あたしの親友が人気vtuberだったので脅してみた
佐藤ゆう
2人の光と闇のvtuber
ナンバー1vtuberになるのが……死んだ妹との約束だった……。
あと少しで……ナンバー1になれたのに……悔しいぃ……。
◆
「 はぴぃはぴぃ♡ はっぴぃぃ♡ 」
画面に映るピンク娘が明るい声を響かせた。
「愛と幸せのキューピット、【愛ノ原はっぴぃ】ちゃんだよぉ。みんな、ハッピータイムの時間だよぉー♡」
このピンク娘は、vtuber【愛ノ原 はっぴぃ】。あたしの宿敵だ。
◆
「さあ、お楽しみの時間よ。あなた達の『ご主人様』で『下僕』の黒条 切華(こくじょうきりか)が ご褒美をあげる☠」
これがあたし、ナンバー2vtuber『黒条 切華』。
ドМでドSの女王様系vtuberという設定。
黒ゴスロリに眼帯。
中二病丸出しだが、ドMでドSで黒ゴスロリで眼帯の女王様という、詰め込みすぎで、逆にいない斬新な設定のおかげで 一躍人気vtuberになった。
だが、ある『人物』の登場によって、あたしの人生計画は破綻することになる。
「愛ノ原はっぴぃだよぉー♪ みんな、ハッピー?」
―― はぴぃイエース!――
コメント欄が瞬時に埋め尽くされた。
超新星 天使系vtuberとして、あたしの人気を一気に追い抜き、あたしのすべてを奪った――人気も約束も。
妹との誓いを守るために、必ず追い抜いてみせる。
どんな努力をしても。どんなコラボを使っても。どんなキタナイ手を使っても――。
―――――――――。
ピピピピピピピピっ。
自室の目覚まし時計が鳴り響いた。
「う〜〜ん」
目を凝らして まぶたを開ける。
のっそりと部屋を出てリビングに向かう。
「おはよう、智花」
「おはよう……ママぁ……」
ボサボサの頭を掻き 大きなあくびをした。
vtuber【黒条切華】の中の人、幸ノ鳥 智花(こうのとり ちか)は、華の高校生である。
東京の進学校『聖黒薔薇マリアンヌ女学院』に在籍。
美術に秀でた高校で、あたしも とある倶楽部を目的に ここに入学した。
「ふあ〜」
「また徹夜、智花?」
2度目のあくびに、母親が心配そうにたずねた。
「は〜〜い。」
牛乳をグビグビと飲み、適当にスルーする。
テレビを付けると、朝の雑談番組の司会が何かゲストと話しをしている。
「それにしても、いま流行りの なんでしたっけ? vtuber? 凄い勢いですよね? その中でも、『愛ノ原はっぴぃ』さん。 彼女、とても人気ありますよね? 娘の話題でもよく出てくるんですよ。私も流行に遅れないように見ようかと思っているんです」
ピンク女の話題にイライラしてテレビを消した。
「愛ノ原 はっぴぃちゃんの話題、職場でもよく出るわね」
母親の嫌な話題の追撃に、眉をひそめる。
「ママ……。あたしの敵の話しをしないでくれる?」
そう 彼女は敵なのだ。
倒すべき敵。
追い落とす敵。
あたしからすべてを奪った敵。
だからあたしは どんな努力をしても、どんな手を使っても、必ず勝ってみせる。
妹のために――。
―――――――。
「ママ。あたしは将来、漫画家になりたい」
それが幼い頃のあたしの夢。
「お姉ちゃん。わたしはvtuberになりたい」
それが妹の夢。
―――――――。
「起きてください、起きてください、智花」
「んっ!」
教室の机で寝ていたあたしは、優しい声に起こされる。
放課後の誰もいない教室で、彼女は天使のような笑顔で笑う。
「おはようございます、智花」
「うん。おはよう、マリア」
マリア・エーデルワルツ。
あたしの親友にして、最大の敵。
vtuber愛ノ原 はっぴぃの中の人である。
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