7話 魔法とスキルと少女

昨日は本当に楽しかった

和人はオークキングの肉を食いながら昨日の戦闘を振り返っている


和人は生まれて初めて本当にギリギリの死闘をした

そんな身を焦がすほど待ち望んでいた死闘をして落ち着いていられるわけがない

なんせつい昨日の話だ

今でも鮮明に思い出せる


腹も膨れたし、今日はスキルと魔法の感覚を掴もうかね

昨日は土壇場で発動出来たが、まだ全く使い熟せてないし


そう、確かに昨日和人はスキルや魔法を使えた

しかしだからこそ自分のものにするために練習をしなければいけないのだ

いわば初めて剣を握った振っただけのような状態

それは大変よろしくない


まずはスキルの確認だ

昨日のように自分の意志を高めていき身体強化をイメージする

すると昨日の感覚が蘇る

体感で3倍上がっている


試しにその辺の木を正眼に構えてから斬りかかる

すると太刀筋に沿って木がずれていきそのまま横に倒れていく


スキルを使うだけでこんな変わるのか

やばいななんだこの威力、しかもまだまだ能力を引き出せるぞこの感じ

これに剣術を合わせたらもう最強じゃね?

ただ身体強化はMPの消費量が結構馬鹿にならんな

なんだよこれ1分間に100って

魔人でよかったな俺


スキルのMP消費はランクによって変わるのだが、もちろん強力なものはより消費が大きい

じゃあランクが低い方がいいのではないかとなるとそれはまた違う

ランクが低ければ最大値が変わってくるためだ


ちなみに剣術は剣を扱う動作全てに補正をかけるものだ

つまり桁外れの身体能力にただでさえ高い和人の技術が更に上乗せされる


「風魔法・ウィンドカット」


風の刃が解き放たれ近くの木にぶつかる

幹の3分の1ほど削って魔法はかき消えた


んー魔法は奥が深そうだなこりゃ

イメージを乗せて声に出さなきゃいけないのがまためんどくさい

物語だと無詠唱とか存在すんのにな

まぁしゃーないか

はい検証終了


「今日も元気に魔物共を血祭りに上げてくぞー‼︎」



-------------------------------------------




怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い

誰か助けて、死にたくない

ママ、パパ、助けて…おじいちゃん


少女はただ走る

その手には紫色の花

後ろからはフォレストウルフが追いかけてくる


大好きなおじいちゃんのために街のみんなの目を盗んでこっそり抜け出してきた

森の危険は何度も聞かされていたが、自分には透明になれる魔法があるから大丈夫だと思っていた

おじいちゃんのことを治すためにトリサリ花の群生地には無事に行けた

やっぱり大人が言うことなんてたいしたことないや


そう思っていた帰り道にフォレストウルフと出会ってしまった

すぐさま透明魔法を使ったが少女の居場所はフォレストウルフにバレてしまう


それもそうだ

透明魔法はあくまで姿を隠せるだけ

匂いは隠せない

大人ならそれぐらいは知っているだろう

しかし少女は知らなかった

案の定フォレストウルフに見つかり追いかけられている


手足が重い、息がしにくい、その時地面に出っ張った木の根に足を引っ掛けてしまい転んでしまう


「ひっ、ぐすっ、こないでぇぇ、たすけてよぉ、パパ、ママ、おじいちゃん、ひくっ、」


目の前にはフォレストウルフ

遊びは終わりだとばかりに少女を喰らわんと口をあげる

死んでしまう恐怖から目を背けるために少女は目を瞑った

もう2度と会うことのできない家族の顔を思い浮かべながら…


「うぉぉぉぉぉぉぉ‼︎ウルフみっーけ‼︎ヒャッハー‼︎」

「⁉︎」


突然現れた血まみれの男

その男がたった今自分を食べようとしていたウルフを斬り殺している

ただ、幼い少女は自分をフォレストウルフから守ってくれた男を見てつい口ずさんでしまった


「…勇者様?」


少女は憧れの眼差しを持ってその男を眺める

まるで物語の勇者様のようだと

母から読み聞かせてもらった絵本のようだと

人々を救う英雄のようだと思った


「…あの、勇者様ですか?」

「…え⁉︎人⁉︎いや魔人か、結構ちっちゃいんだな、いや子供なだけか?ツノもちっちゃいし………」

「…あの、」

「あ、勇者かどうかか?そだね確かに俺は勇者だよ」






「魔人のね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る