第4話

新しい身分を得て、晴れて過去と決別した山下。しかし、心のどこかには、あの地下室での出来事、そして田中という男が深く刻まれていた。そんなある日、彼はふと、子供の頃、夢中になって遊んでいた野球を思い出した。

「野球か…」

山下は、かつて自分が所属していた少年野球チームのグラウンドを訪れた。懐かしい匂いと風景に包まれ、少年時代の記憶が蘇ってくる。

「もし、野球を始めたら、少しは気分転換になるかもな」

そう思った山下は、近くの野球チームの体験入部を決めた。最初はぎこちなかったが、次第に野球の楽しさを思い出していく。チームメイトたちは、山下の過去について何も知らず、彼を温かく迎えてくれた。

ある日、練習試合の最中、山下は、相手チームの強打者に大きなホームランを打たれてしまった。その瞬間、山下の頭の中に、田中がナイフを構えている姿がよぎった。動揺した山下は、次のバッターにヒットを打たれてしまい、チームは敗戦。

試合後、山下はベンチで一人、自分を責めていた。その時、チームのキャプテンが声を掛けてきた。

「大丈夫だよ、山下。誰でも失敗することはある。それに、君の加入でチームは確実に強くなった。次の試合では、必ずリベンジしよう」

キャプテンの言葉に、山下は勇気づけられた。そして、野球に打ち込むことで、少しずつ心の傷を癒やしていく。

しかし、平穏な日々は長くは続かなかった。ある日、新聞を見ていた山下は、自分のことを特集した記事を見つけた。記事には、山下の過去や、田中が所属していた組織についての情報が詳しく書かれていた。

組織は、山下のことを決して見逃していなかった。彼らは、山下を再び組織に引き戻そうと、執拗に追跡していた。

山下は、再び危険にさらされることになる。しかし、今回は一人ではない。チームメイトたちが、山下を全力で守ってくれる。

野球を通して生まれた友情と絆。それは、山下にとって、新たな生きる力となっていく。

物語はまだ続きます。

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