生き物は玩具じゃない!

XX

もっと周りの事を考えて!

 狩る楽しみのためだけに、山や沼にドラゴンを放す転生者がいます。

 同じ転生者として私は恥ずかしい。


 ドラゴン。

 それは強大な力の象徴。


 それを倒した人間は、ドラゴンスレイヤーという称号を得るのだけど。


 前世の因縁で、強大なギフトを持って転生して来る存在・転生者は当たり前のようにそれが出来てしまうので。


 そのせいで……


 ドラゴンの居ない場所にドラゴンを連れて来て、それを狩る遊びをするマナーの悪い転生者がいるんだよ。

 本当に最低だと思う。


 私の目の前に広がるこの沼だって、以前はヒュドラやアビストード、バルーンファイトフィッシュのような多様な生命が生きる猛毒の沼だったのに。


 マナーの悪い転生者がアクアドラゴンを放ったせいで。


 以前から居た生き物たちはすっかりいなくなり。

 今ではこの通り、澄んだ水を湛えた清浄な湖になってしまった。


 こんなこと、許されるわけがない。


 私は事態を問題視して、アクアドラゴン駆除を以前から頑張っている。


 だけど


 他の転生者は「キャッチアンドリリースだ」といって、アクアドラゴンを虐め倒して、ドラゴンが怯えはじめたら許して解放するんだ。

 動物愛護のつもりなんだろうか?

 そんなの、私は偽善だと思っている。


 それどころか、個人で飼ってたアクアドラゴンが大きくなって飼い切れなくなったと、この湖にこっそり捨てに来る転生者もいる。

 最低だ。絶対に許せない。


 最後まで面倒を見切れないなら、ドラゴンなんて飼うべきじゃ無いでしょ!


 私がそう、転生者たちの最低な行為を思い、憤っていると。


 湖からザバッと、巨大な長い首が姿を現した。


 それは薄い青色で、蛇と鰐に似ていた。


 アクアドラゴンだ。


 シャアアアアア!


 アクアドラゴンが吠えた。

 その声は蛇の立てる音に似ている。


 そしてアクアドラゴンは、その口腔から高圧の水の刃を吐きだした。

 アクアドラゴンのアクアブレス。


 その威力は岩をも両断し、ヒュドラの胴体すら真っ二つにして屠ってしまう。


 私はそれをサイドステップで躱して


「旋風刃!」


 右手を真横に振った。

 その右腕から、風の刃が飛び出して、アクアドラゴンの首を斬り落とす。


 切断された首が水に落ち、水飛沫を立て。

 残ったアクアドラゴンの身体の方も沈んでいく……


 ……ゴメン。


 君たちは悪くないのに。


 本当は生まれ故郷に帰してあげたいけど、私にはどうすることも出来ないんだ……!

 君たちは繁殖し過ぎて、数が多過ぎるから……!


 私は


 転生者たちの身勝手さと、アクアドラゴンたちへの申し訳の無さで。

 涙を流す。


 ……人間はなんて、身勝手な生き物なんだろう……!

 自分が楽しければ、生態系がどうなってもいいって言うのか……!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

生き物は玩具じゃない! XX @yamakawauminosuke

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画