第21話

眼鏡を握りしめた腕は微かに震えている。


細いフレームはすぐに曲がってしましそうなのに、強く握られているように見える


「瑠璃。……如月」


瑠璃都、と声をかけても反応しない彼に、もう一つの名前で呼んでみた。


「っ………!」


ばっと、由良に顔を向けた瑠璃都は今にも泣きそうで、由良は今度こそその頬に手を伸ばした。


「由良……」


「泣かないで」


まだ泣いてはいないが、泣くまでは時間の問題だろう。



「だって、由良。この眼鏡は由良が初めて俺にくれた……俺の宝物、なのに……」


(もう何年も経ってるのに……)


正直、いつまでそれを大切にするつもりだ、と由良は思っている。


自分で選んだわけでも特別なものでもない、ただたまたま持っていたから綺麗な顔に掛けてやっただけで。


由良にとってはそこまで大した思い出でもないだろうに、という程度だった。


瑠璃都が由良についてくるきっかけになったものではあるけれど。



「次は、瑠璃のために選んであげるから」


小柄とはいっても由良よりは大きな体を抱きしめてやる。


「由良が……俺に……?」


「ん。このまま買いに行く?」


「……行きます」


由良の肩の上で瑠璃都がこくりと頷いた。


「あーったく、女々しいな、お前」


「ずる……」


「お前が指輪なんてしてるのがいけないんだ」


むっと、由良にしがみついたまま瑠璃都はその手の中の物を睨み付けた。


睦月の手には先ほど諌那がお返しとばかりに投げ返してきた指輪がある。


「喧嘩はもう終わり」


ぽん、とそれぞれの頭を撫でてやればおとなしく口を閉じた。



***



高梨家に戻ってきたときには、瑠璃都には臙脂色のフレームの眼鏡。


それに加えて3人それぞれに小さなガーネットがついたネックレスまで増えていた。



(……嬉しそうだったから、いいか)


マンションの中、由良は自分の首元にかかっているネックレスを見ながら内心ひとりごちた。


細身のチェーンに小さな赤い石。それから他にも3つの石がついていた。

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