ぬくもりの静けさ

天川裕司

ぬくもりの静けさ

タイトル:ぬくもりの静けさ


俺は妻を愛している。

本当によくできた女で、

俺にとってはもったいないほどの貞淑な人。


無駄口は叩かず、

俺の帰りをいつも待って居てくれ、

俺がどんな気分で居ても

変わらず優しく見守ってくれ、

俺たちが住むこの家も

ちゃんと守り続けてきてくれた。


「さぁ寝ようか♪」

「ええ♪」


今日も一緒にぐっすり眠る。

平凡こそ、何にも替え難い財産。

こんなことを何度もつぶやいた先人が居たが

その気持ち、今になってはっきりわかる。

俺もきっと、大人になれたんだろう。


昔はよく妻に迷惑をかけていた。

それでもずっと俺についてきてくれた。

俺はたとえ生まれ変わっても

妻のことを愛するだろう。


(トラブル)


それはそうと最近、

俺たちの周りでトラブルが起きていた。


「またか…」

郵便ポストを覗くとまた手紙。

わけのわからない言葉がズラズラ並べられてあり、

その内容はどちらかと言うと俺を誘惑するもの。


手紙の差出人は何となく知っている。

女だ。

俺の家の近所に住んで居る女で、

何かと言うと少し前まで

俺の周りをよくうろついていたあの女。


手紙はクシャクシャにしてすぐ捨てた。

もう何十通もの手紙が

ポストに入れられていたんだ。

これまで数ヶ月、いや1年ほどかもしれない。

とにかくしつこい。


まるでストーカーだ。

女のストーカー。

そう言う輩はいざとなれば何をするかわからない。


俺は仕事柄、いつも朝早く家を出て夜遅くに帰る。

つまりその間、家には妻1人となり、

その間にあいつが何か仕掛けてくるかもわからない。


それを無闇に恐れた俺は、

自分たちの生活を守ろうとする当然の権利すら

満足に果たせなかった。

やはり、俺は妻の身を案じてしまう。

夫として当然のこと。


しかしこう続くとそうも言ってられない。

次にまた目の前に現れたらその時こそ、

あいつに引導を渡してやろうとそう思った。


でもその日が来るのは早かった。

あいつが2度目に俺の前に現れ、

自分の思う処をただ一辺倒に言ってきた。

だから俺はもう我慢せず、

こう怒鳴ってやった。


「もうイイ加減にしろ!これ以上しつこくすると俺にも考えがあるぞ。通報する。お前がしてきたことを全部警察に通報して、壁の向こうに葬ってやろうか!」


するとこいつは何を思ったか。

俺の背後を指差しこう言った。


女「もう、目を覚まして。あれ、あなたに見えないの?奥さんをあのままにして、本当に良いとでも…?」


俺の背後には、ドアが開けられたままの玄関。

その玄関から少し中を覗くと

さっき俺が通路に出した椅子の上に

妻が向こう向けに座ってる。

洗面所で髪をとかしてやったので

リビングに運ぼうとしていたところ。


「……俺の妻がどうした?お前に関係ないだろ」


女「…もう動かないでしょ…」


動画はこちら(^^♪

(※YouTubeの不具合にて音声は無音です)

https://www.youtube.com/watch?v=0LUpa0FWB5E

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ぬくもりの静けさ 天川裕司 @tenkawayuji

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