第1話 新部員がやってくるぞ!
ヴーン、ヴーン
「ん…んん…」
スマホを掴みとり、私はアラームを止める。
そして、アラームの近くにあったメガネを掴み取り、私は枕に頭を落とす。
「んん…眠い…」
「私!夢はメタルガールズになるんだから!」
窓の外から子供の声が聞こえた。
「メタルガールズ…」
私はメガネを掛けて、思考を呼び起こす。
朝日が瞳の中に飛び込み、一気に眠気が去っていった。
ベットから上半身だけを起こすと、窓にピンク色の髪色。
そして、大きな三つ編みを二つぶら下げている私の姿が目に入った。
影のない、真面目と言ったところの、陰の女の子。
私は自分の姿を見て嫌気が刺した。
お姉ちゃんは今の私を見てどう思うかな…
制服姿の私は、教室の扉の前。
「えー、この点Pが動くと、ここが三角形になるため…」
中では数学の先生が教室を支配している。
私はドアに手を伸ばす。
半年ぶりの教室。
最初の印象は、「こいつ誰だ?」と思われる…思われる…思われる…思われる…
唐突に手が震え始めた…
「な…なんでッ!!!!!!」
私は呟くように言って、震え始めた右手を抑えて、震えを止めようと思った。
止まれ!!!止まれ!!!!
もう怖くなんかないんだから!!!!!
怖くないから…怖くないから学校に来たのに!!!!!!!
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ!!!!!」
「凛音さん?」
「え…?」
私は、顔を上げると、廊下の少し奥の方に、黒い髪のポニーテールをぶら下げている若い女性がいた。
黒いスーツを身に纏って、片手には本のようなファイルを持っている。
私は涙を拭き取った。
「く、倉崎先生…」
「お姉さんが亡くなってから…あんまり来てなかったけど…大丈夫…?」
私はコクリと頷く。
先生は、私の全身を爪先から、頭のてっぺんまで、じっくりと目に焼き付けると、一言
「やっぱり似合ってるね。制服」と。
しばらくの間沈黙が続くと、先生が何かを思い出したように、「あ!」と言う。
「そうそう!!一応、メタルガールズの入部届出しておいたから!」
え…
「もしもまだやる気があるんだったら…今日、行ってみれば?」
メタルガールズ…お姉ちゃん…
凛音はさ、きっと人を救えるよ。
お姉ちゃんの最後の言葉がフラッシュバックする。
絶望が蘇る。
下半身と上半身が分離し、そして口から血を流すお姉ちゃんの最後の言葉。
私の頬を優しく撫でたあの血まみれの手。
あの時に頬についた血は今は残ってないけれど、心の中には深く残っていた。
人を救える…私が…
すると、先生のポケットが震えた。
「あ!!響からだ!!」
響とは、響先生のことだろうか…
「実はさ!この後、会議があったんだよね〜!」
そう言いながら、先生は、ファイルから一枚の白紙を取り出した。
「これ!案内所だから!よろしくね!」
そういうと、倉崎先生は、走り出そうと3歩だけ踏み出した。
しかし、4歩目で少し止まり、「それと…」と言いながら踵を返す。
そして
「凛音さん…無理しないでね…苦しかったら苦しいって言っていいんだよ…?」
そう言うと、先生は再び走り出した。
私を置いて。
白紙の紙に書かれていた指定された場所。
私はそこに向かった。
校舎の中のある教室の一角。
白い扉を開くとそこには、机が3つあっただけだった。
本当にここであってるのかなぁ…
私はもう一度、紙を見る。
紙には見出しで「メタルガールズ 支部」と書かれており、その下に、説明欄。
メタルガールズの活動内容などがあった。
そして、さらにその下にはなぜか菱形のマークがあった。
少しキラキラと光を反射して輝くシールみたいなものが貼ってある。
「もしかしてこれ…」
私は一度、廊下の方へと出た。
白い扉を閉め、そして、その隣にある黒いスマホの液晶のようなものに、先程のシールを押し当てた。
「認証。ナンバー07、
機械音声が鳴り、白い扉が、黒い扉へと様変わりする。
昔、誰かから聞いたことがある。
学校のメタルガールズ部は扱う物の関係上、部外者は入れることができないと。
「し、失礼します…」
黒い扉に手をかけようとすると、黒い扉は自動で開いた。
黒い扉の向こうには、下へと降る階段が続いている。
私は、その扉の向こうの階段を下る。
不安と恐怖とちょっとした期待。
色々な感情が混ざり合いながら震える足を一歩、また一歩と踏み出した。
この先には何が広がっているのか…
そして、その答えがあらわになる。
白い壁が広がり、ところどろこ、エネルギーの通り道のような青く輝くガラスで構成された部分。
秘密基地を彷彿とさせるようなその部屋は、先ほどまで学校に居たことを一瞬で忘れさせた。
「あ…そういえば誰も居ないのかな…」
私は、階段を降りた先の廊下のような細い場所の奥へと向かう。
奥には白い扉があり、多分、そこがホールのような場所なのだろうと思い、その部屋の中に入る。
中央に大きなテーブル。
周りは白い壁で囲まれており、本当にSFの世界である宇宙ステーションのよう。
「こ、ここがメタルガールズの基地…お姉ちゃんもこんな感じのところにいたのかな…」
「君が新入部員?」
「ふぇ!?!?!?!?ふぁ…ああああああああああ…!!!!!!!!!!」
「えっと…大丈夫…?」
「かカカカカカカカカカカカカカカカカカカかかかかかかかかかかかかかかかかか」
「え?あ、だ、大丈夫!?」
「こここここここここここここここここここここここここここここここここここここここここ」
「あ…も、もしかして腰が抜けちゃった?大丈夫…?」
「ダダダだだだだだだだダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダだだ」
「ちょっと一回落ち着こっか!!!!!!」
湯呑みを両手で握り、緑茶を飲む。
落ち着く…この味…
恥ずかしくて、顔がよく見れない。
私はお茶だけを見て男の人を意識しないように、俯いたまま緑茶を飲む。
「す、すいません…少し気を取り乱してしまって…」
「大丈夫だよ!僕はそう言うタイプの女の子も可愛くて好きだから!」
「ブフェッ!!!!!」
私は、緑茶を飲もうと思い、そして、吹き返す。
「わああああああ!?!?だ、大丈夫!?」
か、可愛いなんて…わ、私が…!?
「ご、ごめんごめん!いつもメンバーの子達と接する勢いで言っちゃった…」
男の人はティッシュを持ってきて、机を拭き始めた…
男の人は、私にティッシュを渡した。
「あ、はいこれ!胸とかにも掛かってるから、自分で拭いてね!」
あ、そういうところは拭かないんだ…
一通り、拭き終わると、男の人は、私の席の隣に座った。
「それじゃあ、自己紹介しよっか!」
そう言われて、私は思い切って、その男の人の顔を見た。
白く染まった髪の毛。
まるまるとした目。
緑色の瞳。
「僕は、
「りゅ、龍渓一蘭門さん…?」
「そう!よろしくね!」
そう言うと、龍渓一蘭門さんは、握手をしようと手のひらを差し出した。
あれ…この感じ…
「その…あの…」
私が口籠もっていると、合いの手を入れるように「どうしたの?」と、龍渓さんは優しく話しかけてくれた。
私は勇気を振り絞って言ってみる。
「あ…あの!!!!!!」
龍渓さんの瞼が少し大きく開いた。
「私たちって…どこかで会ったりしましたか…?」
「え?」
「あ…いや、なんでも無いです…」
私はなぜか急に立ち上がったことがとても恥ずかしくなり、座り直す。
「僕は…あんまりそんな気しないな…でも、もしかしたら…あるのかもね。」
ニコッと爽やかに笑う少年。
私は目を背けてしまった。
なんだろう…すごく頬が熱い…
「そういえば、君の名前を教えてくれるかな?」
「え?あ…わ、私は梓沢凛音…です…」
私は視線を背けながら呟く。
「よろしくね!!凛音ちゃん!!」
凛音ちゃん…凛音ちゃん…
男の子から初めて名前呼ばれた…
そ…それもちゃん付け!!!!
「僕は一応一年生だけど、凛音ちゃんは?」
「あ…え…お…同じ…です…」
「そうなんだ!!!!僕の他にも部員が5人いてさ〜」
急に恥ずかしくなってしまった…
いや、心臓がドキドキしてる…
これはもしかして…
と、とりえず落ち着かないと…
「ただいま帰ったぞ〜」
「ひゃあああああああ!?!?!?!?」
「うあああああああ!?!?!?!?!?!?」
「え?何々!?」
「ウチの耳に知らない声聞こえたよ〜?」
「もしかして僕たちの基地に侵入者かな!?」
「そういえば、新入部員が今日来ると、先生から聞いておりましたわ。」
「初耳じゃの〜」
腰を抜かし、私は、机から落ちる。
「だ、大丈夫!?」
龍渓さんが、椅子から降りて、私の手を取り、王子様のように体を支えながら立ち上がらせてくれた。
「ぬぬぬぬぬ!?!?!?」
私が頭を上げた時、白い扉の前には先ほど龍渓さんが言っていた5人の部員が立っていた。
「あ、新しい女の子…も、もしかしてリュウちゃん!!!!!ウチら以外の女の子にも手を出し始めたの!?!?!?」
「え!?いや!!!!そんなことは…」
「僕たち以外にも手出したんだ〜!!もしかしてさっきまで熱々だった〜?」
「みなさん!この人は新入部員ですわよ!」
「あたい達に新しい仲間が増えるってこと〜?」
「とりあえず浮気はしてないようで妾は安心じゃ」
「じ!自己紹介しないとだね!!!」
すると、龍渓さんは、「みんな!自己紹介して!」と言った。
「それではまずは部長のわたくしから…」
まず最初に反応してくれたのは、紫色のロングヘアーの少し身長の高い女性だった。
「メタルガールズ所属!2年生
花園…?どっかで聞いたことがあるような…
「は、花園って…あの、花園財閥の…ですか…?」
すると、龍渓さんが、「そう!!絵梨奈は花園財閥の令嬢なんだよ!!!すごいでしょ!!それじゃ、次々〜!」
今度はその隣の大きな一つの三つ編みをぶら下げた金髪をしたギャルのような女の子が口を開く。
「ウチは2年所属の
と、友達…
「は…はい!!」
と、威勢の良い声が出た。
私ってこんな声出せるんだ…
そして今度はベージュ色の真っ直ぐとしたボブの女の子が私のことを見ながら、「あたいは1年部の
少しゆったりそうな女の子の隣に、緑色の頭の髪型の半分がベリーショートでもう半分がショートの女の子が
「僕は
少しライバル意識を向けらているのか、少しだけ不敵な笑みを浮かべている。
そしてその横、少し引くめの身長に、私よりも大きな胸を背負っている。
少女のような丸い瞳と巫女さんのように髪を束ねた少女が
「妾はねとられなるものは嫌いじゃ…せめて確認しておきたいのぉ…」
と呟く
「別に僕はまだ何もしてないよ!!!!」
まだ…?
「ふふ…歓迎します!!!メタルガールズに!!!!」
唐突になる警報音。
チリリリリリ!!!!!
「あれ?もしかして僕たちの出番かな?」
小葉さんが鳴り響くサイレンを聞き、呟く。
「この警報音って20m級?」
「みたいだね〜ふわぁ〜」
「みんな!!!後輩にお手本見せるチャンスだよ!!!プランAで出撃準備開始!!!!」
龍渓さんは、そういうと、女の子達が一気に出入り口の白い扉から自室へと向かった。
「も、もしかしてこれから…」
「そう!神狩りの時間だよ!!」
神狩り…これから…
メタルガールズの仕事が始まるんだ…
「あ!そうそう!!!これ一回着てみて目瞑ってるからさ!!」
そう言うと、龍渓さんは私に白いタオルのような布を手渡しした。
「こ…これ…な、なんですか…!?!?」
白く体のラインが浮き彫りになった薄い布。
ほぼ裸と同等のその服…
こんなの…着てられない…恥ずかしい!!!!!
私は胸元を右腕と右手で覆い、股間部分を左手で隠しながら、講義をする。
「こんなの…!!!!せ、セクハラですよ!!!!!」
「そろそろ良い?」
すると目を瞑っていたままの龍渓さんが言う。
「ま、待って!!!!!!」
こんな所見たら…そんなの…!!!!!
そんなの!!!!!!
「えい!って…良い身体d_」
パアアアアアアン!!!!!!!!
やっほ!!みんなこんにちは!!
僕の名前は龍渓一蘭門!
今僕は二輪車のバイクに乗っています!!!
ヒリヒリとした顔にバイクのヘルメットを被り、後ろには白い一枚布の薄い布が体に張り付いたスーツ。
いや、パワードスーツだね!
あ、そういえばメタルガールズ部がどんなのか説明してなかったね!!!どこから説明しようかな…
ある日、人間には神と言う謎の生物が現れたんだ!!!
そう!!神だよ!!!!
その神は人間を殺しまくったんだ!
そして、殺されてばかりの人間も黙っちゃいなかった!!!!
そう!!!そして人間達は発明したんだ!!!
神に対抗できる兵隊たち…装甲や兵器をパワードスーツの上に着込み、武装し、神々を一掃する少女達…メタルガールズを発足させた!!!
そして、彼女達は神々と戦う、メタルガールズ部なのだ!!!
んで!今、僕の後ろに乗っている女の子。
凛音というこの女の子は、僕たちメタルガールズの新たなメンバー!
「あの…龍渓さん…」
「リュウでいいよ」
「え?」
「龍渓って呼びにくいでしょ?リュウって呼び捨てでも良いんだよ。」
「え…りゅ、リュウ!さん…」
んー…惜しい!
「その…ずっと胸が背中に着いて…私も少しというか…」
口籠もっている凛音ちゃん。
そういう所も可愛いな
「少しというか…!!す、すごい恥ずかしいです!!それに一般の道路をこんな格好でなんて!!!」
まあ、みんなそういう反応をするのが普通だ。
ああ…懐かしいなぁ…藍のも同じような反応してたっけ?
「じゃあ、スピードあげるね!しっかり捕まってて!!」
僕はバイクのハンドルを握り、アクセルを全開にした。
「ま、待ってくださ_」
僕は一気にスピードを上げた。
風を切り後ろ方向に圧力が掛かる。
すこし体勢が後退してしまうが、僕はハンドルを握り、前傾姿勢になる。
「うっ!!!」
さらに柔らかい感触が背中に広がった。
「うわ…柔らかい!」
「へ、変態!!!!」
僕は後ろにひっいている凛音ちゃんに抱きしめられながらも片手で背中を殴られる。
「うぅ!!!変態ぃぃぃぃ!!!!」
開けた道路の真ん中。
そこには向日葵の花と目玉の融合したような姿の怪物が居た。
蔦が両端のビルに絡まり、ひび割れを起こしている。
遠くの方にあるビルは既にいくつか崩壊しているものが見えた。
「みんな!!!」
そして、神のその近くに装甲を見に纏った少女達の姿があった。
白いパワードスーツと、装甲を見に包む、彼女達。
「あれが今回の神かのぉ?」
僕は頷く。
「ギリシャ神話より、女神であるフローラ。彼女は花と春と豊穣の神だよ!さっさとやっつけちゃおう!」
「えぇ。もちろんですわ」
「僕は元からそうするつもりだったけどね〜」
「ウチも頑張っちゃうぞ〜!」
「あたいも〜」
「リュウちゃん。帰ったら褒美を妾にくれよ」
「わかってますよ。リョウコさん」
するとリョウコさんは、パァっと明るい顔になる。
揺れてる…
「それじゃあ討伐開始です!」
「「「「「了解!!」」」」」
みんなの背中に取り付けられているエネルギー収束ブースターが起動し、みんなを空へと打ち上げる。
まるで妖精のように飛び回り、目玉のような見た目の神に向かって飛んでいった。
「あ、あの…」
少しモジモジしながら、凛音ちゃんは僕に何かを伝えたいようだった。
「ん?どうしたの?」
僕が答えると、
「あれって…どうやって飛んでいるんですか…?」
と凛音ちゃんは、首を傾げた。
「そっか!そこもまだわからなかったね!自分のスーツにさ、緑色の結晶が胸に埋め込まれてるでしょ?」
僕が指さすと、凛音ちゃんは自身の白いスーツの胸元を見る。
「え?あ、はい…」
それを確認凛音ちゃんに僕は続ける。
「実はそれ、神の死体から出てくる結晶で、神の力を人間のエネルギーとし、そのエネルギーを、スーツに付いている武装に装填して、浮力と動力を得るんだ!」
「そ、そうなんですね…」
僕は目の前で飛んでいるメタルガールズに目を向けた。
目玉のような花は、飛び回るメタルガールズの一人、小葉をずっと見ていたままだ。
「ん?あ、やばい!!!!小葉!!!!何か、神が小葉に向かって撃とうとしてる!!!」
「え?」
そして次の瞬間、そのビームが炸裂した。
バァァァァァァァン!!!!!
「小葉!!!!!!!!」
そしてビームは小葉に直撃。
小葉をビルへと叩きつける。
「小葉!!!!!!!」
『うそ!?ヒィコが!!!』
「あ!!!!藍!!!!!」
妖精のようにエネルギーを放出しながら飛んでいる藍。
しかし、そんな藍の足に蔦が絡まってしまった。
そう、本格的に神であるフローラが攻撃し始めたんだ。
蔦が意識を持ちはじて、足の絡まった藍を地面へと叩きつける。
「そ、そんな…」
隣にいた凛音ちゃんが言葉を失いかけている。
『藍よ!!!』
そして、無惨にも、その救出を試みたリョウコさんが、さらに太い蔦に弾かれた。
小さい身体では、その重さに耐えられず、地面に叩きつけられては、すぐにリョウコさんは目を閉じた。
「嘘…また…またお姉ちゃんみたいに…」
ま、まずい!!!
凛音ちゃんの様子が…!!!!
『あ、あたいだって!!!!』
力のこもった攻撃をセラは放つ。
しかし、そんな攻撃が効くこともなく、小蝿のように蔦に追い払われて、撃ち落とされる。
『そんな!!!!みなさん!!!!!』
「くっ!!!!!」
僕は奥歯を噛み締め、そして、乗っていたバイクのサイドに取り付けられていたあるものを取り出した。
「今日が初めての日なのに…ごめんね…みんなのヒーローになってくれないかな…?」
僕はバックを凛音ちゃんに渡した。
「こ、これは…?」
戸惑う凛音ちゃん。
「ここの取手のボタンを押して空に投げれば、エネルギー収束砲になる。引き金を10秒間長押しした後に相手に向かって撃つ。」
「え、えっと…つまり私にあの怪物を倒せってことですか!?」
「ご、ごめん…エリナは今…蔦を避けるので精一杯…僕はメタルガールズの管理者で…メタルガールズに慣れない…だから!!凛音ちゃんが…凛音ちゃんしか出来ないんだ!!!」
僕は凛音ちゃんの両手を握りしめて言う。
「ふぇ!?わ、私だけ!?」
「こんな状況を抜け出せる手だなんて…これ以外にも…」
「いいや!!君しかいない!だから、お願い!!!!!」
僕は深々と頭を下げた。
「う、うぅ…わ、わかりました…」
凛音ちゃんは、僕のバックを受け取ると、一歩踏み出した。
「わ、私なんかに…できるかなぁ…」
「大丈夫だよ!!!きっと出来るよ!!!」
少し躊躇ったように見えた。
しかし、それでも凛音ちゃんは、拳を強く握りこう言ったのだ。
「や、やってみます…!!!!」
凛音ちゃんは、持ち手のボタンを押し、そして真上へと投げた。
蒸気を少し発生させて、それは銃へと変形し、空へと手を伸ばした凛音ちゃんの手へと吸い込まれるようにストンと、落ちた。
「え?ま、マジ…?」
僕がそのまるでプロかのようなノールックキャッチに絶句していると、その内に凛音ちゃんは、引き金を引きパワーをチャージする。
側面のチャージメーターが段々と貯まっていき、半分になったところで、ようやく僕は此処が戦場のことを思い出す。
「あ!凛音ちゃん!それ、めちゃくちゃ反動強いから…」
ピピ!
機械音が鳴り響く。
チャージメーターが溜まった音に言葉を遮られ、もう一度言い直そうと_
バァァァァァァァン!!!!!!!!
「え?」
ビームの発射音が鳴り響き、フローラの頭を貫く。
そして、衝撃と、発射で生み出された風圧が僕を襲う。
「ま、マジかよ…!!!!」
「う、撃てた…」
「す、すごいよ凛音ちゃん!!!」
僕は、凛音ちゃんに素直な感情をぶつける。
「にしても、本当にすごかったのぉ〜久しぶりにあの様な花火を見たのぉ〜」
すると、先程まで気絶していた…いや、気絶していた設定だったリョウコさんがいつのまにか凛音ちゃんに賞賛の拍手を送っている。
「え…?け、怪我とか大丈夫なんですか?」
もちろん、凛音ちゃんは、不思議そうにリョウコさんのことを見つめている。
「えー?もしかして僕たちのこと、あんなので本当に死ぬだなんて思ってたのぉ〜?なわけないじゃ〜ん!」
そしてビルに打ち込まれた筈の小葉が、いつのまにか凛音ちゃんの背後に回っていた。
「ど、どういう…」
「実はね〜ウチらってかなーり危ない部活だからさぁ〜」
復活の藍
「ひゃっぁ!?!?!?」
復活の藍に驚く凛音ちゃんと、
「こうやって覚悟ある人だけしか入部させないようにしてるんだよね〜」
いつのまにか凛音ちゃんの太ももを抱き枕にしながらコアラのようにしがみつくセラ。
「ひゃあああああああああああ!?!?!?!?!?」
「あぁ…ちょうど良い太ももぉ〜」
すると、セラは、そのまま就寝してしまった。
「あ、寝ましたわね」
「ちょ、ちょっとリュウさん!!!これ!!!!」
足を持ち上げようと頑張る凛音ちゃん。
僕は、んふふ…と、声を漏らして
「セラの寝顔も可愛いなぁ〜」
と呟く。
「ちょ、ちょっと!!これ、どうにかしてくれませんか!?」
少し…いや、だいぶ困ったような様子で、僕に訴えかける。
まぁ、でもなぁ…
「こうなっちゃったら無理だね〜」
僕は正直に答えた。
そして、
「そんなぁー!?!?」
と、空に凛音ちゃんの声が響いた。
飛行機雲が線を引き、どこまでも続く澄んだ青が視界の半分を占めていた。
そして、残りの半分は、緑色の髪の少女で埋め尽くされている。
雪のように白く、トロリとしたようで眠そうな細目と動物のように少し小さい背丈。
包んでしまえば直ぐに折れそうなほどお淑やかである細い腕と背中。
一説によると赤ちゃんなどは小さく守ってあげたくなるような体の作り方をしているらしい。
だが、この感情は、違うとも言い切れながい、反対にそうだとも言い切れない気がする。
でも、女の子を守ってあげたくなるのは男性の性として当然なような気もした。
「アズリア。」
僕…いや、俺はそう呼んだ。
「ん?どうしたの?隆一くん。」
前を歩いていたそのアズリア・ラングレーと呼ばれる少女が振り向きながら答える。
頭にはツインテールやらが作られるであろう位置にドーナッツのような輪っかが作られている。
「今日ってさ、何の日だったっけ?」
「今日?何だったかな〜…あ!でも私のお母さんの誕生日ではあるよ!」
「あれ!?今日だったの!?」
俺が轟く声で聞き返すと、真顔でアズリアは頷いた。
「ヤッベ…俺何も用意してないよ…」
「そうなの…?じゃあさ!あれしようよ!!プレゼント決めにさ!デートしよ!!」
「え?これから?」
「そ!これから!!!」
これからって…まあ、今は学校帰りで…早帰りだったわけだし…
「って!うわぁ!!」
俺が疑問を投げかけようした時、俺はアズリアに手を引かれて走り出す。
「アズリアのお母さんってさぁ、アズリアとめちゃくちゃ似てるからアズリアに合うような服とか選べばいいんじゃね?」
「そ、それだー!!!」
ショッピングモールの真ん中でアズリアは俺のことを指して言う。
「じゃあ、アズリアにはたくさん手伝ってもらわないとだな!」
「うん!!よろしくね!!」
はぁ…俺の彼女は何て最高なんだ…
それから俺たちはアズリアのお母さんに似合う服を探し回り、ようやく見つけた一品を購入した。
「ありがとう。アズリア。」
俺は少しだけ雰囲気のある夕陽が見える公園でそんなことを言っていた。
「え?まぁ…ねぇ…?」
何か怪しげな煙を巻いているが、とりあえずは気にしない。
「それにアズリアのお義父さんのご機嫌取りの品まで買ってくれて。」
「ん?ああ、あれね。だってお父さんこう言うのが無いと、こんな奴に娘は任せられんー!って怒るでしょ?」
「あはは。そうだな。」
俺は薬指に輝く銀色の指輪をアズリアの指輪と重ねてその上から手を繋ぐ。
手の甲と手のひらを重ねる。
「ねぇ…隆一くん…」
そういいうと、アズリアは目を瞑って口を差し出した。
綺麗なその唇は、桃色で潤っており、綺麗な形をしている。
まるでお姫様のキスをするための唇のようだ。
いや、アズリアは俺のお姫様か。
俺は、アズリアの頭を右手で引き寄せてキスをする。
アズリアは驚いた様子で、少しキスの途中に目を開けたが、直ぐにトロリと溶けて、目を瞑った。
ああ…こんな時間が一生続けばいいのに…
二人が指にはめたお揃いの指輪が夕日で輝く。
「それじゃあ、行こっか!」
キスをやめ、何分かが経った時、頬を赤らめたアズリアが急にそう言いながら立ち上がった。
「あ…あぁ!」
俺も釣られて立ち上がり、アズリアの背中を追おうとした。
「て…?アズリア…?」
その時、俺は夕日に向かって行ったはずのアズリアを見失う。
あれ…?な、なんで?
そして次の瞬間には、銃を俺に向かって向けるアズリアの姿が目の前に映る。
「あ、アズリア…!!!!」
あれ…?この風景…見たことあるような…
アズリアの後ろには、黒い壁が広がっており、青いラインが床から天井へと巡っている。
「何で…何で隆一くん…!!!!何で何で何で!!!!!」
「アズリア!!!!!な、何でその銃を俺に向けるんだよ!!!!」
「そんな…何で隆一くんが…」
どうやら俺の声は聞こえてないのか、アズリアは銃をその手から落とした。
「さあ!!!ショータイムだ!!!!!」
と、次の瞬間、男の声が耳の中に飛び込んだ。
そして。
俺の手がいつの間にかアズリアのお腹を貫いていた。
「は…は!?な、何で……ど、どう言うことだ…」
「りゅう…いち…くん…だい…好き…」
アズリアはか弱い手で俺の頭を引き寄せると、唇にキスをした。
「お…おい!!!アズリア!!!!アズリア!!!!!」
アズリアに刺さった腕に生暖かい水が流れるような感覚。
少しトロリとしていて、それがぽたりと床に落ちて、初めてそれがアズリアの血だということに気がついた。
「そ…そんな…俺が…」
「あははははは!!!!!!!!最高に面白い研究素材だ!!!!!保存しておこうか!!!」
男の声が響き、そして、俺はアズリアの腹から手を抜くと、アズリアの小さな穴から内臓が飛び出した。
血を帯びながら、瞳は光を失い、焦点があってないようだった。
「あ、アズリア!!!!!!アズリアあああああああああああああ!!!!!!!!!」
もう一度目を擦ると、暗い部屋が俺の目の前に広がっていた。
「あ…え…?」
「どうかしたのか?リュウ。お主。泣いておるぞ。」
「え…?」
俺はもう一度、目を擦る。
まるで雨に濡れた傘のようにびしょ濡れだ。
服を着ていないリョウコさんは、俺のことを無理やり胸に沈めた。
暖かい感触が顔に広がる。
「お主も辛かったのう…妾の中で泣いていいぞ…リュウよ…」
そんなことを言われると、僕は、いつの間にかリョウコさんのその背中を抱きしめて、泣いていた…
それも、男が出していいような声量じゃ無いほどに。
大きく声を上げた。
赤ん坊のように。
白い肌が俺の涙で汚れていくが、温かみだけは残っていた。
「よしよし…リュウ…」
「すいません…僕のこと…リュウ…じゃなくてリュウイチって呼んでもらえませんか…?」
「ぬ…?まあ、よかろう…リュウイチや…よく頑張ったの…」
リョウコさんは俺のことを何も知らないはずだが、全てを悟った神のように頭を撫でながら慰めてくれた…
そして俺は、それに頼ってリョウコさんに抱きつきながら泣いていた…
ほんの少ししかない身長のリョウコさんは、その大きな胸で俺のことを包んでくれたのだ…
「龍渓一蘭門…苗字と名前の最初の文字群をとってリュウイチか…よしよし…今夜はたっぷり泣いて良いぞ…」
俺は頭を撫でられながらそんな夜を過ごした…
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