男尊女卑
縞間かおる
第1話
「女は賢く育てるな!」と言うのが私の故郷の通例だ。
私の親もその例外ではなく……私が専門学校へ進学する事すらいい顔はしなかった。
だから卒業した私は故郷を離れ“都会”の会社へ就職した。
それほどまでにこの“呪縛”から逃れたかったのに……私は既にこの呪縛に蝕まれていた様だ。
「恋人がいます」
最初に告白されたのは同期の男の子からだった。
だから私は故郷のカレを想い、こう言ってお断りした。
数か月後、その男の子とお付き合いを始めたのは経理課に配属になった同期のコで……四年経ってそのコは育休に入った。
やっぱり気は引けたのだが……他の同期の子に誘われ、ベビーを見に彼女達の新居へお邪魔した。
そう!子供が産まれたのをきっかけに双方の親たちが援助し、西東京市内で3LDKの新築一戸建てを購入したのだ。
「ああこれが新築のにおいかあ~」なんて思いながら可愛いベビーを見せてもらったりしていたのだが……新米パパたる“同期くん”が何とも甲斐甲斐しいのに少なからず驚いた。
そんな訳で、お暇した帰りの道すがら同期のコに
「〇〇くんって……家ではあんなに甲斐甲斐しいんだ!」って感想を洩らしたら
「別に普通じゃない? ウチのダンナだってあれくらいするわよ」って返されて……
私、『ええええ??!!』って心の中で叫んでた!
だって男の人って『タテの物をヨコにもしない』でしょ?!
私の……(今は元になってしまったけど)カレだって!!
たまに気が向いたら何かしてくれるくらいだったし……
この私の感覚って!!
ひょっとしておかしいの??!!
私、電車の中で……「大丈夫?」って同期のコが覗き込んでくれるくらいにクラクラしてた。
実は……
物心ついた時から周りにいた男共が普通じゃなかったんだ!!
だから「女は賢く育てるな!」なんて事を平気で言うんだ!!
そう!!
私は悪しき慣習に毒されていた!!
「次に故郷へ帰るのは親の死に目に会う時でいい!!」
こんな縁起でも無い言葉が頭に浮かぶ位に……
私は固く決心していた。
男尊女卑 縞間かおる @kurosirokaede
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