とある自称コミュ障が救われた話
安野 夢
同類
俺、河城悠馬(16)は周りとあまり馴染むことができず、昼休み中に絶賛独りで数学をやっている。
周りの奴らは生物学でいうコロニーみたいな感じで複数のグループで会話しているようだ。
まあ俺は陰キャの部類だし、独りでいることが逆に心地良いい位に感じ始めてきた。
あれは確か小学5年生に進級したとき。
周りが思春期に入るか入らないかギリギリのところだ。
その時期から周りと合わせることが難しくなってきた。
具体的にどんなことかって?
まず1つ目は会話だ。
話したくてもどうしてもつっかえてしまうことが起きたり、目を見て会話ができないということだ。
2つ目は動作だ。
自分1人ではこなせることが他人が干渉することによって失敗が増えてしまうことだ。
3つ目は頭脳だ。
俺は小学生の頃から天才と言われる部類に属していた。
ゆえに、会話のレベルが違いすぎて受け入れてくれる人がいなくなってしまった。
これらの要因のせいで中学に入学してからは友達は1人もできなかった。
それどころかイジメられるようにまでなってしまった。
まあ、そんなこんなでいろいろあったわけだ。
「う〜む、今日はやっぱり数学オリンピック決勝の問題をやろうかな…。」
「河城さん、今日も数学やっているの?」
「み、宮本さん。こ、こんにちは。」
彼女は宮本 佳苗、クラスメイトで学校内で5本指に入るほどの美貌の持ち主である。
そして、河城に声をかける唯一のクラスメイトだ。
「挨拶とかいいから返事をしなさいよ。」
「ご、ごめん。」
「すぐ謝らない!男なんだから。」
「はい・・・。」
なんでいつも僕なんかに関わって来るんだろ・・・。
僕なんて陰キャ中の陰キャなのに。
「で?なんの問題をやっているの?」
「え・・・と、その・・・。」
「何?見せてみなさいよ。」
「あッ!ちょっと・・・。」
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問3 正の整数に対して定義され正の整数値をとる関数fであって,任意の正の整数m,nに対して
m²+f(n)²+(m-f(n))²≧f(m)²+n²
を満たすものを求めよ
(数オリ 本戦2020年より)
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「な、何よこれ・・・。あなたはこれ解けるの!?」
彼女の大きな声に皆が視線を向ける。
さっきまで賑やかだった教室は一瞬にして静まり返った。
しまった。見られてしまった。
入学してから3ヶ月と12日5時間・・・。ここまでバレずにやれたのに出し方を考えていてしまい忘れてしまった。
これからどうやって学校で過ごせば・・・。
これから天才なのに会話もろくにできないやついるぞ!、って言われてまたイジメが・・・。
どうしたら・・・。
「ねえ!聞いているの!?私は解けるか解けないかを質問しているんですけど!!」
「と、解けますから!気にしないでください!」
「あら、ようやく私としっかりと会話してくれた。」
「「「え?」」」
見ていた全員が声を揃えて言った。
中には『そう言えばあいつとは全然話せてなかったな』という声や『彼って今までなんで一緒に行動してくれなかったのかしら?』という声が聞こえてくる。
「どういうことですか?」
「だってあなた入学してから誰とも話とかしていなかったじゃない。」
「別にそれがどうしたって言うんですか・・・。」
「多分あなたは私と同じだと思ったからよ。」
「それは一体どういうい」
タイミングが悪く予鈴がなってしまった。
膠着状態だったこの教室の雰囲気も同時に授業の準備等をするために忙しない雰囲気へと変わった。
「放課後、あんた歩きでしょ。ちょっと付き合いなさい。」
「は、はい。」
クソ!反射的に返事をしてしまった。
それもこんな陽キャレベルMAXな人と帰るとなんてなったらどれだけの反感を買うことか・・・。
それにしても 多分あなたは私と同じだと思ったからって本当にどんな意味で言ったんだか・・・。
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全ての授業が終わり校門を出ようとしたとき、そこには宮本が待っていた。
先に女子たちと出たはずなのになぜここにいるのか、と考えているうちに宮本に捕まってしまった。
「約束通り、一緒に帰ってもらうわよ。」
「はい・・・。」
残りの3校時は数学や物理、化学だったから精神的にはよかったものの・・・。
いざ、この時間がやって来てしまうとなると心臓が持ちそうにない。
「私が言ったこと覚えているわよね?」
「お、同じ存在だっていうこと?」
「そうよ、あなたと私は同じなのよ。あなた、周りと関わることが苦手でしょう?」
「ッ」
「無理に言わなくていいわ。だって、昔の私だってそうだったんだから・・・。」
もし、同じだったんならなんでこんなにも人と付き合うことができるんだ?
「どうして人と関われるか?今そう考えたでしょ?それは自分に強要しているからよ。会話している途中私の話し方がおかしいところがあったでしょ?」
確かに話し方が全然違ったり、使い方がおかしいところはあったがそれがなんの関わりがあるんだか。
それに強要って。そんなの生きづらい以外ないじゃないか。
「私はね、一回強く当たると自分をうまくコントロールできないのよ。かといって話すことだって苦手だからとても辛かった。」
「それだったらなんで?」
「それでも人と関わるということは自分にはない新しい世界を創造するために必要なことだと感じたからよ。数学だってそうでしょう?他の数学者と触れ合う事によって今まで知られていなかった法則や計算方法が自分の世界に創造されるんだから。」
「確かにそうだけど・・・。じゃあ僕はどうしろって言うんだよ!!今日のことでクラス内ではどんな目で見られているかわからないのに・・・。」
「それだったら話してみればいいじゃない。」
そんな簡単に人と会話ができれば楽だよ!って言いたいが頑張ればできるとかで済まされそうなので我慢した。
「わかった。でもなんかあったらどうにかしてよね。」
「わかっているわよ。」
そう話すと彼女は自転車にまたがりすぐに帰ってしまった。
さて、本当に明日が心配になってきた・・・。
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