批評 その2
何がキツいのか?と問われた場合、先ず最初に挙がるのはNPC達の規則正しさ。
皆が皆、無個性で規律に厳しく、規則正しい生活を送る為(プログラムにそれを言うのもお門違いな気もするが……)、少しでも毛色の違う行動をとったりすると、途端に不可視な好感度パラメーターが下がり、嫌われ、排除対象となる。
分かり易く言えばNPCにハブられるのだ(因みに、このイベントは現実の時間で平均約三か月ほど行われる)。
多くのプレーヤーが、この過酷な仮想社会生活に心を折られる事となる(トラウマを植え付けられる者も多いと聞く)が、そこを耐え抜いた猛者たちを待っているのは……更に過酷な仮想社会イベント。
お受験。
このイベントをクリア出来ない場合、ゲームオーバーになるのでは無く、その先に進めない。
つまり延々と受かるまで受験をさせられるのだ。
ヘッドセットを投げ、破壊してしまった者が居るのも頷ける。
尚、数学的な問題以外は、この仮想社会上での常識や道徳、歴史の問題となる為、覚えたところで現実では全く役に立たない。
この時点でプレーヤー総人口の約8割(SNS調べ)が脱落するといわれている(正確な数字か定かではない)。
だが、このイベントすらもクリアする僅かな猛者(変態)も存在する。
何の為に彼らはこのゲームと向き合うのか……?
その精神構造と、時間への考え方はさておき、ゲームの説明を続ける。
その先にもプレーヤーに安息の地は存在しない。
辛く苦しい受験を終えた後、以前にも増して厳しい軍隊のような学園?生活を、ロボットのように無機質なNPC達(当然といえば当然)と送る事になる。
その先に迎える新たな試練、それは――
またもや受験だ(大学受験と称されている)。
概要は先の受験と同じで、数学的問題は、現実世界の問題と同じである。
だが、難易度が跳ね上がる。
現実世界での大学入学共通テスト相当のレベルだという。
参考書片手にゲームの攻略を目指す姿は、異様と表現するしかあるまい。
そして、ゲーム内でカンニングなどしようものなら、NPC達から手厚い制裁を受ける事となる。
『拷問』と称して差し支えないだろう。
詳細は伏せるが、フルダイブ型のゲーム内でのその行為は、トラウマ必至だ(中にはそれを”ご褒美”と呼ぶ変……強者もいるらしい……)。
本当は受験勉強対策用ソフトなのでは?との憶測も流れたほどだ。
だが、その意見を覆すかのように、数学以外の問題は、現実世界では何の役にも立たない(小論文のテストなど実にシュールとしか言いようがない……)。
ゲーム内での歴史問題や、倫理・道徳観、更には魔術の試験なども存在する。
”魔術”と聞けば”いよいよ!”と期待してしまいそうだが、そこにも抜かりは無い。
授業で座学のみである以上、筆記試験のみだ。
実況スレでは――
「俺は、何故こんなにも意味の無い努力をしているんだろう……?」とか、
「絶対に足を踏み入れてはいけない……。そう、絶対にだ」とか、
「教えてくれ。俺は今、いったい何をやっているんだ?」という、人生について色々と考えさせられる苦悶のコメントが飛び交う事となった。
それと向き合う事こそが、このゲームのメインテーマだったのでは無いだろうか?と、深読みする者も居た。
余りにカオスなコメントが少し話題になり、一時的にプレーヤー人口が増える事態ともなったのだが、あまりの虚無さと過酷さに殆どの者が枕を濡らす結果となった。
そして、このイベントを突破すると、状況は一変し、まるでギャルゲーや乙女ゲーのような世界へと変わる。
共に生活するNPC達はそれまでと打って変わり、個性豊かで、見目麗しい。
『やっとまともなゲームが始まるのか』と、プレーヤー達は安堵し期待する。
――が、当然、その期待を裏切るからこそ”クソゲー”と呼ばれているのだ。
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