第7話 兄さんとお肉

 兄さんはとかく好き嫌いが多い。

 アレルギーがあるわけでなく、食わず嫌いだ。


 今日の昼は外食にしようということになって、家族揃って近所のラーメン屋に来た。


「私は味噌チャーシュー」


「おれも味噌チャーシュー」


「俺は醤油ラーメン」


 お父さんは食の好みが私と被ってるから悩まず即決する。兄さんもあまり悩まない。お母さんはメニューを開いてうんうん唸っている。


「日替わり麻婆麺美味しいのよね。ううん、でも海老塩ラーメンも、それとも……」


 放っておこう。この分だとあと十分はかかる。


「これやる」


 兄さんは注文したラーメンが運ばれて来たら、食べる前にまずチャーシューをひと欠片も残らずお父さんのどんぶりに引っ越しさせる。


「うん、やっぱり餃子は焼きたてが一番だな」


 そう言って、兄さんは挽き肉たっぷりの餃子を頬張る。


 肉嫌いの人って、わからない。

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