第十一話 - 真也の記憶
——最悪だ。
21時に店を閉めて、レジの金を数えた。そして片づけをしてたときに気づいた。
金はなくなってなかったが、レジの裏に飾ってたScarlet Revolutionの限定版がなくなってた。
いや、正確には、ジャケットはあるが、中身のレコードが消えちまってた。
「そんな……バカな」
全身が震え、冷たい汗が背中を伝う。頭の中で警報が鳴り響く。
どういうことだ? いったい、いつなくなったっていうんだ?
レコードはずっとレジ裏の壁に飾られてた。レジは店の奥にある。
入り口はレジの正面だ。俺はほとんどずっとレジに立ってたし、入り口から来た客は全員見てる。俺に気づかれずにレジに入ることは不可能だ。
大事なレコードだ。ジャケットの中にレコードが収められてることは毎晩確認してる。昨日の閉店時には、確かにあった。
夜中に盗まれたのか? いや、それなら灰谷が何か言ってきてるはずだ。
灰谷……。
午前に客は来なかったとあいつは言ってた。それは本当だろうか?
灰谷は抜け目ねえ男だ。盗難があって、あいつがそれに気づかないとは思えねえ。あいつは午前中ずっとひとりでいた……。
猛烈な勢いで頭を振った。
あいつなわけがねえ。あいつはこんなせこい盗みをする男じゃねえ。
俺は灰谷を信じる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます