~無純(むじゅん)の初春(はる)~『夢時代』より冒頭抜粋

天川裕司

~無純(むじゅん)の初春(はる)~『夢時代』より冒頭抜粋

~無純(むじゅん)の初春(はる)~

 人間(ひと)の歯車(くるま)に感覚(いしき)を駆り立て白亜(しろ)い感覚(いしき)へ佳日を観るのは、幻想(ゆめ)の無口の〝広い空間(すきま)〟に選り取り見取りの加減が成った―――。崩壊して行く文言(ことば)の人陰(かげ)から幻想(ゆめ)と自己(おのれ)の幻想(げんそう)など観て、暗(やみ)の静寂(しじま)に美辞を気取れる不応の孤憶(こおく)を横目に辿れば、切りの好いのを上手(じょうず)に見て取り「安い旧巣(ふるす)」は切羽詰まった…。

      *

 死んだ旧友(とも)が出て来た。天然史男(てんねんしなん)である。他にも高校時代の友人が居り、顔の長細い、土色(つちいろ)した女が居た。俺達は、高校時代から大学時代へ戻って居たようだ。

 近所の蝦蟇口女(がまぐちおんな)が出て来た。ゴルフに俺達は行って居り、S太(えすた)が高所恐怖症に成って居ると言い、人混み、街中へ出られず、ニートの生活を送ら去(ざ)るを得なく成って居ると言う。何か、蝦蟇口女は俺に冷たかった。

      *

 文言(ことば)の四隅(すみ)から無形(かたち)が仕上がり脆弱(よわ)い孤憶(こおく)に該当するのは、柔い兆しを最初に目にした滑稽ばかりの情乱(じょうらん)でもあり、安い地道に精神(こころ)を宛がう密(みつ)の景色に巣立って在った。幻想(ゆめ)の光沢(ひかり)に育って居ながら生憶(きおく)の果実はどたばた喜劇で、休み休みで騒いで活き得る果敢の景色は騒々しく在り、暗(やみ)に始まる無類の期日人の掌(うち)から宙(そら)へと戻れる。固陋に扮した木陰の許容(うち)には人間(ひと)の着物を好く観て煩う、酷い酒場を画(え)にして愉しむ不当の家主が堂々阿り、幻想(ゆめ)の一重(ひとえ)に規則を束ねた一人(ひと)の初歩(はじめ)はどっぷり血塗られ、手厚(あつ9い朝日の身近に画(かく)せる不当の興味は腐乱を識(し)った。過去の生憶(きおく)に暗(やみ)が立つのは脆弱(よわ)い佳日の本能(ちから)に折り見て、幻想(ゆめ)の手綱を躰に刻める不装(ふそう)の神話を掌(て)に取り眺めて居ながら、自己(おのれ)の幸(こう)から喜楽を牛耳る不頼の小敗地(アジト)を発見して居た…。男女(ひと)の孤力(ちから)を宿に観るうち無類の神話を暗(やみ)へ隠せば、脆弱(よわ)い景色の人間(ひと)の背中は幻(ゆめ)の感覚(いしき)に脆(よわ)さを見て居り、一人(ひと)に活き着く旧い佳憶(かおく)は安い身内に辛抱して居た…。幻想(ゆめ)と躰が未知に生くうち生憶(きおく)に滴る奈落が返る…。旧(ふる)びた感覚(いしき)が人山(やま)を見上げて幻(ゆめ)の生憶(きおく)に未遂が止(と)まれば、人間(ひと)の頭(こうべ)に脂が流れた〝日々の空間(すきま)〟を優越にも観た。乱心(こころ)の生憶(きおく)を情緒へ保(たも)たせ「安い日々」には上気が翻(かえ)り、現行(いま)の既憶(きおく)を好転させ得る「真っ向勝負の頭上」を描(か)き置き、安み安みに形を彩る無形(むけい)の静間(しずま)を好接(こうせつ)して居た…。白亜(しろ)い四季(きせつ)の空気(もぬけ)の表情(かお)には、安み乍らの生憶(きおく)が素通り、人間(ひと)を観ながら一人(ひと)を蹴散らす旧い門戸を激減させ活き、無形(かたち)が無いのを有形(かたち)と言い出す不覚の小敗地(アジト)を撤廃させ得た。男女(ひと)の焔(ほむら)を空気に見立てて漆黒(くろ)い殺気は未踏(みとう)を踏み出し、女性(おんな)の在り処を自覚(かくご)に見守る「有名無実」を禍根に遣るのは、世捨て人から餌食を頬張る不頼の意固地を男性(おとこ)に据えて、分厚(あつ)い人形(かたち)を無形(かたち)と呼ばない不頼の人種を脆(よわ)く包(つつ)んだ…。漆黒(くろ)い四季(きせつ)に似通(にかよ)る人物(もの)には精神(こころ)の機微など上手(じょうず)に仰ぎ見、人間(ひと)の琥珀に脚色(いろ)を付け出す浮浪の看破を男性(おとこ)に保(たも)たせ、漆黒(くろ)い生絆(きずな)を感覚(いしき)へ漬け込む一幻(ゆめ)の浮惑(ふわく)に小敗地(アジト)を識(し)った…。気楼の付け入(い)る暗(やみ)の底から無類に澄ませる私欲(よく)の女神は、精神(こころ)の許容(うち)へとはにかみ乍らも〝悪態吐(づ)き行く不相(ふそう)の心理〟は、稀有に紛れる小手の神話とそうそう長らく共に直れず、幻想(ゆめ)と不惑と孤独の活路は〝生き地(じ)…〟を想わす不幸を手に取り、幻(ゆめ)の安みに悪魔を見て取る不惑の主観(あるじ)を減退させ得た…。気楼に残れる旧(ふる)びた軌跡は、手厚(あつ)い立場に〝不利〟を得ながら「幻(ゆめ)の四季(きせつ)」と堂々流行(なが)れる不利の感覚(いしき)をはっきり保(も)ち活き、白亜(しろ)い佳日に迷いを失くせる不彩(ふさい)仕立ての黄金さえ観た…―――。過去に活き貫(ぬ)く微温(ぬる)い佳憶(かおく)は四方(よも)の四季(きせつ)に文言(ことば)を借り浮き、幻想(ゆめ)の四肢(てあし)のしどろもどろに悪態吐(づ)き浮く弾みを識(し)った…。経過を詠むうち一人(ひとり)に成り着き、淡い日々から網羅を射るのは、孤独に間違う稀有の正味と淡い孤独の滑稽さを観て、永々(ながなが)安める私闘の最期の不悶(ふもん)に導く佳日を識(し)った―――。

 孤高の景色に列(ならび)を観るのは〝身欲(よく)〟に仕留める王者の活き血で、微温(ぬる)い暗(やみ)から精神(こころ)を乱せる不応の最後を謳歌して居る…。四季(きせつ)の流行(ながれ)と乱心(こころ)の流行(ながれ)は孤高に飛び生く不安を掌(て)に取り、「一幻(ゆめ)」の通底(そこ)から四肢(てあし)を伸ばせる不頼の主観(あるじ)を撤収して居る。分厚(あつ)い扉に天を識(し)りつつ不能の最期を生起(せいき)に呼び掛け、自己(おのれ)の佳日を供に添え生く不浪に活き得た躰を勝ち取り、漆黒(くろ)い四季(きせつ)に価値を見出す「不安の要素」は解体して居た…。文言(ことば)の人陰(かげ)から〝無類〟が起(おこ)れる幻(ゆめ)の白亜(しろ)さは感情(こころ)を透らせ、旧い弄(あそ)びに佳日を保(たも)てる不快の事実は荘厳足る儘、暗(やみ)の主観(あるじ)へ聡明足るのは「羽衣(ころも)を付け得る主観(あるじ)」であるのを…、幻想(ゆめ)に咲き得た精神(こころ)の未覚(みかく)は全身(からだ)に際して強く語った…。固陋の一重(ひとえ)に感覚(いしき)が集まり無類の域には乱情(こころ)が弾まず、〝小手〟を失くした現(うつつ)の主観(あるじ)と未開の遠方(とおく)は誤解を手招き、緑(あお)い形の身陰(みかげ)の威力は海・空(うみそら)が観た結界(けっかい)さえ得た。白亜(しろ)い窮地に相対(あいたい)して生く幻(ゆめ)の褥の相乗効果は、奇怪に手招く自己(おのれ)の生体(からだ)を意思に想わせ特別でもあり、独特乍らの固有の憂慮を感覚(いしき)に隠さず歩力(ほりょく)を得て居た…―――。

      *

 ―――…蝦蟇口女は、俺にテレビの録画をして欲しがって居た。一七時から面白いのが在ると言う。これは史男(しなん)も言って居たように思う。俺もその番組を録りたかった。でも、出来なかった。

      *

 無憶(むおく)の文言(ことば)を過去に観ながら生憶(きおく)の夜風は静かに和み、分厚(あつ)い空間(すきま)に活命(いのち)が飛び込む夜半(よわ)の真夜(しんや)は葛藤して居た。旧い生憶(きおく)に揺ら揺ら燃え立つ孤独の消し火(び)は分厚(あつ)くもない儘、涼夜(よる)の目下(ふもと)へ明日(あす)を靡かす不応の対処へ律儀に降(お)り立ち、幻想(ゆめ)と感覚(いしき)が孤憶(こおく)に留(と)まれる「旧い記憶」に夢中に成った。男女(ひと)の精神(こころ)を徒労に這わせる脆弱(よわ)い佳日は個録(ころく)を置き去り、有名無実の過信に化け得る偏見伝いの網羅を仕掛けて、暗(やみ)の許容(なか)まで延命(いのち)を保てる歩合の正義は孤独を軟(やわ)めて…、男女(ひと)と律儀は孤独を個録(ころく)に合せる旧い兆しを正比に保(も)った。人間(ひと)の愛情(こころ)が両刃(もろは)に繋がり分厚(あつ)い佳日を遠くへ観るのは、暗(やみ)の暗躍(うごき)を人間(ひと)へ這わせた精神(こころ)の一重(ひとえ)に同調(どうちょう)して活き、幻想(ゆめ)の身軽に生憶(きおく)を保てる旧い弄(あそ)びは苦労を着せ替え、安い魅惑に活命(いのち)を見果てる気楼の信者に具体(からだ)を識(し)った。白亜(しろ)い体裁(かたち)に魅惑が佇む〝夜半(よわ)の正者(せいじゃ)〟は生憶(きおく)に優しく、白亜(しろ)い途切りに、明日(あす)を幻見(ゆめみ)る浮浪の葦(あし)から四肢(てあし)が乖離(はな)れて、幻(ゆめ)の湯浴みを描(えが)いた写実は枯葉一つの表裏を識(し)った。精神(こころ)に毛嫌う葦(あし)の夕べは人間(ひと)の体裁(かたち)を魔の手に安らげ、乱心(こころ)に問い得る主宴(うたげ)の景色は我楽多ばかりを途端に描(えが)き、強靭(つよ)い無理から朗(あか)るみばかりを幻想(ゆめ)の余裕(ゆとり)へ分解するのは、固陋に居座る微弱の幻想(ゆめ)から分厚(あつ)い色魔を生育(そだ)てて行った。白亜(しろ)い景色の徒労に導く「旧い景色」は〝佳日〟を脆(よわ)めて、幻想(ゆめ)に居着ける躰の魅惑は固陋の様子と険しく成り立ち、精神(こころ)に始まる余信(よしん)の質(たち)には微温(ぬる)い気色が鈍々(どんどん)膨らみ…、幻想(ゆめ)に根付ける男性(おとこ)の様子は生憶(きおく)伝いに紫煙(けむり)に入(い)った。人間(ひと)に落ち着く佳日の景色は室(むろ)に始まる疑心暗鬼と、自己(おのれ)を懐ける有名無実が郷(さと)を描ける病理(びょうり)を観た儘、機能の主観(あるじ)が見果てぬ小宙(そら)へと真向きに居座る独気(オーラ)を保(も)った。幻想(ゆめ)に息衝く孤憶(こおく)の様子と思乱(あらし)に根付ける焔(ほむら)の様子は、涼夜(よる)に勝ち取る不安を得たまま一色(いろ)に名付ける体裁(かたち)を煩い、自体(おのれのからだ)と自称を象る旧い弄(あそ)びを片手に採った。幻想(ゆめ)に活き着く体裁(かたち)の様子は人間(ひと)に活き着く旧さを諦め、同志に名高い明日(あす)の孤独を予想に合せる不乱と落ち着け、白亜(しろ)い気色に幻(ゆめ)を追い駆け不憫を擦(こす)れる孤独の勇者は、斜に構えた理屈の空間(あいだ)を巧く擦(す)り抜け、安い旧巣(ふるす)に這わす独気(オーラ)を極力培い安心して居た。脆弱(よわ)い佳日の個力(こりょく)の暗(やみ)には、女性(おんな)の気儘が浅墓(あさはか)でもあり、勢い任せに片付けられ得る小宙(そら)の身元は素顔を失(け)し得て、暗(やみ)の理屈に弱味を観せ往く不相(ふそう)の進理(しんり)を児(こども)に遣った。幻想(ゆめ)に見送る〝冷めた四季(きせつ)〟は固陋の空間(あいだ)を巧く擦(す)り抜け、女性(おんな)の佳日を不問に弄(あそ)べる気楼の進化を欲して居ながら、幻(ゆめ)の基準(レベル)を高いものへと一端(はし)を見送り脆(よわ)く誘(さそ)った…。人間(ひと)の感覚(いしき)を通底(そこ)から見上げて、幻想(ゆめ)に見直す無機の底には無痛の淡さが浮き彫られて居る…。女性(おんな)の余裕(ゆとり)を過保護に見るうち経過を仕留める脆弱(よわ)い八頭(おろち)は、孤独の四季(きせつ)と身重の四季(きせつ)を好く好く育む脚力(ちから)を保(も)ち出せ、暗(やみ)の静寂(しじま)へその実(み)を見送る固陋の勇気は感覚(いしき)を保(も)った。分厚(あつ)い人壁(かべ)から涼風(かぜ)が抜け出し脆弱(よわ)い果実が透る四季(きせつ)は、人体(ひとのからだ)へ暗(やみ)を見定(さだ)める不乱の小敗地(アジト)を小宙(そら)へと置き遣り、幻想(ゆめ)の未完(みじゅく)を通底(そこ)に酔わせる不乱の遊離を規則に保(も)った…。手厚(てあつ)い過護(かご)から自己(おのれ)が抜け出せ「小宙(そら)の身元」が景色を産むのは、幻想(ゆめ)に堕とせる性(せい)の主観(あるじ)と小片(はへん)の道標(しるべ)の手元操作で、分厚(あつ)い空間(すきま)へ恋を失くせる人の体裁(かたち)の分(わ)れ目(め)は危うく、幻想(ゆめ)と精神(こころ)を未活(みかつ)に突くのは「不応の正義」の倣(なら)わしだった…。自己(おのれ)の過去から常盤に囀る旧い〝夜半(よわ)〟には脚色(いろ)が付き活き、自己(おのれ)の正比を感覚(いしき)へ問ううち無断の翁は過酷を識(し)り付け、幻想(ゆめ)に始まる個録(ころく)の主宴(うたげ)は、途方へ暮れ行く身重を保(も)った。幻(ゆめ)と思乱(あらし)の責任転嫁は安い体裁(かたち)をその身に配して、〝併せ鏡〟に孤独を失(け)し去る不応の八頭(おろち)を呼吸に見付けて、白砂(すな)を掌(て)に取る〝習いの境地〟は劣って行った…。幻(ゆめ)に見詰める自己(おのれ)の自覚(かくご)と分厚(あつ)い静寂(しじま)の遊離の区別は、悪しき目に立つ不幸の従者と身欲(よく)に二重(かさ)ねた孤録(ころく)に合さり、夢遊の体(てい)した人頭(どくろ)の高みは、活命(いのち)の塒へ還って行った…。白亜(しろ)い景色に孫を抱き生く思牢(しろう)の背後(あと)には性格(かたち)が佇み、幻想(ゆめ)の魅惑と体裁(かたち)の小敗地(アジト)は一人(ひと)を省ける独気(オーラ)を気にして、安い旧巣(ふるす)で男女(ひと)を描(か)くのは矛盾の延命(いのち)と大宙(そら)を根に保(も)つ、脆弱(よわ)い過失に運命(さだめ)を失くした独解(どっかい)ばかりの阿吽と成った…。幻想(ゆめ)の主観(あるじ)が御供を描ける無様(むよう)の主観(あるじ)は結束して生く…―――。

      *

 ―――…黒人天然男児が居り、史男(しなん)が時折り、黒人天然男児に成って居たようだ。俺はその天然男児と会った。その時、俺達はD大学に居る。D大の学生であるのは、俺だけだったようだ。

      *

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~無純(むじゅん)の初春(はる)~『夢時代』より冒頭抜粋 天川裕司 @tenkawayuji

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