許嫁をNTRされたのだが、代わりにNTR男の妹が『責任』を果たすため今晩も夜這いにしに来る
田中又雄
第1話 許嫁がNTRられた日
「おぎゃぁ!」「おぎゃぁ!」
この世に生を受けてから1時間後には隣に居た。
双子ではないが同じ日の同じ場所の同じ時刻に生まれて、しかも家も隣同士なんて、まさに運命としか言いようがなかった。
そうして、まさに兄妹のような関係ですくすく育っていった俺たち。
喧嘩なんて一度もしたことがなくて、幼稚園に行くのも帰ってくるのも、帰ってきた後もお互いの家の庭で遊んだり、まさにずっと一緒だった。
その頃にはもう、親同士では結婚するといいねなんていう公認の許嫁のようになっていた。
小学生の高学年頃になると、お互いを異性として意識するようになったが、好き同士であったのでそのまま付き合うようになり、中学2年の頃に初めての大人の階段を2人で登った。
それから、さらにお互いのことが好きになっていき、同じ高校に通い、なかば熟年夫婦でありながら若さも忘れていない最高な関係性を築き、あと1年もすればお互いに18歳となりそのまま結婚するとそう...思っていた。
そんなある日のことだった。
◇6月15日
「でさ、そしたら
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093091795767743
雨宮雪は俺の自慢の彼女である。
可愛くて、頭が良くて、優しくて、話もあって、趣味もあって、妹のような感覚ではあるがそれでいてどこか恋人らしい距離感もある、恋人として100点だった。
もちろん、その彼女の隣にいるべき男として、俺もそれなりに努力はしている。
顔は...まぁ中の中だが、勉強だってなんとか同じ大学に行けるように、毎日頑張っている。
最近はオシャレにも気を使うようになったし、不満なんてないと思っていたのだが...。
どうやら、彼女の中では何かあるらしい。
「...なんかあった?」と、話を切り上げて質問すると、「え!?いや...何も?」と言われた。
明らかに動揺していた。
けど、言いたくないことなら無理に聞くのもあれだな...。
数日経てば、元に戻るかと思っていた。
しかし、どこか違和感というかぎこちなさ、妙な距離感は日に日に増していき、俺の中でも不安が募って行った。
そして、それから1週間後の帰り道のこと。
何もない。何もないんだと思いながら、平然のフリしていつものように話していた。
だが、帰ってくるのは全部空返事。
「...あ、あのさ!新婚旅行だけどさ!」
そう切り出した瞬間、「ごめん...ちょっと話があるんだよね」とそう言われた。
もう嫌な予感しかなかった。
それでも断ったところで何が変わるわけでもないし、もしかしたら何か俺に変えるべきことがあるなら...。
「...分かった」
そうして、家の近くの公園のベンチに2人で座る。
何回も、何十回も、何百回も遊んだことのある思い出の公園。
夕焼けに照らされながら、雪が切り出す。
「...私、他に好きな人ができたの」
それは...考えられる中で一番最悪の未来だった。
「...お、俺じゃあ...ダメなの?俺のどこがダメだったのかな?さ、最近は勉強も頑張ってて...」
「...うん。ごめん」
「オシャレだって、気を遣ってさ!色々...服も2人で買いに行って...!」
「...うん。ごめん」
「これまでだって...ずっと...ずっと...」と、涙が込み上げてきそうになったところで、雪は立ち上がってこう言った。
「もう...無理。だって...好きなんだもん...」
「でも、でも!」
「私は...!もう...その人と...そういうこともしちゃったから!それに...唯斗よりも全然...気持ち良かったし...だから!」
...は?何だよ...それ...。
別れてからとかじゃなくて...同時並行で...やってたのかよ...。
...いつから?
ずっと、ずっと、ずっと...俺のこと騙して...!
怒りと共に悲しさが込み上げて、怒りたいのに涙が込み上げてうまく喋られなかった。
「おれっ...ッッ...だっッてぇっ...なんでッ...っ!」
「そういうことだから。ごめん」
すると、雪はそのまま立ち上がって、家に入って行った。
俺はただその姿を見送ることしかできなかった。
そのあとは涙が枯れるまで1人で泣いて、ボロボロの状態で家に帰った。
その日はご飯も食べずに眠った。
◇翌日
空腹で目を覚ます。
家族には色々と聞かれたが、一言「雪と別れた」とだけ言った。
本当はきっと深掘りをしたかったんだろうけど、昨日の俺と今の俺を見て、それ以上の詮索はされなかった。
空腹のはずがご飯は喉を通らなかった。
頭が真っ白なまま、それでも癖でいつもの時間に家を出ると、雪と...雪の肩をいやらしく触る...1つ上の先輩である
...嘘だろ。よりにもよってあんなやつなのかよ。
高島優太郎。
高校3年で一番モテるイケメンのクソ男。
金髪ショートヘアでいかにもな見た目をいているが、家はお金持ちでスポーツ万能でしかも頭もいい。
しかし、女癖が悪く、1ヶ月に一回レベルで彼女が変わるような男だった。
すると、俺の目が合うと見せつけるように雪の胸を揉んだ。
雪は...嫌がってるようには見えなかった。
その瞬間、ようやく俺の中の何かが壊れた。
ここまでむしろよく耐えた方だった。
玄関の扉はそのまま閉めて、ゆっくりと自分の部屋に戻って行った。
そうして、気絶するようにベッドに倒れ込んで、次の瞬間枕に向かって大声で叫んだ。
なんて言ったかは覚えていない。
もう...声が枯れるまで叫んだ。
その日は学校を休んだ。
いや、次の日も...その次の日も。
友達からもいっぱいRINEが来たし、家に来てくれる人もいた。
もちろん、高島と雪の姿を見ているはずだからなんとなくの事情は察してくれているようだった。
それでも、閉した心は開くことはなく、結局1週間ほど学校を休んだ。
そんなある日の夜のことだった。
◇
眠たいはずなのに寝ることもできず、ベッドで横になっていると、窓ガラスをノックする音が聞こえる。
「...」
風か?それとも動物か。
本来ならもっと驚いたり怖がるところだが、すでにそんな元気もない。
しかし、ノックは続く。
仕方なく起き上がり、カーテンを開けるとそこに立っていたのは金髪の美少女だった。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093091798844091
「...」
「あっ、えっと...突然すみません。あの...初めまして。高島...
高島と聞いてすぐにピンときた。
あいつの...妹か?
すぐにカーテンを閉めようとすると、「待ってください。私は...責任を取りきました」と、言った。
次の更新予定
許嫁をNTRされたのだが、代わりにNTR男の妹が『責任』を果たすため今晩も夜這いにしに来る 田中又雄 @tanakamatao01
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