第2話 『おかえりなさいませ』でございますわ
表通りから少し入ったビルの前で車を止めていただきました。
お店はこのビルの二階との説明を受けております。
見上げると可愛らしい看板が目に入ります。
すっかり運転を任せてしまいましたね。時間になりましたらここに迎えをお願いします。
「承知いたしました。いってらっしゃいませ」
逸る気持ちが抑えきれません。早速入店致しましょう。
―――― § ―――― § ――――
「「「おかえりなさいませ お嬢さま」」」
三人の可愛らしい女性にお出迎えしていただきました。
声も仕草も可愛らしいですね。
これが噂に名高いメイドカフェの『おかえりなさいませ』でございますわ
「いらっしゃいませ」ではなく「おかえりなさいませ」との出迎えがあるとは事前に予習した通りでございます。しかし実際に目の当たりにしますと感動いたしますわ
みなさん黒を基調として白いレースをふんだんにあしらったメイド服を着こなしております。
特筆すべき点は極限までに短いスカート丈でございましょう。しかもフレアスカートですので仕草に合わせふわふわと揺れ動き危うさを感じさせます。
スカート丈が短いことから健康的なおみ足がすらりと強調され、白いガーターストッキングがお似合いでございます。
素晴らしいではありませんか 同性ながらも目を奪われてしまいました。
殿方であれば心を掴まれること間違いございません。
当家でもこのメイド服を提案してみましょうか
「リズお嬢さま こちらに席をご用意しております」
名前で応対していただけるのですね。それだけで親しみがわいて参ります。
「聖女雪さまはこちらへどうぞ」
うふふふ さすがでございますね。
雪さんは、お嬢さまではなく聖女さまとして対応されております。
メイドさん方は各種作品に精通されていらっしゃるようでドレスだけで役柄が判断できるようでございます。
素晴らしい知識と能力でございますね。
「アリスお嬢さま ご帰宅誠にありがとうございます。「なでしこ」がお世話させていただきます。すでにお茶会の準備は整っておりますので何なりとお申し付けください」
仕草も対応も心地よい距離感があり素晴らしいですね。「なでしこ」さんとおっしゃるのですね。よく見ると腰の位置に控えめな名札が付いておりました。
「リズお嬢さま専属メイドの「ちょこ」です。よろしくね」
これはまた小柄で愛らしいメイドさんですね。少し砕けた挨拶が妹のような感覚を抱きます。ツインテールに振り分けた髪がお似合いですね。
「聖女雪さま お気軽に「ちゆき」と呼んでください」
雪さんの担当メイドさんは千雪さんのようです。名が重なったのも何かのご縁でしょう。
それにしても「聖女雪さま」は良い響きです。今後使わせていただきましょう。
§
昭和から続く洋食店のような内装でございます。調度品も良いものを使われておりますね。
控えめではありますがシャンデリアが輝いており晩餐会の雰囲気を感じさせます。
文献や映像などで見聞きした店舗はもう少し明るくカラフルな装飾だったように記憶しております。
しかしアリスさんに厳選していただいたのですから間違いないでしょう。
「お飲み物をお持ちしました」
事前にお話が通してあるようでお勧めの品が給仕されるそうでございます。
「『萌え萌えハートのラブポーション ~聖なるイチゴを添えて~』です」
赤い色をしたソーダの上に半分に切った苺が添えてあります。
「イチゴがハートマークになっているんですよ」
ストローまでハートの形とは隅々まで愛らしい飲み物でございます。
「さあ雪先輩 出番ですよ。おいしさを五割増しにする聖女の術をお願いしますっ」
「メイドさんが魔法をかけるのではないのですか」
そういえば「ポーション」でした。これがアリスさんが雪さんのドレスを指定した訳ですね。
さあ聖女さま無駄な抵抗などせず、いつもの術をお願いしますよ。
メイドさんも流れを理解されているようで胸の前で指を絡ませ片膝をつき祈りの姿勢
そして期待のまなざしを雪さんに向けております。
私たちも祈りましょうか
「世界樹の加護がありますように」
―― キラキラキラッ ――
雪さんの祈りに合わせてなぜか店内に効果音まで流れましたよ。素晴らしい演出ですわ
「聖女雪さま ありがとうございます。聖女の術を初めて見ました。感激です」
本当に感動している千雪さん 作品愛を感じます。
メイドさんから拍手を頂いて照れる雪さん
これだけで満足してしまいそうですがまだお料理が出ておりません。
どのような品で楽しませていただけるのでしょうか
期待が高まりますわ
次の更新予定
2025年1月9日 16:00
『おかえりなさいませ』でございますわ【カクヨムコン10短編】 音無 雪 @kumadoor
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