異世界ファンタジーマイナス1.0

マロッシマロッシ

異世界ファンタジーマイナス1.0

 地球から遠く遠く離れた銀河の神、モンスは廊下を足早に歩いて職場のドアを勢いよくバンッ!と開けた。


「…モンス様、お帰りなさいっす。いつにも増して不機嫌すね」


「第3銀河のアホや第6銀河のバカに自慢されたんだよ!異世界からの人間を転生させると惑星が平和になっただの、文化レベルが上がっただの…信仰心が増えたからと言って、艶々の肌と身体を見せつけられたよッ!」


 持っていたファイルをバンッ!と机に叩き付けて、モンスはドカッ!と椅子に座った。


「ああ…担当する世界が平和で充実すると、人間が教会やら祭壇やらを作って我々を讃えてくれるっすからねぇ。ププ…モンス様は人様に姿を見せれたもんじゃな……」


 拳をシュッと空間転移して、部下の頭にゴンッ!と落とした。


「イダッ!…そんな奇蹟の無駄遣いを部下にするから…力を転生者に使いましょうよ」


 涙目の部下に言われて頬は痩け、身体はガリガリのモンスは溜め息を盛大に吐いた。


「はぁぁぁぁー…とは言ってもなぁ、第4銀河の惨状をレポートで見ただろう?間違った転生者を受け入れると、平和や文化レベルの発展どころか草1本も無い…人々が絶望しか感じない世の中になるぞ。リスクもデカいんだよなぁ…」


「アレっすよね?第9銀河の太陽系の地球とか言う星の人間を転生者として迎え入れたら、精力旺盛で統治者の血統を無茶苦茶に壊して敵対勢力を極大魔法で吹っ飛ばした、加減を知らない魔神みたいなヤツがいる所っすよね?」


「ああ…でもなぁ、第3銀河と第6銀河の転生者も地球の人間なんだよ…」


「マジっすか!?ノルカソルカのギャンブルっすね!当たればモンス様は艶々のムキムキに!外れれば今よりヘロヘロになって、モンス様は…ププ…シワシワの神になるっすね……アレ?拳骨が飛んで来ると思ったっすけど…?」


「奇蹟の無駄遣いは辞めたんだよ…言い方は腹立つがな、お前の言う通りギャンブルだ。失敗すれば俺は醜くなる位で済むが、お前は消滅するかもな…何とかっす!の変な口調も聞けなくなると思うと寂しいモンだぞ?」


「モンス様……ヨシ!やってやるっすよ!先ずは情報を集めるっす!第3銀河を受け持つモイナール様にどうやって良い人材を見つけたか、それとなく聞いて来るっす!」


 モンスの部下はシャッ!と部屋を出て行った。


(モイナールなぁ…口を開けば自慢しかしない年齢不詳のムキムキおっさんが、何とかっす口調の部下にノウハウを話すか?第6銀河のノクチャルの方が…いや、アイツも最近はモイナールと変わらない自慢大好きヤロウだ…何にしても、部下が何かを聞き出せるとは…)


「モンス様、教えてくれたっす!」


 部下がバーンッ!と笑顔で部屋のドアを開けた。


「ま、マジで?」


「マジっす!なんか僕の口調が先輩心をくすぐるらしく、そっすか!とか凄いっすね!とかを連呼してたら快く教えてくれたっす!」


「そ、そっすか…って、お前の口調に洗脳されそうになったじゃないか…で、モイナールはなんと?」


「はいっす。第9銀河担当のジャービス様に地球の風景を見せて貰ったそうっす。それとイレギュラーで亡くなった人間のリストも見せて貰い、モイナール様が担当する銀河の星に適応出来そうな魂を転生させたそうっす」


「…要は地球を観察すると言うより、俺達の様な存在が感知出来ない不慮の事故等で死んだ人間のリストを見て自分の担当区域に合った魂に転生者として、活躍して貰う訳だな?」


「そっすね。早速、出張に行くっすか?」


「まぁ魂を吟味出来ると考えたら、失敗するリスクは減るな。行こうか?」


「はいっす!」


 モンスと部下は第9銀河のジャービスに会い、地球の見学と魂のリストを見せて欲しいと依頼した。


「…そんな訳で、第7銀河の星も発展させたい。力を貸してくれないだろうか?」


「よろしくお願いするっす」


「どうぞ…地球も物凄く平和って訳じゃ無いから、しっかり確認した方が良いわよ?」


「そうなのか?……何だ?割と戦争をやってるな…」


「割と災害も多いっすね。貧富の差が激しい地域もそれなりにあるっす…」


「そうなのよ…文化レベルも高くて文明もそれなりに発展したけど領地や資源、宗教なんかで争いが絶えない、辞められないのも人間よ。ある程度に色々な物が行き着いたら、こんな風になっちゃうのかもね…でも、魔法や奇蹟の力に対して妙に親和性が高くて、正義感や狭義心に厚い民族がこの島国には多いわ。日本人って言うの…私のオススメよ」


「あ、ああ…リストを見せてくれるか?」


「ええ。はいどうぞ」


 ジャービスから渡されたリストを食い入る様にモンスと部下は見た。


「……彼だな」


「そっすね。大谷翔也…一級建築士で、帰宅途中に道路に飛び出た猫を救った後、トラックにはねられて死亡。30歳で死ぬまで真面目に生きて来た人っす。それと地球で言う所の中世の時代に詳しく、魔法なんかを使いたい願望があるっすね!」


「うむ!ウチの星に出向いて貰うのに良い人材だな!ジャービス、魂を第7銀河に送って貰って良いだろうか?」


「ええ。彼をよろしくね…」


「ああ。ありがとう!」


「感謝するっす!ジャービス様!」


 モンスと部下は大谷の魂を連れて、第7銀河に戻った。


「うっ……ここは?」


「世界の発展に力を貸してくれないっすか、大谷さん?」


 こうして、大谷翔也の魂は第7銀河の星に転生した。彼が活躍するしないの話と、地球を管轄するジャービスがやる気があるか無いかの話はまた別の機会に…。

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