年ってとこだろうから、


その対応はあながち

間違いではないのかもしれないけれど。




ただ彼女と一緒に通り過ぎていく

甘いシャンプーの香りにつれられて

思わず振り返りそうになるのを何度こらえたか。



「見ろよ、3組の松下さん。やっぱ綺麗だよなぁー」



隣を歩く僕の友達が代わりに振り返って

彼女の背中を視線で追うと深くため息をついた。



「……そうだね」



一言、上辺っぽい返事を返して僕は笑う。







僕の中にはルールがある。




『他人の前では、僕は彼女に興味がない』

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