第3話 七孔噴血?!
「ちょっと自分の妄想力が怖くなってきたよ。どうしよう……僕はこれからずっと幻聴とお喋りしながら生きてかなきゃいけないのか?」
『はっ、お前としちゃ妄想で片付けたいんだろうがな……
おい! 僕はただでさえ学校の奴らに“豚足ボーイ”やら“Mr.ロースピード”なんて言われてんのに……このうえ妄想までが僕を
「決めるって……何をだよ?」
『オレを受け入れて、
は?
「死ぬって……お前の言ってる事が正しいなら、僕はもう二回も死んでるんだろ? だいたいさ、元々死にたいと思ってたのに今更……」
『お前が何を抱えて首を
?!?!?!
「本当に?」
『嘘や妄想だと思うならそのまま放っておくがいいさ。確かに“そもそも死ぬつもりだった”なら余計なお世話ってやつだろうよ。 まっ、お前が
………はぁ??? ちょっと待てよ!?
(万が一……今の状況が僕の妄想じゃなかったら?)
確か一部の伝染病って死んだ遺体からも感染するんだよな? そりゃあ死にたいとは思ってたけど──僕の事をいじめた奴らならいざ知らず“全く無関係の人間”を自殺の巻き添えに?
『ハッ……今更どの口で綺麗事を言う気だ? お前は死ぬつもりだったんだろ? だったら死んだ後の事なんぞどうでも良いだろう?』
「流石にそんな無責任な真似は出来ないよ!」
(そりゃあ僕は“根性なしのグズ”だけどっ?!)
『……まあ、そもそもお前みたいな根性無しのグズじゃあ
「だから僕の頭の中を読むなっていっただろう! ──と言うか、いったい何に耐えろって……」
― ズクンッ ―
僕が変な草に対して
「っ
変化は劇的だった。悪寒、頭痛、吐き気、目眩……そして身体中を走り抜ける激痛?!
(そんな馬鹿な?! 本当に感染してるとしても……僅か数十分で発病するはず無いだろ!?)ぐあぁぁ?!
『そんなもん
――――――――――
― ガッ ―
全身から一気に力が抜けた僕はその場に膝をついた。
身体中の筋肉が
かろうじてシンクにしがみついて転倒しなかったのは、倒れかけた方向にシンクがあったからに過ぎない。
― ぬるぅ ―
激痛に苛まれ、無意識に手を伸ばした先にあった蛇口。それを掴んだ感触に……僕は心底ぎょっとした。
(なんだ?! 手が……溶けてる?)
何故か視界が赤く霞み、その先にあるのは爪が剥がれ、滴る血でぬるついた手……
『おいおい、溶けてんのは手だけじゃ無いぞ。今のお前に確認する様な余裕は無いだろうから教えてやるが……お前の身体は今や崩壊寸前、溶けかけのアイスより
(
『さあな? お前が今感じている苦痛が答えじゃないのか?』
確かに……今感じている痛みはとても妄想や思い込みの産物とは思えない!?!
(クソ………なんで僕がこんな目に遭わなきゃいけないんだよ!)
『そんな事は知らんよ。さて──そろそろお前さんの限界も近いからな。これが最後の質問だ』
(???)
こんな状態にも関わらず……草の声だけはハッキリと聞こえてくる。
『お前は……本当に死にたいのか?』
(くそったれ! お前は悪魔かよ……死にたくないに決まってるだろ!)
情けないけど……僕の頭には、全身の苦痛から逃れる事しか無かった。
『生き残りたいなら……オレの
僕は残っている全ての力で……シンクの奥に揺れる花に手を伸ばした。
「ぐッ」
ほんの少し身体を動かしただけで……口腔の奥から熱いモノがせりあがる。
「ゲフぉっ……」
そのまま、大量の血反吐を撒き散らした僕は……なんとか溶け崩れる寸前の手で花を掴んだ。
― ドチャッ ―
同時に……シンクに掴まっていることすら出来なくなった僕は、とうとうキッチンの床に倒れてしまった。
(我ながら“固形物”の音とは思えないな)
もう自分がどんな姿かを確認する気力も無かったが……なんとか右手を持ち上げて目の前に持ってくる。
あの状況では、花なんて掴めてなくてもおかしくなかったと思うが……意外にも自称マンドラゴラの花は僕の手に握られていた。
『よし……いいぞ。そのまま口に運んで飲み込め。そこまでやれば
(クソッ、楽になりたくて死を選んだのに……苦痛に
本当に最後に残った力を振り絞り……花を口元に運ぶ。口から溢れた血反吐で鼻腔には血臭が溢れているのに──何故かその花からは甘い薫りがするのを感じた。
――――――――――
…………
『おい、肉体の再生はそろそろ終わってる筈だ。精神的に負荷があったとしても……目覚めてもいい頃合いだぞ』
………うっ……
誰かが
……うぷっ………
一人暮らしなのに? なんで……
『おい! いつまで寝てるつもりだ? そろそろオレの
― カッ ―
グズグズと覚醒を渋っていた自分の身体に何が起こったか……俺は目覚めと共にその全てを思い出し、即座に倒れていたキッチンの床から身体を起こした。
― バリバリバリバリ ―
乾ききった血液によって床に張り付いていた俺の顔と上半身が、新聞紙を纏めて引き裂いた様な音を立てて床から離れる。
その床には人型に乾いた血痕が赤黒く残り……あろうことか髪の毛や爪までが散乱している?!
『やっと目覚めたかよ? まあ、全身を再生したなら妥当な時間かも知れんが……さっさと水を足しな。今度はオレの方が干上がっちまうぜ』
「………ああ……」
俺は茫然としながらもシンクの蛇口を開けて生意気な根菜の入ったトレーに水を継ぎ足した。
『ふい〜、やっと
あいも変わらずダミ声で喋りまくる根菜類……だが、なぜだか分からないが今はコイツが言ってた事がウソじゃないと分かる。
………ん?
「お前今なんて言った?
反射的に机の上にあるデジタル時計に目を走らせる。って……なぜか視界がぼやけて何も見えない?
『……
俺が半信半疑で眼鏡を外してみると──
「なっ?!」
ボヤけていた視界がクリアになって……ボロ部屋の輪郭がハッキリ見える?!
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