5話 300匹の子豚

木の上でぐっすり寝てから目覚めた今日の朝

普通はぐっすりなんて眠れないだろうがまぁ俺は慣れてるからな


昨日の残りのオーク肉を食べて今日も頑張って狩るぞーと気合いを入れて歩き始めてすぐにオーク発見

ただ昨日とは近い今度は2匹、まぁ準備運動には丁度いいかな


俺を見つけるや否やすぐに襲いかかってきたので片方の槍を躱しもう片方は昨日のように受け流してから地面に倒す

そいつを一旦無視し最初に躱したやつの方に向き直り目を狙って刺突

この時全身のバネを使って0から100の力を生み出すのがコツだ

いきなり目の前に剣を突き出され一瞬硬直したオークは目を貫かれてそのまま脳まで達し死亡

もう片方も復帰しようとしていたので首を斬りつけて倒す


やっぱ殺し合いって楽しいな!相手の殺意が心地いい


この後も2匹、1匹、3匹と出会ったオークを殲滅していった結果、なんと村が見つかった


へーオークって村なんて作るんだ

わざわざ俺の経験値のために自分たちから牧場を作るなんてありがたいなぁなどとどう解釈したらそうなるのか分からない超ご都合思考で早速オーク村入場

この男に恐怖心なんて無いのだ、今更だが


案の定オーク村にはオークが沢山いる

それも10匹20匹ではない

明らかに100匹以上いてさっきから興奮が止まらない


村に入ってきた突然の侵入者にオークたちの反応は早かった

近くにいたオークは村を守るべくすぐさま襲いにかかる


しかしそれらを経験値としてしか見ていない和人は一瞬にしてオークの首を刈り取る

まだ和人の腕力では首を丸ごと刈り取るのは無理だが、喉仏の部分はまだ他と比べて柔らかいため半ばまで切断できる

当然そんな状態になれば回復する手段などオークたちは持っていない

呆気なく死亡しすぐさま次のオークに狙いを定める


オークたちは現実を認識できていなかった

自分たちは平和に暮らせていた

勿論自分たちはこの森全体で見たら弱い方だが、自分たちが住む森の浅いエリアでは十分に強者の部類

そのため今日も明日もこれからも自分たちはこの村で暮らしていくと思っていた

だがアレはなんだ

見たところ魔人だが魔人はこんな場所になんて普通はいない

まるで空気でも切っているかのように流れるように首を斬り飛ばしていくあの動きは

同胞たちがまるで次々と生命の灯火を枯らしていく姿は

そんなことを考えている間にせめて子供たちは逃さなければとこの場から離れる

それは叶わない願いなのだが



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あれから何匹屠ったろうか

目についた全てを斬っていく中で和人の動きはどんどん洗練されていった

足の運び方、視線の使い方、敵の動きの先読み、ありとあらゆるものが今この瞬間にも成長し続けている

途中からはオークの首だけでなく胴体も切断できるようになりますます殲滅スピードは加速していく


そんな中空気が重くなり圧を感じた方向に視線を向ける

するとそこにはこれまでのオークとは違い槍斧を構えた一回り巨大なオークがいた

和人は今の自分よりも空気で感じとった


それもそのはず

このオークはオークキング、危険度はBランクであり上級冒険者の壁として存在する危険な相手だ

このオークキングはスキルを使うことが確認されており今までのオークとは文字通り格が違う



目の前に佇んでいる巨大なオークは俺のことを捉え大声で叫び出した


心の臓がピリピリとし、手足が一瞬硬直する

その硬直の隙を縫って一瞬で近づいてきたオークキングが槍斧を振るってくる

剣で受け流そうとするがあまりの力の違いに受け流せずそのまま体を吹っ飛ばされ木に叩きつけられる


感じたことのないあまりの衝撃に肺の中の空気が全て漏れ出て先ほどから身体中が悲鳴をあげている

そんな中でもこの敵に対してどのように動けばいいかを頭の中でシュミレートしていく


オークキングは余裕の現れかのんびりと肩に槍斧を担ぎながら見下すように歩みを進めてくる


相手は絶対的な強者、身体にダメージを負い手足が重い、今のままでは敗北は必死

だがそんな時和人が思っていたのは恐怖ではなく、むしろその逆であった


あぁ、これこそ俺が求めていたものだと心が湧き立つ

それと同時にこの敵にいいようにやられる自分に酷く腹が立つ

見下すその目も、その態度も、自分より上であるという事実も、全てが腹立たしい


弱い自分が許せない、俺より強い存在が許せない、戦いとは血湧き肉躍るものでなくてはいけない

俺が今のままでは勝てないというならば、今ここでその事実をひっくり返す


自分の力の全てを

自分の魂の全てを

自分の存在全てを賭けて

こいつに勝ちたいと心が叫ぶ


あの日味わった無力感はもう味わいたくない

あの日守ることができなかった自分にはもうなりたくない


研ぎ澄まされる戦意、迸る力、絶対に勝つという意地、その全てを今この瞬間に爆発させる


ある種のゾーンに入った俺は今すべきことを理解した

この世界に来て理解した自分の力

それを今、全身全霊で発動する




「【身体強化】」

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