学年一の美少女がどうやら過去のオレに片思いし続けているらしい…こんなデブでごめんなさい…からの巻き返しに挑戦した結果
猫の集会
前途多難
好きだ
…
その一言が言い出せずオレは何年もの月日を過ごす羽目になった。
いや、なったなんて過去形どころか現在進行形だ。
高校生になったばかりのオレは休み時間、窓際でぼーっと日向ぼっこをしつつ、隣にある小学校のプールを眺めていた。
キラキラと水面が輝いている。
…
宝石でも散りばめられているかのようにキラキラしていて、まるでキラキラの小さい妖精たちが楽しく舞っているようにみえた。
そんな想像をしたオレは、無性にイラついた。
そして…
泳ぎたい‼︎
無性に泳ぎたい欲が湧き出てしまった。
あの水の中を好きなだけ泳いで泳いで…
…
くっそ‼︎
オレは拳を握り締め、席を立った。
あんなものをみているから思い出すんだ。
…
もう、終わったんだ。
…
実はオレは、幼少期かなり水泳が得意でいつも大会では、一位を獲得していたんだ。
このまま世界代表として選ばれる予定だった。
しかし…
突然やってきた肩の痛み。
成長するにあたり、肩の成長がうまくいかず、このまま泳ぎ続けるとなんらかの不調が現れるかも知れないとドクターストップが出てしまった。
でも、そんなものに負けたくないと無視して泳ぎ続けた結果、肩が上がらなくなってしまった。
風呂に入ればジンジン痛むし、ろくに寝返りだってできないくらい肩に激痛が走るようになった。
このままではいけないと、手術までする始末だった。
ほんとうは、手術なんてしたくなかったんだ。
だって、そしたら幼馴染の
オレと波瑠音ちゃんは、大の仲良しだった。
水泳の合間をみては、一緒にいろんなことして、遊んだ。
はるちゃん、ゆうちゃんと呼び合う仲だったのに…
なのに、オレのケガのせいで…
そのせいで、離れ離れになってしまった。
オレは手術が終わったら、また波瑠音ちゃんと、仲良く遊べるって思ってた。
なんなら、もう水泳もできないだろうし…波瑠音と遊び放題じゃないかって…ポジティブ思考に転換した。
…
でも、オレが波瑠音ちゃんの元へ戻ることはなかった。
退院するとオレは、母方の家に暮らし始め…父親がいなくなっていた。
両親は、離婚したのだ。
…
それからずっとオレは…夢も希望もなく生きてきた。
もう二度と波瑠音ちゃんとも会えずに…
そう思っていた。
しかし‼︎
まさかの波瑠音ちゃんがいるんです‼︎
それも同じクラスに‼︎
でもさ…
波瑠音ちゃんは、全くと言っていいほどオレに気づいていない。
当たり前だ。
オレは苗字が変わったし、なによりも昔の体型から想像できないほど太ったし…そもそも波瑠音ちゃんは、あの当時オレのことを覚えていないに違いない。
仮に覚えていたとしても、さよならの挨拶なしにいなくなったおとこなんて…
「え〜っ‼︎波瑠ちゃんって一筋なんだねー」
と、女子の騒がしい声が聞こえてきた。
なになに?と、クラスみんなが群がっていた。
くだらん。
オレは席に座り、またぼーっと外を眺めた。
プールじゃなく、あえて今度はグラウンドに目を向けた。
外では、ボール遊びしている人がチラホラといた。
休み時間くらいゆっくりすればいいのに…
運動なんて体育以外考えられない。
わざわざ休み時間にそんなことするなんてどうかしている。
オレはそんなことを考えて、休み時間を過ごすのだ。
昔は、じっとしていることが考えられなかったのに…今じゃ真逆の生活だ。
チャイムがなり、後ろの席の男のこがオレをちょいちょいとよんだ。
無言で振り向くと、その男の子は興奮気味に、
「なぁ、さっきの話聞いたかよ?幼馴染羨ましいよなー」
と、うっとりしていた。
「え?なんのこと?」
「だから、はるちゃんだよ‼︎学年一美少女はるちゃん」
「え?」
「だからーあの、はるちゃん!」
男の子は、波瑠音ちゃんを指差した。
「
「うん、そうそう‼︎そのはるちゃん、幼馴染のことをずーっとおもって片思いしてるんだってさ。どんなやつなんだろうなー。水泳が上手いとか言ってたけど、マジうらやま〜。相当のイケメンなんだろうなぁ。あのはるちゃんが片思いするくらいだもんなぁ?」
確実にお前とは、真逆なんだろうなって目つきの男の子。
…
それ…過去のオレかも。
なんて言えるわけもなく、オレは
「へぇ…そ、そうなんだ」
と返すことしかできなかった。
波瑠音ちゃんが…もし、オレに気づいたら幻滅するだろうな…。
ごめん…波瑠音ちゃん。
オレはほんとに自分が情け無くて仕方なかった。
やっぱりオレ…泳ぎたい‼︎
魚みたいにクネクネして泳げたらいいのに…
なんで人間は、手をつかわないと早く泳げないのだろう…。
魚にもなれず…
なんなら鳥だって、飛べるし優れている。
それに比べて人間は…
いや、オレは…
…
オレは、オレは…どうしようもない人間だ…
続く。
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