第3話 献身的な後輩?

「――おはようございます、冬樹ふゆき先輩! 本日も良いお天気――そういうわけで、さっそくお邪魔しますね!」

「……えっと、本当に来たのですね……」

「はい、もちろん!」



 それから、数日経て。

 陽光が眩しく照らす小昼の頃――突如響いたインターホンの音に起こされ、寝ぼけ眼を擦りつつ玄関へ向かい扉を開くと、そこには純白のワンピースを纏った美少女の姿が。……うん、まさかとは思ったけど……本当に来たんだね。




『――私が、冬樹先輩のお家へお食事を作りに行ってあげます!』

『…………へっ?』


 数日前、勤務後の休憩室にて。

 一つ、ご提案があるのですが――そんな前置きの後、予想だにしない言葉を口にする藤島ふじしまさん。提案というより、ほとんど宣言に近い気もするけど……ともあれ、正直本気にはしていなかったので、つい曖昧な返答をしてしまったのだけども――



「……えっと、見苦しい部屋ではありますが……とりあえず、どうぞ」

「はい、ありがとうございます先輩!」


 そう、控えめな口調で室内なかへと案内する僕に、満面の笑みで謝意を告げる藤島さん。……まあ、こうなってしまっては流石にお引き取り頂くわけにもいかないし。


「……おや、思ったより片付いていますね。正直、まずは大掃除からと思い意気込んで来たのですが」

「……はは、まあ最低限は」


 案内された僕の部屋をぐるりと見渡し、少し驚いた様子の藤島さん。……いや、念のため片付けておいてほんと良かった。まあ、ほんとに最低限だけど。


 ただ、それはそうと……うん、どのくらい汚いと思われてたんだろう。パッと見だけでも、彼女が持参したビニール袋に結構な量の掃除用品が入ってるんだけど。



「――さて、さっそくですがお食事の準備を。先輩、調理器具などお借りして良いですか?」

「あっ、はいもちろんです! ですが、その……僕に、何か出来ることは……」

「ああ、お気になさらず。私が一人せっせと働いているのを横目に、コーラ片手にのんびりテレビでもご覧になっていてくださいな」

「どうかお願いします僕にも何かお仕事ください」

「あははっ、冗談ですよ先輩。ですが、本当にゆっくり寛いでいてください。今日は元より、私一人で作るつもりでしたから」

「……まあ、藤島さんがそうおっしゃるのであれば……申し訳ありません」

「ふふっ、なんで謝るんですか」


 そんな、夢現とも知れない和やかなやり取りを交わす僕ら。……うん、よもや僕の部屋で誰かと会話する日が来ようとは。……あっ、それと……どうでもいいけど、テレビないんだよね、ここ。


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