第4話 推し活グッズに宿るモノ
「あの子は
電動キックボードを返却スポットに停めて振り返った先輩は出し抜けに言った。
「はっ、え? あ……はぁはぁ……」
長い距離を走って急に止まったところに予想外の一言を告げられて呼吸ができない。
「そ、そんな、どうして……」
どうしてあの人が取り憑かれていると思ったのか、どうしてあの人が先輩の店に来ていたのか、どうしてあの時……、ああ訊きたいことは山ほどあるのに息ができない。
「そもそも私が何故あの店を開いたのかですが……」
僕の次の言葉を待たずに先輩が話し始めた。そこから話してくれるんですね。
「まず、ここ数年の
キャラクターグッズ? ……ってクリアホルダーとかTシャツとか? あとはアクリルスタンドとかも?
「先輩、
前を歩く先輩はチラとこちらを振り返り、やれやれといった顔で視線を外した。なんかむかつく。
「
……ご教授ありがとうございます。それで先輩は推し活グッズショップを開いて、ん? それで推し活する人を集めて、グッズを売りつけて……
「じゃあ先輩は、あの店で
ノルマを達成するためにわざわざ
「その逆ですよ。私の店の商品には、すべて私の霊力が込めてあります。
早とちりの勘違いでした、すみません。要は
「今回のその子は常連さんなんですよね? 先輩の店のグッズを使ってるのに取り憑かれてしまったんですか?」
もしかして、先輩の霊力破れたり〜ってこと?
「私の店はまだ作品のキャラクターグッズを置くまでの規模とコネがありません。おそらく
なるほどですね。先輩の店もまだまだ発展途上ってことだ。
「そこまでわかっていたら、あの場で除霊することもできたんじゃないんですか?」
「君が霊力ダダ漏れでレジに近づいたからですよ。それで
自分が足を引っ張っていることに逐一気付かされるとさすがにへこんでくる。……だったら店の手伝いなんかさせるなよ。
「もっとも、
「でもよく推し活なんかに目を付けましたね。グッズショップまで開くなんて、やっぱり先見の明があるっていうか」
多少ヨイショしておかないと、この人から見放されかねない。
「私は推しを愛する人に苦しんでほしくないだけです。推し活とは本来人生を豊かにするもの……。なのに人の寂しさに付け込んで己の霊位を高めようなど、許しがたき所業です」
あ、そういえばこの人、ナチュラルに推し活が好きな人だった。
「着きました。ここに霊力の反応が留まっています」
先輩が立ち止まって目を向ける。そこは【メゾン アルテミス】というプレートが掲げられた、小さなアパートだった。
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