第12話

 あの後、心愛は珍しく泊まりに来ることもなく帰った。

 本当に珍しい事もあったもんだ。

 そして翌日の学校の昼休み。


「昨日は、あれからずっと心愛と話してたのか?」

「うん、近くのファミレスで。って、司くんから話し掛けてくれたの初めてじゃない?!」

「妹の事だし」

「そこが大事なんだね」


 そりゃな。


「司くんの方は?病院大丈夫だったの?」

「一応な、そこまで問題無いって言われたけど薬も出してもらったし」

「そっか、良かったね」

「しかし、心愛とは仲良くなったみたいだな」

「うん、連絡先も交換したよ」


 まあ、こいつなら心愛に悪影響を与える事もないだろう。


「ねえ、あたし心愛ちゃんの連絡先知らないんだけど」

「どっから湧いてきた星沢、お前に心愛は近づけさせん」

「あー、いい子だけど瀬令奈とは合わないかも…」

「やってみないと分かんないっしょ」

「何をやる気だこの女」

「ん、遊ぶんじゃないの?」


 お前は芽衣一筋でいろよなもう。


「もうお前らは…まあ昨日来てくれたのは助かったが」

「あ、司くんに追い返されなくなったよ!ちょっと好感度上がったかな?」

「どうでもいいし」

「やっぱお前らもうどっか行けよ」

「ウチの席ここだもーん」

「何であんたの指図受けなきゃいけないわけ?」

「くっそ面倒くせえ」


 こいつら俺の扱いに慣れてきやがったな?


「て言うかテスト近いんだし勉強でもしてろ」

「ウチは大丈夫だよ、結構成績いいんだよ?」

「あんたより頭悪い訳ないし、誰に物言ってんのよ」

「あ?星沢やんのかお前?」

「やってやろうじゃん上等だし」

「ち、ちょっと二人ともやめなって!」

「このギャルが、友達も居なくて勉強しかしてない俺に勝てる訳ないだろうが」

「やめて司くん」

「また地雷だし」


 うっせーな地雷地雷って。


「じゃあ次のテスト、俺が勝ったらコンビニで一番高いスイーツで」

「あたしが勝ったら、心愛ちゃんの連絡先教えてもらうから」

「何言ってんだこの身の程知らずが」

「あぁ?やんの?」

「…あのな、妹とはいえ勝手に俺が連絡先教えられる訳ないだろ」

「…じゃあ、せめて一緒に遊びたい」

「はぁ…話だけなら通してやるから、自分で説得しろ」

「ふふ、やった」

「お前が俺にテストで勝てる訳無いしな」

「吠え面かかせるし」

「じゃあ、ウチが勝ったら3人で何処か遊びにいこ!」

「芽衣は可愛いわね」

「毒気が抜かれるな」


 マジになってた自分が恥ずかしい。

 つか、気がついたら3人でテスト勝負する羽目になってんだが。


「遊びに行くときは心愛ちゃんも呼んでみようね!」

「この女もう勝った気でいやがる」

「それなら芽衣が勝ってもOKじゃん」

「くそが、星沢に妹は絶対やらん」

「いや、マジであたし普通に友達になりたいだけだかんね?」


 本当かよ、全く。


「あ、ウチ休憩終わる前にトイレ行くね」

「もう取り繕わなくなったな」

「瀬令奈は?」

「ん、ちょっと先行ってて」

「うん分かった」


 ん、何で星沢だけ残ったんだ?

 連れションしてくりゃいいのに。

 …雰囲気からして、何か言いたいことあるみたいだな。


「あんたさ、5組のやつと何かあった?」

「いや、知らないが…?」


 うちは1組だからな、そんな端っこのクラスの連中と交流は無い。


「『花城 凪咲』って女知ってる?」

「…知ってる、あの女が又何かやりやがったか?」

「まだ何も、だけど気を付けんのよ。あいつが例の嘘告騒動の女なんでしょ?」

「…そうだ」

「あいつ、どういう女なわけ?」

「一言で言えば…『姫』って感じだ」

「…面倒くさそうな感じだし」

「そうだな、正直二度と会いたくなかった」

「気をつけんのよ」

「おう、教えてくれてありがとうな、助かった」

「…そう思ってんなら心愛ちゃん紹介しろ」

「それは別だ、ちゃんと俺に勝てたら考える」

「…ふんっ、勝つに決まってるじゃん」

「…はっ、言ってろ」


 しかし、面倒な事になりそうだな。

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