山の中にぽつんとある一軒家で…【全2話】【お題で執筆‼短編創作フェス】
Minc@Lv50の異世界転生🐎
ただいまぁ!
朝は鳥たちのさえずりと窓から入ってくる朝陽で目が覚める。この山の中にぽつんとある一軒家に来て3日目。外に出て肺いっぱいに澄んだ空気を取り込み両手を空に向けて大きく伸びをする。
「ふわぁぁ~っ気持ち~!!」
山の上なのでまだ少し朝霧も残っている。竈でお湯を沸かす。ドリップパックのコーヒーにゆっくりとお湯を回し淹れる。その瞬間コーヒーのいい香りが鼻をつく。
多分、今はガルバリウム鋼板の屋根だが以前はきっと
裏の山の湧き水を利用した水道で歯を磨き髭も剃る。
なんて清々しいんだ。ここの澄んだ空気と水で身体に淀んでいた汚れが綺麗に流された!そんな気持ちにさえなった。
縁側で太陽のぽかぽかとした陽射しを浴びながら昼寝をしていた。
ジャリジャリジャリジャリ…
キュッ!バタン!
ジャッ!ジャッ!ジャッ!ジャッ!
ガラガラガラガラ~
引き戸を開ける音と共に
「たっだいまぁ!!」
と大きな女性の声が家の中に響いた。
その声に俺はビックリして起き上がった。
ドスドスドスっという足音と共にひょっこり人の好さそうなちょっと小太りの小柄のおばちゃんが土間から顔を覗かせた。
「あっらぁ!もう来てたのぉ?早かったわねぇ?鍵の位置分かった?」
そう笑顔でおばちゃんは俺に話しかけたので俺は無言で頷いた。
「遠かったでしょぉ?う~んとなんだっけ、そうそうタケシ君…だったわよね?」
コクンと俺は頷いた。
おばちゃんは土間で靴を脱いで上がってきた。この家は古民家だから土間があって部屋は4つ。それも田んぼの漢字のように繋がっているだけだ。おばちゃんはそれらをぐるっと一周して戻ってきた。
「まぁまぁ掃除までしてくれたのねぇ。ありがとう!」
ニコッと人好きする笑顔で言ってくれて思わずおれはエヘッと頭に手をやって答える。
「まぁそんな固くならないで!私はアナタのお祖父さんと私の父が兄弟で、アナタは私の従兄妹の子供って事になるのかな。まぁ初めましてだもんねぇ…しょうがないわよねっ」
おばちゃんは固くなっている俺にニコッとほほ笑みかけてくれた。
「まぁお茶でも飲んでお話しましょう!お茶入れてくるわ」
そういっておばちゃんは土間に戻ったかと思うと土間の奥にあるキッチンに向かっていった。
しばらくしてお盆に急須と湯呑を載せて戻ってきてちゃぶ台に置いた。茶たくに湯呑、饅頭を俺とおばちゃん用に用意して丁寧にお茶を湯呑に注いでくれた。
「この家はアナタのお祖父ちゃんのお父さん、まぁつまりはひいおじいさんの家なのよ。古いでしょぉ?でそのひいおじいさんが亡くなってしまって、相続人は私の父と貴方のお祖父さんだったんだけど貴方のお祖父さんが行方知れずになっちゃって……」
ずそそそそそ
おばちゃんが入れたお茶をすすった。
「まぁ結局この家は誰が継ぐという話し合いができないまま忘れ去られていたの。で!この間この家のもう一人の相続人である私の父が亡くなってしまったの。それで私がこの家の事を知ったという訳。法律変わって相続の家って登記するのが義務になったらしいのよ。だからもうそれから必死になって貴方のお祖父さんの行方を捜したわぁ」
バクッ
おばちゃんは今度は饅頭を口に入れた。
「んんんんん~~!ここの饅頭は間違いないわぁ」
食べ終わってお茶をすすってから手で俺にもどうぞという手の動きをした。軽く会釈をしていただく事にした。
「やっと見つかったぁ!って思ったらもうお祖父さんも貴方のお父さんも亡くなっていてここの相続人はその息子のタケシ君と私の二人だったという訳。もっと兄弟とか多かったら大変だったわぁ。それでお知らせして相続放棄するか?って聞いたわけ」
おばちゃんは舌を出してテヘッという顔をした。
「うっ!」
俺は急に胸が苦しくなり息が吸いづらくなっていた。力も入らずバタッと倒れてしまった。
「うぅぅうぅぅぅ」
何がなんだか分からず苦しむ俺をおばちゃんは落ち着いて蔑むように見下ろしていた。
「まさかこんな遠くの山の中の家を見てから決めたいだなんて言うと思わなかったわぁ…売れもしないボロ家だって言ったのにぃ」
じゃりじゃりじゃりじゃり……
キュッ!
バタン!
車が一台やってきた。
ジャッ!ジャッ!ジャッ!ジャッ!
カラカラカラカラ…
引き戸を開ける音もした。
「こんにちはぁ!連絡もらったタケシですけどぉ」
大きな声が響き渡る。
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