転生繰り返して追いかけてきた寝取り女に今度こそワカラセてやりたい
みねし
第1話 最悪な目覚め
最悪な夢
ここは、どこなのだろう。
初めてみる景色って聞かれたらそうだねってフラットに返せるけど、初めての景色で合ってる? なんて聞き方されたらどうだろうって返せるけど返事してから違和感が胸の奥にこびりつく類の曖昧なやつ。
そのどっちとも取れないハッキリしない既視感と一緒にわたしはただそこに立ち尽くしていた。
「ごめんね○○……私、この人に染められちゃったの」
なに、これ?
「だから別れましょう? ○○のこと、大好きだったよ」
「あ、あ、アぁ………」
突然すぎる展開に脳が真っ白に染まっていく。
この現象にピッタリな名称があったはず。
なのに何も思い出せない。
何か口にしたいのに、したい言葉はいっぱいあるはずなのに身体がまったく動かせない。
次に報告してきた女の子は隣のもやッとした人と呆然としてるわたしなんかほっといて仲良く去って行った。
仲良くなんてかなりマイルドに表現していて、腕組んで頭も寄せ合って歩きずらそうな歩み方で。
これから起こることなんか決まってるよね。
何を見せられているんだろう、わたしって。
何を言われてショック受けてるの、わたし。
そんな頭の悪そうなことばかり考えていると次第に場面が変わっていた。
「もういいや」
ボソッと口が勝手に動いてそんな言葉が漏れる。
これ、どこにいるんだろう?
どことなく落ち着く空気間は自室の部屋だって感じるけど、何せ身体が自由に動かせない状態。
どこなのか確認する術なんかまるでなし。
(………は?)
そこでやっと自分の手に何か握られていることが初めて視認できた。
細長くてちょっとだけ丸みのある握り手にかなり鋭利に研いである切っ先。
これ………ぼ、包丁じゃん。
というかこれ、切っ先のところ自分に向けられてない?
急展開すぎない?
ってかなんで身体が動かないの、死にたくないんだけどっ。
声上げようとしても、包丁ぶん投げようとしても思うように身体が動いてくれない。
声って言ってハッと気がつく。
そういえばわたし、さっきなんて言ったっけ。
もういいやって言ったよね?
ってことはつまりこれから起きることはもしかしなくても………自殺、ってやつ?
それが思った次の瞬間、自分の両手で強く握りしめた包丁が心臓目掛けで一瞬で近づいてきて—————————。
「きゃあああああああああああああああああ!!!」
気がついたら大声上げながらカバっとベットから飛び起きていた。
「何あれ何あれ何あれ!?」
貫いたはずの箇所である胸のど真ん中辺りをベタベタ触ってみる。
「何も、起きてない?」
ソフトタッチしてみてもちょっと強めに触ってみても寝巻越しからの指が押してる感覚と比べてものすっごく柔らかいわたしの寝巻服の触感しか感じられない。
そのままめくって確認してみても傷跡ひとつない。
強いて言えばフリル付きの下着がチラッと見えたくらいね。
「なんだ、夢か~~~………」
どうしてあんな夢なんか見たんだろう?
「あれって俗に言うNTR報告ってやつ?」
しかも直接報告してくるとか鬼畜所業じゃん。
「って遅刻じゃん、マズい」
考えるのは後回し、一旦登校が優先。
ま、夢なんだしじっくり考える頃には忘れてるでしょうけどね。
なんて夢のないこと思いつつ慌ててハンガーにかけたままの制服に手かけるわたしだった。
▽▼▽▼
「むむ………」
おかしい。
おかしいってこと以外、浮かぶ言葉がない。
今は昼休み前の最後の授業。
それも十分前という生徒たちの注意が授業から昼休みの甘いひと時へと差し変わるもっとも集中力が低下する頃。
それはこの女子校、百合丘学校も例外ではない。
ってそれは今どうでもいいや。
「夢がさらに鮮明に浮かぶことってある?」
教壇からちょっときつめの口調で大声に説明する教師に悟られないくらい小さい声でわたしはそうぼやく。
口にすることで人間、よりイメージが鮮明になって記憶に定着しやすいってよく言うけれど、夢の内容はその反対って言うのがわたしの持論だ。
まあ、おそらく大半の人がそう考えてるでしょうね。
夢の内容はどっかに記録しなきゃすぐ忘れるもんね。
むしろ友達に「今日さ、メチャクチャおもろい夢みたんだよね~」って自慢話しようとした途端、頭から抜けてしまい友達になにそれ~ってゲラゲラ笑われるなんてあるあるな話なくらいだし。
そんなつもりでぼやいたけどイメージがさらに鮮明になっていく。
むしろその続きというか繋がりみたいなやつまで思い出すってある?
わたしのそんなツッコミなんてガン無視のマイペース不思議ちゃんみたいに次から次へとイメージが脳裏に浮かび上がる。
あれはどうやら最後で最後じゃなかったらしい。
見たことない鬱蒼な大樹の元で不思議な格好しているわたしがいた。
その次は一昔前の他の国、一昔前の日本、現代の別の国など。
バリエーションは様々でもどの時代のわたしと思える人には彼女が出来ていた。
どれももれなく十日以内に最初見てた光景が再現される。
紅潮が浮かぶ顔の彼女に「この人にメロメロにされたから別れましょう」って報告されて、傍にいる女? みたいなもやッとした影みたいなやつと一緒に去って行く。
それで絶望して、気がついたら自殺目前のシーンのリピート。
夢って普通、時間が経てば薄れるはずだ。
こんな徐々にハッキリすることなんておかしいでしょ。
「ハッ」
そこでとある可能性に行き着く。
わたしの考えたことながらバカみたいというか頭がイかれたのでは? なんてツッコミがいくつか浮かぶけど………こんなアホみたいなことが出来るのはあれしかない。
「もしかしてこれ、わたしの前世の記憶なんじゃ?」
なんてバカみたいな独り言はタイミングよく授業終わりを告げるベルの音がかき消してくれた。
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