光と影の守護者
ruki
プロローグ
かすかな風が吹き抜ける教会の庭。
静寂を破るのは、鳥のさえずりと、時折遠くで響く鐘の音だけだった。
その場にただずむ女性は、瞳を閉じ、祈りを捧げている。
その姿はまるでこの世の穢れから切り離されたかのようで、どこか神秘的な空気を漂わせていた。
彼女の声は、冷たさと温かさが絶妙に入り混じり、敵に向けられるときは鋭い刃のような迫力を放ち、どこか哀愁を秘めている。
彼女の名はサーリャ。
日々教会で祈りを捧げる信徒として人々に親しまれるが、その裏では、静かに人々を脅かす影を払う役目を果たしている。
だが、その正体を知る者は、誰一人としていない。
「ねぇ、最近この辺り、妙なことが起きてるの、知ってる?」
サーリャが話し始めた。
近くの村で奇妙な目撃談が増えていること、人々が行方不明になること。
それが彼女の耳に届くたびに胸騒ぎがする、と。
「まぁ、いつものことでしょ?怖い話でも作ってるの?」
僕が軽く笑うと、彼女は眉をひそめた。
「ねぇ、真面目に聞いて。もし何かあったら、すぐに逃げるのよ。絶対に。」
近頃、この平穏を揺るがす存在が再び現れる気配を感じている。
それがただの勘違いであればよい、と彼女は願っている。
しかし、願いとは裏腹に、その日が近づいていることを彼女は本能で察していた。
その瞬間、ふとサーリャの瞳に過去の記憶がよぎった。
遠い昔、あなたがまだ子供の頃。
まだこの教会のことも、彼女の力の本当の意味も知らなかった頃、あなたは命を狙われていた。
無力な子供のままで、何の防衛もできずに。
その時に命をかけて守ったその記憶は、あなたは知らず、そしてサーリャもその話を口にすることはなかった。
それがあなたにとっての最初のサーリャからの「助け」だった。
その時を思い出し、サーリャは一瞬だけ、目を伏せた。彼女の中で、忘れられない記憶がひっそりと息づいている。
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