ソワソワ

 情け無いオレは、係の仕事で先生に呼ばれて職員室で用事を済ませて、教室へと戻るためにノロノロと渡り廊下を歩いていた。

 

 

 

 

 

 ころころころ…

 

 オレの足元に向かって、ゆっくりボールが転がってきた。

 

 

 休み時間にボール遊びをしている先輩たちのボールだ。

 

 先輩と言ってもだれだかは、全く知らない先輩方だ。

 

 ただ上靴の色が違うっていうことだけは、知っていた。

 

 この学校は、学年ごとに色分けされているのだ。

 

 

 休み時間いつもオレは、窓から先輩達を眺めていたから同学年じゃないことは、知っていた。

 

 

 ほんとに元気だなぁ…。

 

 

 オレはヒョイっとボールを拾って一人の先輩に向けてボールを投げた。

 

 すると…

 

 

 普通は、ありがとうとかって言葉が返ってきますよね?

 

 でも返ってきたのは…ありがとうでもサンキューでもなく、ボールでした。

 

 

 ?

 

 とっさにカムバックしたボールをキャッチいたしましたよ。

 

 そりゃいきなりボールが返ってきたらキャッチしますよね?

 

 で、また返しますよね?

 

 そしたら、また返ってくるボール。

 

 

 …

 

 なんなんですかね?

 

 オレはいきなりボール遊びする先輩達の仲間入りでもしたんでしょうかね⁇

 

 

 このラリーは、いったいいつまで…

 

 

「あのー…」

 

 オレが先輩に声をかけると先輩は、それはそれは爽やかなミント感漂う笑顔で

「わりぃ、つい楽しくなっちゃって」

 と笑った。

 

 ⁇

 

 楽しいとは?

 

 そもそも他の人と遊んでいたんだから、その先輩方とボール遊びすれば良いのでは?となりましたよね。

 

 

 疑問に思ってたちすくんでいたら先輩は、

「君、運動経験者?」

 なんて質問を投げかけてくるじゃありませんか!

 

 こんな太っちょのオレに経験者なんて質問…ありえないでしょうにってなりますよね?

 

 

 まぁ…幼少期にならね?

 

 でも、それっていまさらって感じなんだよなぁ…。

 

 

 …

 

 

「あの、幼少期以降全然なんにもって感じなので…」

 

「あー!やっぱりやってたんだ‼︎ならさ、バスケ部入らない?」

 

 

 ⁉︎

 

 いきなりの勧誘…

 

 てか、なぜこんな太っちょをスカウトしてくださったのだろうか?

 

 

「あのー…嬉しいお言葉ですけど、こんな体型ですし、みなさんにご迷惑をおかけしてしまいますので…」

 

 オレは、丁寧にお断りしようと言葉を選んでいると先輩は、

 

「体型?そんなのどうにでもなるっしょ!君さ、動きたくて仕方ないってからだがうずいてるよ。放課後いつでもいいから見学においでよ。ね!それじゃ」

 

 そう言い残して先輩は、また爽やかミント笑顔で友達の元へと戻っていった。

 

 

 …

 

 行くわけない。

 

 だってオレは、運動なんて…

 

 てか、そもそもバスケなんてアニメで見たくらいで、自分が動くなんて…

 

 そんなの…

 

 

 そんなこと…

 

 

 できるわけあるかい!

 

 ってなわけで、速攻帰宅。

 

 

 いつも通り学校から帰るとひきこもり再開です。

 

 

 …

 

 

 …

 

 

 今頃、昼間の先輩は部活かな?って…そんなことオレには関係ないことだ。

 

 

 …

 

 でもなんか…落ち着かない‼︎

 

 

 のんびりタイムのはずが…

 

 のんびりできん‼︎

 

 からだは、のんびりしてるんだけど…

 

 心がソワソワしっぱなし‼︎ 

 

 

 どうしたんだよオレ…。

 

 自分のことも落ち着かせられないなんて…

 

 

 オレは、ほんとにどうしようもない人間だ。

 

 

 もうさ、まともな人間にすらなれないくらいなら、からだ全身緑まみれになって妖怪にでもなろうかね?

 

 ね?

 

 てかさ、妖怪に失礼だよね。

 

 オレは妖怪にすら認定されないゴミです。

 

 いや、それだとゴミさんにも失礼だな。

 

 …

 

 あー、なんだか落ち着かなくて無性に走りたくなってきたわー。

 

 

 こんなこと今まで絶対になかったのに…

 

 なぜだろう。

 

 気づいたらもうさ、首にタオルまいてめっちゃ走ってたよね。

 

 

 何年振りだろう。

 

 こんなに運動したい衝動にかられたのは…。

 

 

 そんでもって、爽快。

 

 からだは、ドスンドスンしててオモリ背負ってるって感じだけど、爽快。

 

 走るとからだのお肉がブルブルしてて笑っちゃうわ。

 

 

 スロー再生でにくみたら、やばいくらい揺れてるんだろうな…。

 

 見苦しいけど、面白いくらい長年の蓄積の頑張りが揺れてるんだよね。

 

 

 いや、頑張りとは違うか。

 

 なまけの蓄積ってやつか。

 

 でも、肺はまだいけます‼︎ってくらい元気なんだよな。

 

 オレって水中でしか活躍できないと思っていたけど、いがいと陸での生活もいけるかもしれない…。

 

 昼間のプチボール投げも意外と悪くなかった。

 

 なんなら、楽しかったような…

 

 …

 

 

 はぁ。

 

 ほんとオレって今までなにしてきたんだろうな。

 

 

 ゆめがどっかいっちゃって…新しいゆめを探しもしないでさ、逃げて勝手にイラついてさ…

 

 

 情けな

 

 

 こんなオレでも、波瑠音ちゃんは受け入れてくれるんかな…

 

 

 んなわけないか。

 

 きっとけいべつされるんよね…。

 

 …

 

 

 先輩に勧誘されたし、バスケ部入ってみようかな…?

 

 って、無理だわー。

 

 こんなにおにくブルブルしてるんだもんね…。

 

 笑われるよね。

 

 とりあえず明日から…いや、今日からダイエットってやつをしてみようかな。

 

 

 

 続く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る