悪魔の復活 ، 時の戦い

クリムゾン

導入 :破滅の時代

世界は滅亡の淵にあり、至る所に黒い雲が立ち込め、家々は燃え上がり、ドラゴンは人間を襲う。ジラフィア帝国は、巨大な悪魔のような存在に襲撃され、その赤い光線が城を貫き、真っ二つに割る。ドラゴンは襲いかかり、帝国兵は戦場から逃げる。悪魔の攻撃で王は死亡した。至る所で人々の悲鳴が上がり、ドラゴンから逃げる人々。竜の女王は涙を流しながら笑い出す。「長い間…この時を待ちわびていたわ…友の死を復讐する時が来た。」


この大混乱の中、世界の神々が現れた。不死鳥ラフィックス。無限の炎の力を世界に与える巨大な鳥で、「炎の象徴」と呼ばれる。水のドラゴン、ニトリス。海と大洋を守る雌のドラゴンで、「水の象徴」と呼ばれる。氷の怪物ジラフィン。純粋な氷から形成された巨大な氷の怪物で、行く手を阻む全てを破壊する圧倒的な力を持つ。「氷の象徴」と呼ばれ、一歩踏み出すだけで大地を凍らせるという。天空の守護者イラゴン。強力な翼と輝く色彩を持ち、人間の姿をしている。超高速で移動し、風の流れを操る力を持つ。「風の象徴」と呼ばれる。


これらの巨大な存在は、帝国の破壊を引き起こした黒き悪魔に立ち向かう。彼らは互いに寄り添い、悪魔を包囲し、憐れみを抱いた会話を交わす。人類の残存者を滅ぼしかねない大戦争を避けたいのだ。


私は、破壊された城の後ろ、高い山の秘密の場所に隠されていた、皇帝の非常用シェルターにいた。薄暗い部屋には、小さな窓一つだけが、かすかな月の光を差し込んでいた。


私は動けずに、外で起こっている出来事を見守っていた。窓から、五つの存在のやり取りを見ていた。世界の運命は、この次の数秒で決まる。


しばらく静寂が続いた後、私の心臓が激しく鼓動し始めた。心臓が体から飛び出さんばかりだった。


息を呑むような瞬間、破壊と黒い霧に包まれた中で、巨大な存在たちは、長い角と暗い赤い目をした黒き悪魔と見つめ合った。巨大な存在たちは、涙を流す悪魔を憐れむように見ていた。


彼らは、まるで一つの意識、一つの思考のように、一つの文を完成させるために役割を交代していた。


奇妙に聞こえるかもしれないが、この黒き悪魔は、ほんの数分前まで、15歳くらいの少年だったのだ。


なぜ彼が今の姿になったのか?それは、二日前まで遡る…


私はアリアン、皇帝ザイロンの侍従だ。


約二日前、ジラフィア帝国の皇帝ザイロンと、アルカノールス帝国の皇帝ナリュウスの間で会談が行われた。


友好関係を深めるための、互恵的な会談だった。玉座の間には、両国の兵士たちが左右に整列し、外には警備兵が配置されていた。


影響力のある貴族ですら参加を許されなかった秘密会談だったため、貴族たちは不満を募らせていた。


召し使いが両国の皇帝に茶を運ぶ。「では、ナリュウス皇帝、取引を成立させましょうか?」ザイロン皇帝は緊張した声で尋ねた。


「ふむ、それは到底不十分だ、ザイロン皇帝。」


「何だと?食料の半分では足りないというのか?欲張りすぎるぞ!」


「ふふふ、おかしなことを言うな、ザイロン。」ナリュウス皇帝は長い顎鬚を撫でながら答えた。


「貴国の食料の半分で何が出来るというのだ?両国の友好関係を築くためにお呼びしたというのに、実際は我々の高度な技術を利用しようという魂胆だろう。その見返りは?食料か?我々を貧乏人とでも思っているのか?冗談ではない。」


ナリュウス皇帝の狡猾で、明らかに脅迫めいた視線は、ザイロン皇帝の自信を打ち砕いた。


ナリュウス皇帝が申し出を拒否した後、ザイロン皇帝の顔には緊張の色が…この交渉がうまくいかないと、ジラフィア帝国は大きな危険に晒される。アルカノールス帝国が持つ、高度な戦闘装備と技術がないからだ。彼らは、人工魔力と呼ばれるエネルギーを生み出す兵器を使用しており、生まれつき魔力を持たない者でも、その兵器を使い、無理やり体から魔力を抽出することができるらしい。


我々の帝国では、魔力を使える者だけが貴族や皇帝の側近になることが許されているため、国民の大半は一般市民であり、貴族はごく少数だ。つまり、魔力使用者の人材が不足しているのだ。


ザイロン皇帝は、アルカノールス帝国からの明白な脅威を感じ、近い将来、両国間の戦争が勃発すると予測した。そのため、この潜在的な危機を回避するために、友好関係を築こうとしたのだ。


しかし、現在の交渉状況では、ザイロン皇帝は追い詰められていた。


「は…はい、何を望むのだ?」彼の弱点が露呈した。一方、ナリュウス皇帝の要求は、滑稽なほどに理不尽だった。


彼は恐ろしい声で言った。「グリーンホール村をよこせ。」


ザイロン皇帝の目は見開かれ、衝撃を受けた。


彼は立ち上がり、声が響き渡るほど大きな声で言った。「な…何を言っているのだ?それは絶対に受け入れられない!」


ナリュウス皇帝は落ち着いて立ち上がり、部屋を去ろうとした。「それでは、合意に至る見込みがないようですね。失礼します。」


「ちょっと待て!」ザイロン皇帝は、彼を呼び止めた。彼は、あの扉の外で何が起こるかを痛烈に理解していた。帝国の運命を決める、ほんの数歩手前なのだ。


ザイロン皇帝は、ナリュウス皇帝を殺すことを考えるかもしれない。しかし、アルカノールス帝国は、皇帝に依存しているわけではないことを彼はよく知っている。国民が国を治めているのだ。皇帝は単なる顔役でしかない。それが、アルカノールス帝国が最強の帝国の一つである理由だ。


ここで彼を殺せば、アルカノールス帝国への宣戦布告を意味する。そうなれば、一つの解決策しかない。「グ…グリーンホール村の半分を…譲る。これ以上は無理だ。」


ナリュウス皇帝の口角が上がり、歯が覗いた。「取引成立。」


こうして、ジラフィア帝国はグリーンホール村の半分をアルカノールス帝国に割譲することで、両国の交渉は幕を閉じた。


率直に言って、ザイロン皇帝の無能さと無策さに驚いた。あんなに無能な人間が、一体どうやって帝国を治めているのか、さっぱり理解できない。


たとえ私が意見を述べたところで、貴族たちは耳を貸してくれないだろう。


なぜなら、それは彼らの利益に反するからだ。貴族たちは、皇帝の無能さを利用して、地位や報酬を手に入れ続けている。身分の低い者がそんなことを言っても、誰が耳を傾けてくれるというのか?ともかく、そんなことを考えても仕方がない。私の仕事は警護であって、政治に口出しする権利はないのだから。


═══════════════════════════════


ジラフィア帝国は、グリーンホール村の半分をアルカノールス帝国に割譲することで、交渉は決着した。


偉大なる皇帝陛下万歳!と、私にも拍手が送られた。


パチパチパチ…

正直言って、これからどうなるのか見当もつかない。貴族たちがこの決定にどう反応するのかも分からない。ただ、この協定が我々にとって良い結果をもたらすことを祈るばかりだ。


会議室の扉が開き、野蛮な叫び声を上げる貴族たちが押し寄せた。「なぜ我々をこの重要な会議に招集しなかったのだ!皇帝陛下、何を考えているのだ!説明しろ!」


ザイロン皇帝は緊張し、汗を流しながら、大きな声で言った。「静かに!」


老いた召使いが、ハンカチを持ってきて、皇帝の汗を拭った。


彼は疲れた様子で言った。「…部屋に戻って休む。今日の全ての面会は取り消しだ。今夜は誰にも会いたくない。」


「かしこまりました。」


ナリュウス皇帝は立ち去った。


「今後の関係発展を楽しみにしているぞ、ザイロン皇帝。ホホホ…」とナリュウス皇帝は去り際に言った。


ザイロン皇帝は完敗を喫し、一日中誰にも会いたくないらしい。次の手を考えているのだろう。


まあ、それは当然の反応だろう。彼は内面で激しい心理戦を繰り広げたのだ。しかし…重要な疑問が残る。


(貴族たちに、自分たちの領土の一部が別の帝国の支配下に入ったことを、どうやって伝えるつもりなのか?)


そして、貴族たちの反応はどうなるのだろうか?


この老いぼれ皇帝には、同情するしかない。


私個人の意見を言えば、このリスクは取る価値があった…他国に領土を譲渡するという発想は、確かに狂気の沙汰だが、その見返りははるかに大きい。


これで、アルカノールス帝国の技術を利用できるようになる。


彼らの技術に名前をつけるとすれば、「時代を先取りした技術」といったところか。


想像してみろ…生まれつき魔力を持たない人間が、偶然手に入れた奇妙な装置のおかげで、魔力を使えるようになったのだ。


そう考えると、この取引は非常に有利だ。


小さな犠牲を払って、大きな力を得る…誰がそれを拒むだろうか?


うまくいけば、この帝国はすぐに明るい未来を迎えるだろう。


…と、そう思っていたのだが、事態は計画通りには進まなかった。


ええっ!?巨大な悪魔!?ドラゴンの襲撃!?一体、何が起きたというのだ!?


会議室には、潜入者がいた…それも、人間に変身したドラゴンたちが。


どうやって分かったのかって?一人が警備兵の服を着ていて、襲撃の際にドラゴンに変身して仲間のドラゴンに加わったのを見たからだ。


経緯を説明しよう。潜入したドラゴンは、ザイロン皇帝とナリュウス皇帝の会話を貴族たちに伝え、貴族たちはパニックに陥った。彼らは城の前に集まり、警備兵たちが城への侵入を防ごうとしたため、さらに激昂した。


「皇帝陛下!今すぐ姿を現せ!我々の領土を勝手に売るなど、一体誰が許したのだ!」


「皇帝陛下!説明しろ!なぜそんなことをしたのだ!」


反対する貴族は増え続け、ザイロン皇帝の宮殿を取り囲んだ。


「もう我慢の限界だ!絶対に許さない!我々の領土を奪われたままにはしない!自らの手で取り戻す!アルカノールス帝国から村を奪い返す!グリーンホール村を破壊する!誰だ!賛同する者は!」


「行くぞ!皆殺しだ!」


彼らは武器と馬、そして炎を準備し、武器と魔法で村を襲撃した。老いも若きも、男も女も子供も皆殺しにし、木造の家々を焼き払い、村は灰燼に帰した。湖は、殺された者たちの血で赤く染まった。


その頃、村の外れでは、少年が近くの森で薪を集めていた。少年は、拾った薪を抱え、軽快な足取りで、笑顔で家路を急いでいた。その時、彼の目に飛び込んできた光景。


彼の家は、炎に包まれていた。


彼は薪を落とし、炎の中へ飛び込んだ。炎は彼を焼き、額に傷跡を残した。


少年は激痛を感じたが、立ち止まることなく、炎の中を突き進んだ。そして、父親、母親、そして2歳の弟の姿を目撃した。


母親は弟を抱きしめ、父親は母親を抱きしめていた。


少年は、焼け焦げた家族の骨格を目の当たりにした。


彼は、残された焼け焦げた骨を拾い集めようとしたが、骨は粉々になり、消え去った。


涙が彼の頬を伝った。


彼の表情は、悲しみ、怒り、憎悪、嫌悪、復讐心といった複雑な感情が入り混じっていた。


その炎の中で、黒い光る球体が現れ、この世界の言葉で語り始めた。


《選ばれし者よ、見つけたぞ》


少年は球体の中に、赤い目をした炎の心臓を持つ自分の姿を見た。


球体から声が聞こえた。「力を欲するか?復讐の力か?破壊の力か?保護の力か?それとも、それら全てを?」


「復讐したい!苦しめてやる!全員殺してやる!」少年は怒りに燃えて叫んだ。


闇の空間には、玉座に座る魔王の前に、無数の悪魔がひざまずいていた。


魔王の口角が上がった。「そうだな。」


彼は拍手し、球体は爆発し、少年の体と融合した。


耐え難い痛みと、地響きのような悲鳴の中、小さな体は巨大な悪魔へと変貌した。


復讐心は彼の意識の中に残り、悪魔は目的へと向かって動き出した。


帰還した貴族たちは、自分の業績を誇って歓声を上げていた。


一人の貴族が、奇妙な音を聞き、振り返ったその時、彼と彼の馬はバラバラに引き裂かれた。


破壊の灰の中から、悪魔が生まれたのだ。


悪魔は手を振り、紫色の刃を発生させ、行く手を阻む者を切り裂いた。


貴族たちの悲鳴は、皇帝の宮殿まで届いた。


ザイロン皇帝は、部屋の窓から、血と肉片が飛び散る光景を目撃し、驚愕した。


空は黒く染まり、地を揺るがす雷鳴が轟いた。


「災厄が訪れた…」皇帝は恐怖に慄いた。


悪魔は翼を広げ、宮殿へと飛んでいった。


彼の赤い光線が、宮殿を真っ二つに裂き、皇帝は崩れ落ちる宮殿の下敷きになった。


その頃、潜入していたドラゴンの内の一匹が、巣穴へと戻っていた。緑豊かな森の中に広がる巨大な洞窟だ。


ドラゴンは敬意を払ってひざまずいた。「女王様、その時が来ました。」


美しい女王の口角が上がり、鋭い歯が覗いた。「素晴らしい。時間を無駄にするな…今すぐ軍勢を集め、私の後について来い。」


彼女はドラゴンの姿に変身し、空高く舞い上がり、ジラフィア帝国へと向かった。「復讐の時よ!ハハハ…」


彼女はジラフィア帝国に到着し、残された兵士たちを、復讐を果たした喜びと涙を浮かべて殺戮した。


そして、彼女は大地を荒廃させ、貴族たちを殺し、宮殿を破壊する巨大な悪魔の姿を目撃した。


その悪魔の中に、人間の姿を見た。


彼女は、かつて力を求めて悪魔の巣穴を訪れた際、魔王カモイとの最後の会話を思い出した。


「復讐の力か?…保護の力か?それとも、それら全てを?」


「ふーん、私の神聖な血を悪魔の血で汚す気はないわ。」彼女はカモイに背を向けた。


「ふふふ、私は一度も私の血を君に与えると言ったことはないぞ。貴女の竜族の血の尊さを知っているからだ。」


「は?じゃあ、力を得るってどういうことだ?」竜の女王は尋ねた。


「100年後、人間の子が現れ、ジラフィア帝国に破滅をもたらすだろう。」


「何だって!?まさか…。」竜の女王の目は見開かれた。


魔王の口角が上がった。「ああ…それが、私の後継者だ。」


「どうやって、あの子供が魔王カモイ、闇の象徴の後継者になるというのだ?」


「人間は脆い生き物だ。どんなに善良な人間でも、愛する者が傷つけられると、たちまち本性を現し、復讐という強烈な欲望に駆られる。そして、それを達成するために、どんな狂気的なことでもするだろう。」


「たった一人の後継者を見つけるために、人間の運命を狂わせるつもりなのか?」


「いやいや、そんなことはしない。」彼は両手を振った。


「100年後、人間は自ら破滅を招き、閉ざされた地獄の門が開かれるだろう。彼らの盲目的な欲望が、彼らを破滅へと導く。私はただ、それを傍観し、楽しむだけだ。」


「私は、人間の欲望の犠牲となった小さな子供を使って、彼らが望む破滅をもたらす。そして、その劇を演出するのを手伝うだけだ。」


「ええっ!カモイ、お前は狂っているのか!?」


「人間を憎む子供に、そんなことを言われたくないな。」


═══════════════════════════════


「つまり、あの男こそが、カモイが選んだ人間だったのか!信じられない…カモイの言葉は全て真実だった。人間の欲望が、無垢な子供を復讐心に燃える悪魔に変えてしまったのだ。」


彼女は人間の姿に戻り、破壊された宮殿の瓦礫の前にひざまずき、謙虚に頭を下げた。「あなた…あなたは誰なのか分かりませんが、感謝します。心から感謝します。もし私が生き残ることができれば、未来においても、あなたを全面的に支援します。」


彼女は自身の軍勢を集め、洞窟へと戻っていった。


その後すぐに、世界の神々が現れた。


彼らは同時に言った。「またか…人間は決して学ばない。」


「どんなに進化しても、人間の本能は変わらない…それは彼らの心に深く根付き、人間の存在そのものを形作っている。」


「欲望、憎悪、嫉妬、戦争…それらは、人間の魂に刻み込まれた価値観だ。」


「それは、犠牲と腐敗、そして絶望を生み出す。」


「私たちは、過去1000回もの機会を与えてきたが、状況は変わっていない。」


その頃、村はずれでは、少年が近くの森で薪を集めていた。少年は、集めた薪を抱え、楽しげな足取りで、笑顔で家路を急いでいた。その時、彼の目に飛び込んできた光景。


彼の家は、炎に包まれていた。


彼は薪を落とし、炎の中へ飛び込んだ。炎は彼を焼き、額に傷跡を残した。


少年は激痛を感じたが、立ち止まることなく、炎の中を突き進んだ。そして、父親、母親、そして2歳の弟の姿を目撃した。


母親は弟を抱きしめ、父親は母親を抱きしめていた。


少年は、焼け焦げた家族の骨格を目の当たりにした。


彼は、残された焼け焦げた骨を拾い集めようとしたが、骨は粉々になり、消え去った。


涙が彼の頬を伝った。


彼の表情は、悲しみ、怒り、憎悪、嫌悪、復讐心といった複雑な感情が入り混じっていた。


その炎の中で、黒い光る球体が現れ、この世界の言葉で語り始めた。


《選ばれし者よ、見つけたぞ》


少年は球体の中に、赤い目をした炎の心臓を持つ自分の姿を見た。


球体から声が聞こえた。「力を欲するか?復讐の力か?破壊の力か?保護の力か?それとも、それら全てを?」


「復讐したい!苦しめてやる!全員殺してやる!」少年は怒りに燃えて叫んだ。


闇の空間には、玉座に座る魔王の前に、無数の悪魔がひざまずいていた。


魔王の口角が上がった。「そうだな。」


彼は拍手し、球体は爆発し、少年の体と融合した。


耐え難い痛みと、地響きのような悲鳴の中、小さな体は巨大な悪魔へと変貌した。


復讐心は彼の意識の中に残り、悪魔は目的へと向かって動き出した。


帰還した貴族たちは、自分の業績を誇って歓声を上げていた。


一人の貴族が、奇妙な音を聞き、振り返ったその時、彼と彼の馬はバラバラに引き裂かれた。


破壊の灰の中から、悪魔が生まれたのだ。


悪魔は手を振り、紫色の刃を発生させ、行く手を阻む者を切り裂いた。


貴族たちの悲鳴は、皇帝の宮殿まで届いた。


ザイロン皇帝は、部屋の窓から、血と肉片が飛び散る光景を目撃し、驚愕した。


空は黒く染まり、地を揺るがす雷鳴が轟いた。


「災厄が訪れた…」皇帝は恐怖に慄いた。


悪魔は翼を広げ、宮殿へと飛んでいった。


彼の赤い光線が、宮殿を真っ二つに裂き、皇帝は崩れ落ちる宮殿の下敷きになった。


その頃、潜入していたドラゴンの内の一匹が、巣穴へと戻っていた。緑豊かな森の中に広がる巨大な洞窟だ。


ドラゴンは敬意を払ってひざまずいた。「女王様、その時が来ました。」


美しい女王の口角が上がり、鋭い歯が覗いた。「素晴らしい。時間を無駄にするな…今すぐ軍勢を集め、私の後について来い。」


彼女はドラゴンの姿に変身し、空高く舞い上がり、ジラフィア帝国へと向かった。「復讐の時よ!ハハハ…」


彼女はジラフィア帝国に到着し、残された兵士たちを、復讐を果たした喜びと涙を浮かべて殺戮した。


そして、彼女は大地を荒廃させ、貴族たちを殺し、宮殿を破壊する巨大な悪魔の姿を目撃した。


その悪魔の中に、人間の姿を見た。


彼女は、かつて力を求めて悪魔の巣穴を訪れた際、魔王カモイとの最後の会話を思い出した。


「復讐の力か?…保護の力か?それとも、それら全てを?」


「ふーん、私の神聖な血を悪魔の血で汚す気はないわ。」彼女はカモイに背を向けた。


「ふふふ、私は一度も私の血を君に与えると言ったことはないぞ。貴女の竜族の血の尊さを知っているからだ。」


「は?じゃあ、力を得るってどういうことだ?」竜の女王は尋ねた。


「100年後、人間の子が現れ、ジラフィア帝国に破滅をもたらすだろう。」


「何だって!?まさか…。」竜の女王の目は見開かれた。


魔王の口角が上がった。「ああ…それが、私の後継者だ。」


「どうやって、あの子供が魔王カモイ、闇の象徴の後継者になるというのだ?」


「人間は脆い生き物だ。どんなに善良な人間でも、愛する者が傷つけられると、たちまち本性を現し、復讐という強烈な欲望に駆られる。そして、それを達成するために、どんな狂気的なことでもするだろう。」


「たった一人の後継者を見つけるために、人間の運命を狂わせるつもりなのか?」


「いやいや、そんなことはしない。」彼は両手を振った。


「100年後、人間は自ら破滅を招き、閉ざされた地獄の門が開かれるだろう。彼らの盲目的な欲望が、彼らを破滅へと導く。私はただ、それを傍観し、楽しむだけだ。」


「私は、人間の欲望の犠牲となった小さな子供を使って、彼らが望む破滅をもたらす。そして、その劇を演出するのを手伝うだけだ。」


「ええっ!カモイ、お前は狂っているのか!?」


「人間を憎む子供に、そんなことを言われたくないな。」


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「つまり、あの男こそが、カモイが選んだ人間だったのか!信じられない…カモイの言葉は全て真実だった。人間の欲望が、無垢な子供を復讐心に燃える悪魔に変えてしまったのだ。」


彼女は人間の姿に戻り、破壊された宮殿の瓦礫の前にひざまずき、謙虚に頭を下げた。「あなた…あなたは誰なのか分かりませんが、感謝します。心から感謝します。もし私が生き残ることができれば、未来においても、あなたを全面的に支援します。」


彼女は自身の軍勢を集め、洞窟へと戻っていった。


その後すぐに、世界の神々が現れた。


彼らは同時に言った。「またか…人間は決して学ばない。」


「どんなに進化しても、人間の本能は変わらない…それは彼らの心に深く根付き、人間の存在そのものを形作っている。」


「欲望、憎悪、嫉妬、戦争…それらは、人間の魂に刻み込まれた価値観だ。」


「それは、犠牲と腐敗、そして絶望を生み出す。」


「私たちは、過去1000回もの機会を与えてきたが、状況は変わっていない。」


「しかし、今回は我々が介入し、自ら世界を変えていく。」


「この力…カモイが関わっているのは間違いないが…」彼らは帝国を破壊する悪魔を見た。


「カモイではない。世界の法則が、彼の介入を許したのだ。」


「そうだ。世界の法則に従って、人間の腐敗が広がれば、闇の力は天罰をもたらすために介入する権利を持つ。」


「世界は自ら法則を定めた。そして我々は世界の神として、その法則に従う。だから、我々は出来事を修正し、世界に秩序を取り戻す義務がある。」


「罪の犠牲となった人間よ。カモイはあなたを闇の王の後継者として選んだ。だから、我々は世界の法則に介入する権利を持たない。申し訳ない…申し訳ない。」


「現状では、償いとして、一つだけできることがある。」


神々は互いに視線を交わし、同意してうなずいた。


「宇宙の混乱の可能性はあるが、その時が来たら対処する。」


「転生の準備を。」


彼らは悪魔と化した人間を囲み、理解不能な呪文を唱えた。


地震のような地響きが走り、白い光が悪魔を包み込み、まばゆいばかりの白い光線が放たれた。


「これが、人間への最後のチャンスだ。それを無駄にすれば、人類は完全に滅ぼされるだろう。」


「魔法の印のシステム。それは、差別をなくし、全ての人間に魔法の力を与えるシステムだ。これによって、このような悲劇は二度と起こらない。」


どんなに暗い運命が待ち受けていようとも…全てを修復する希望はまだ残されている。「闇の王の子よ。」


「選ばれた人間と出会うことを願って。彼の手に、この悲劇の終焉が託されるだろう。」


一体何が起きたというのか?突然、四柱の神が現れ、巨大な光が放たれ、そして、悪魔と化した人間は消えた。一体何が起きたのか、全く理解できない。


しばらくして、災厄を生き延びた人々が現れた。本当に生き残った人間がいるというのか?


ちょっと待って、村では何が起きているんだ?死体が動いている…いや、違う。焼かれたはずの村人たちが、生き返っている…!


これは、神々の仕業に違いない。彼らのために、本当に嬉しい。


だが、貴族たちは一人も生き返っていない。一体何が起きているんだ?


特定の人間だけを選んだのだろうか?まるで、「生き返るに値する者、選ばれた人間」といった感じだ。


まあ、それも当然だろう。この災厄の引き金は、そもそも貴族たちが引いたのだから。


「当然の報いだ。」


事態が少し落ち着いてくると、私の頭には様々な疑問が湧き上がってきた。(アルカノールス帝国が誇る技術とは一体何なのか…普通の人間が魔法を使えるようになるという、突如として現れた技術。いくら考えても、ありえない話だ。)そして、次の疑問。その装置の発明者は誰なのか?偶然に発見されたなどとは、誰も信じないだろう。


好奇心に駆られて、私はその装置を自分の目で確かめることにした。今まで見たことがないのだから。そして、風の魔法を使って、アルカノールス帝国へと向かった。私の特技はスピードだ。風の魔法を使えば、風を操り、嵐を起こしたり、風の力で速度を上げたり、時には飛行もできる。だが、飛行はまだ修行中だ。


なぜあの戦いに参加しなかったのか?と問われるかもしれない。


当然だ。私が負ける戦いに参加するなど、狂気の沙汰だ。


巨大な悪魔とドラゴンの軍勢相手に、誰が自分の命を危険に晒すというのか?


もし、人間同士の戦いなら、何とかなるかもしれない。


そんなことを考えているうちに、アルカノールス帝国の境内に到着した。


一体、何が起きたというのだ!?人間は皆死んでいる。それだけではない。


彼らの死に方は、あまりにも残酷だ。頭が吹き飛んだ者もいれば、バラバラに引き裂かれた者もいる。


死体と死体の間を歩く私は、吐き気を催しそうだ。この光景と、悪臭は耐え難い。


死体の列の先に、ナリュウス皇帝の城があった。


私は城の門を開けた。軋む音が、空間に響き渡った。


薄暗く、静まり返っている。


「もしもし?誰かいますか?」



返事はない。私の声だけが、空間にこだました。


玉座の間に入ると、ナリュウス皇帝の遺体が玉座に座っていた。少なくとも、体は残っていた。だが、魂は抜け殻のようだ。白い目をした、生命のない顔。口は大きく開いたまま、玉座に座っていた…


ナリュウス皇帝は死んでいた。


私は少し後ずさりし、不安と恐怖を感じ始めた。


私は玉座の間から出て、何が起こったのか分からずにいた。一体誰が、こんなことをしたというのか?


死体の列を再び辿っていくと、城の脇にある小さな小屋の前に、同じように死体が横たわっていた。


死体からは、かすかな光が放たれている。赤、青、白、緑…様々な色の光だ。


私は慎重に近づき、その光を調べた。一人の死体に近づくと、光から魔力を感じた。…いや、光そのものが魔力だ。だが、それは純粋な魔力ではなく、自然の魔力よりもはるかに弱いものだった。


「分かった…これは人工魔力だ。きっと、あの奇妙な装置を使った人間たちだろう。


だが、なぜ彼らは死んでいるんだ?」


ともかく、先に進もう…


小屋の扉が開いていたので、中を覗いてみた。


良い香りがする。食べ物の匂いだ。


私は暗闇の中をゆっくりと、その匂いの元へと近づき、テーブルの角にぶつかった。「痛っ!」


テーブルの上には、肉料理が置かれていた。それが、あの匂いの元だろう。空腹の腹が鳴った。「ああ、食事をするのを忘れていた。」辺りを見回したが、誰もいないようだ。「ま…まあ、せっかくの料理を無駄にするのも勿体ないから…いただきます。」


「ごちそうさま。」


腹ごしらえも済んだので、元の仕事に戻ろう。薄暗い部屋の中を歩き回っていると、私の手が、書棚の金属製の板に触れた。


すると、石が動く音が聞こえ、下を見ると、扉が開いた。


まさか…私の足元に、秘密の通路が開いたのだ。


「ついてない…」


そして、次の瞬間、私は自分の体が感じられなくなった。


「冗談だろ…!」


私は、小屋の下にある秘密の通路に落ちた。巨大な穴の中を、ドスンと音を立てて落下した。「痛い…」


目を覚ますと、この時代にはありえない、恐ろしい光景が広がっていた。


白い空間。巨大な機械が、今まで聞いたことのないような奇妙な音を立てている。


ここは研究所のようだ。だが、私が知っている科学研究所とは全く違う。はるかに高度な技術が使われている。こんな場所が存在するはずがない。まるで未来から来たかのような、全く異質な空間だ。


私は、何も分からずに歩き回った。巨大な機械が、絶え間なくゴーゴーと音を立て、緑色の液体が流れ、他の機械からは蒸気が噴き出している。


研究所の奥で、一人の男が立っていた。奇妙な機械の前に。その機械には、大人が入れるほどの部屋があった。


私は近くの機械の陰に隠れた。


あれ?おかしいな?男からは、全く魔力を感じない。まさか、魔法が使えない人間なのか?


男は、楽しげな声で言った。「何度も失敗を繰り返した挙句、ついに修理完了だ!魔法薬も改良できた!さあ、オキナワに戻って、破壊作戦の準備に取りかかろう!」


男は何を言っているんだ?彼は、奇妙な部屋の横にあるいくつかのボタンを押し、最後に緑色のボタンを押した。


すると、機械から奇妙な音がし、部屋が緑色に光り始めた。


男は狂ったように笑い出した。「ハハハ…成功した!本当に成功した!」


彼は部屋の中に入り、私の目と目が合った。「…何者だ?どうやってここに来た?」


「しまった…」


次の瞬間、まばゆい光が放たれ、男は目の前から消え去った。まるで、蒸発したかのようだ。


私は奇妙な機械に近づき、様々な疑問が頭をよぎった。「一体、この男は何者なんだ?オキナワとは何だ?」


頭を掻きむしった。「くそっ!今日は一体全体、何が起きているんだ?さっぱり分からん。」


私は奇妙な機械に近づき、先ほど男が押していたボタンを調べた。


「ふむ…こんなものは初めて見た。これは、アルカノールス帝国が誇る技術に違いない。」


機械に触れると、機械が光り始めた。ボタンを見て、好奇心から押してみることにした。


「確か、男は2番、4番、9番、そして5番を押していたな。」


すると、閉ざされていた部屋が開いた。


私は部屋の中に入った。そして…


「…次にどうすればいいんだ?」


次の瞬間、部屋は閉ざされ、まばゆい光が放たれた。光が、私の視界を奪う。


白い光が消えると、私は目を覚ました。


「はぁ!?」私は驚愕した。


緑の草、澄み渡る青い空、心地よい風、そして花の甘い香り。


どうやら、私は公園にいるらしい。


一体、何が起きたというのだ?さっきまで奇妙な機械の中にいたのに、今はこんな場所に…死んだのか?それとも、夢を見ているのか?


それを確かめる方法がある。


「痛い…」痛みを感じる。つまり、私は生きている。だが…一体、ここはどこなんだ?


ため息


ともかく、人がいるから聞いてみよう。


だが、ここは、私が来た場所よりはるかに発達しているようだ。


機械が動き回り、人間がその中にいる。


建物には奇妙な映像が映し出され、人々は建物の壁に設置された四角い機械を通して話している。


奇妙な服装をした人々が街を歩き回り、私を見て、小声で話している。


さっき見たような動く機械の上に乗った人々が、街に紙をばらまいている。


一枚の紙が風に舞い上がり、私の顔に当たった。


私は紙を拾い上げ、内容を確認した。


【リーガン王子即位式典】

【日付:大災害後2000年】

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