旅の始まり

 まだよるの明けない暗闇の中、フード付きのマントを身に着けて森の奥深くを歩く者達の姿があった。そのうちの一人は大猫の背に跨っている。大猫の背に乗る女性の名はレティシア・ファラ・アルテナーハ。ルセリアランドと呼ばれる地の小国であるアルテナーハ王国の王女であった。レティシアの周りに居る者達はアルテナーハ王国の国王バイロンに任命され王女レティシアの友人でもあるプリンセスガードと呼ばれる護衛の者達だった。ルーンナイトと呼ばれる魔法剣を扱う騎士リアナ、神聖魔法を使い優れた剣の腕を持つ騎士カイル、格闘術に優れた騎士で異国の者の血を継ぐリリアン、6属性の魔法に長けた魔術師アイリーン、そしてアルテナーハ王国の精鋭弓歩兵隊であるレンジャー隊の訓練を受けたエリート兵のアルフ、そして大猫のネフェは病に倒れたレティシアの父バイロンの病気を治すため秘密裏にアルティア教会の失われた聖杯とドラゴンの血を手にれる為王国を後に北の港へと向かっていた。


 「アルフ、こんな森に行く必要が有ったの?」


 「うん、リアナ。街道や開けた道を行ってたら直ぐに王国の人達に見つかって連れ戻されちゃうよ。」


 「しかし、モンスター達も出てきそうだな。」


 「出てきたら打ちのめすまでヨ。」


 「はぁはぁ、、、、。」


 「大丈夫ですか?アイリーン」


 「アイリーン、お前本当に体力ないな。レティシアに心配掛けさせてたらプリンセスガード失格だろ。魔法ばかりでなく体を動かした方がいいぜ!」


 「あんたみたいな体力バカの脳筋なんてお断りよ!それにカイル、あんたは別の意味で心配よ!」


 「すみません。私ばかり。」


 「レティシア、あんたは気にしなくていいわよ。」


 「そうだよ。レティシア、私達は友人でありあなたのプリンセスガードだもの」


 「ありがとうございます。リアナ、アイリーン。」


 「アイリーンも限界みたいだから今日はここで野営しよぜ。」


 アルフがテントを張り火を熾すとレティシア達と大猫のネフェは火の回りを囲んで干し肉を食べだす。


 「レティシア様こんなものしかなくてすみません。これから野営するときは狩りをしますので。」


 「ありがとうございます。アルフ」

 

 「うまいぜ!この干し肉」


 「ミャーー」


 「何よ?ネフェあんたも欲しいの?」


 ネフェはアイリーンの横に行儀よく座り様子を見ていた。


 「仕方ないわね!ほら」


 アイリーンがネフェの口の方へ干し肉を差し出すとネフェは夢中でたべた。食べ終えたネフェは今度はカイルの隣に座る。


 「なんだよ!ネフェはこれは俺の分だぜ!!」


 「ニャ―ーン!」

 

 「そんな鳴き声にそんな顔したってだめだ。」


 「ネフェ、こっちにおいで。」


 リアナがネフェを呼ぶとリアナの近くにいき行儀よく座った。


 「はい。ネフェこれも食べていいよ。」


 「ミャーー」


 食べ終えたネフェはリアナの横でゴロゴロと喉をならしだした後、毛づくろいをし出した。


 「皆、レティシア様。見張りはボクとネフェに任せて休んでください。」


 「悪いな!アルフ」


 「途中で交代するヨ」


 「何かあったらすぐに起こしてね。」


 「ありがとうございます。アルフ。」


 五人がテントで寝てる間アルフは火をの様子を見ていた。横にはネフェが丸くなって寝ている。少し経つとネフェが急に起き出して匂いを嗅ぎだす。


 (野生の獣かモンスターかな?)


 アルフはカイル達を起こすか考えているとネフェが走り出した。丁度交代の時間になり。リリアンが起きてくるとアルフはリリアンに後を任せてネフェが走って行った方に向かった。奥に行くとネフェが猪の首を銜えて戻って来る。ネフェとアルフが野営地戻ると

リリアンと起こされたリアナが猪を銜えたネフェに言った。

  

 「大手柄ヨ!ネフェ」


 「さっきのお礼?ありがとう。ネフェ」


 ネフェは猪を下ろすとリアナの体に頭を擦り付けた。リアナとリリアンはネフェを撫でるとネフェはまた喉を鳴らして座った。


 「今度はアルフが休むばんヨ。」


 「ありがとう。」


 アルフが寝るころには夜が明けだしていた。自身の近くで寝ているネフェを撫でながらリアナとリリアンは見張りを続けた。起き出した一行はネフェの狩った猪を料理にして食べると地図を見た。


 「ここから20キロ先に港があるね。もう森をぬけて大丈夫かな。」


 「早く港に行ってベッドで休みたいわね。」

 

 「じゃあ出発するヨ」


 六人と一匹は港に向かって再びあるきだした。


つづく

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