初夢はひめはじめ

縞間かおる

第1話

 押し当てられた唇から差し込まれた舌の動きに私の絶叫は止まらない。


 これほどまでに私の事をみっともないサイレンにさせてしまうのはあのしかいないはず!!

 なのに……私の内ももを這う指は……明らかにオトコの指の感触だ。


 あなたは誰?


 誰なの??


 真っ白になりつつある頭の中で私は拙い経験のファイルを繰ろうとする……

 その瞬間、舌使いの快感に体を割かれた!!


 ……最後の絶叫が寝ぼけた喉に引っ掛かり押し戻されて


 私は……

 我に返るように目が覚めた。


 ほぼブラックアウトの視界。


 激しかった鼓動が落ち着いて


 目が慣れると

 見慣れすぎた柄……

 枕カバー?


 目尻には涙?……


 良かった。

 枕カバーは涎で汚されてはいない。


 重い頭をもたげると


 ベッドから左足が零れ落ちて


 空の四合瓶を全部蹴倒した。


 向こうでは先に一升瓶が寝っ転がっているから


 さしずめ今朝の“2投目”で……スペアか……


 もんやりとした頭のまま寝返り打つと

 目覚まし時計のデジタル表示が目に飛び込んで来た!


 ああ……

 ああ!

 ああ!!


 あと15分は眠れたのに!!


 何で!?


 何で!!??


 休み中は

 家に籠って


 寝ては起きての

 飲み三昧


 夢なんか

 ちっとも見なかったのに!


 どうして初出の朝に!


 こんな初夢見るわけ?!!!


 ああ~っ!!


 早く帰って寝たい!!

(まだ出勤すらしていない……お布団の中に居るのに)


 寝乱れた髪を

 ぐしゃぐしゃと手で梳いて

 ついでに

 よれよれのキャミの裾から手を突っ込んで

 ノーブラの胸のあたりまでお腹をボリボリ掻いた。


 会社……

 行かなきゃなあ~


 私が居なくたって!!


 どうとでもなるから……


 だからこそ

 意地でも

 這ってでも

 出社して


 お局の椅子を確保せねば!!


 しかし……


 この後、私は


 ショーツを裏表逆に履いているのに気が付いて


 更にテンション下げ下げになった……




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初夢はひめはじめ 縞間かおる @kurosirokaede

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