Untitled 1
第1話
「じゃぁ、付き合う?」
それは赤松くんの口癖みたいなものだった。
ここで『うん、いいよ』と言っても、
『もー冗談やめてよー』と言っても結局は同じ、
赤松くんはちょっと愉快そうに笑うだけ。
「…テストの点数で付き合うの?」
「だって井上さん43点でしょ?」
「あんまり大きい声で言わないで」
「俺57点だもん」
「"だもん"って。」
「ほら、足したら100点になるよ」
「ウワーステキー」
「井上さん棒読み」
やっぱり今回も赤松くんはふわりと微笑んだだけだった。
彼のその『付き合う?』というキメゼリフは100%も200%も冗談なわけであって、
むしろそれは"軽い"というイメージより"硬派"な印象を人に与える。
だって赤松くんはそこそこモテるんだ。
…平均の中の平均である私が偉そうに上から言えた口じゃないけど。
高校に入って2年。
赤松くんに告白する女の子は後を絶たないのに、
その中で栄光を勝ち取れた子はまだ一人もいない。
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