第10話

「魔王様、全ての国民の撤退を成功させたとの報告がありました」

「うん…じゃあミラも…」

「嫌です」


魔族の全員撤退を命じてからはや数ヶ月。ほぼ全員の撤退が成功した。後はここに残っているミラと……影たちのみだ。影はすぐに動けれるから良いとして、ミラはサポート兼執事兼メイド……そして軍人……役職が多すぎてこんがらがるが、そこまではやく動くことができない。だからはやく逃げてほしいのだけど、なかなか動いてくれない。

本人曰く、

『最後までお仕えするのが執事兼メイド兼サポーターですから』

とのこと。

そう言って離れようとしなかった。



「魔王様!!勇者が現れました!!ジャヒルド500メートル前です!!」

「来たね……」

数ヶ月が経ったような気がする。実際は数日が経っただけなのに。静かなジャヒルドが新鮮に思えたのか、それとも死ぬのが怖くて精神がおかしくなったのかもしれないな。


「ミラ、最後に言う。はやく逃げて」

「嫌です。最後まで一緒にいます」

「……そういうと思った。しょうがない、最後まで一緒にいるか…!」

「……!!はいっ!!」


そして後ろを向いて呟いた。

「最後までありがとうね、ミラ……」


「いえいえ…っ!?」

後ろから人が倒れた音がした。

「ま、魔王様……」


「……ありがとう、影」

「……いえ、大丈夫です。ご命令に従ったまで」

「そうだね、じゃあ命令する。ミラード・アイシャルを連れてこの城を出ろ」

「……御意」


◇薫Side


「勇者様!!ここ一帯に魔族の存在は見受けられませんでした!!」

「……うん、わかった」

「ではこれで!!」

あの戦いから数ヶ月、私たちは日に日に魔王城に進んでいった。


【もう、薫……君とは一緒にいられないから】


ずっとその言葉が頭のなかを駆け巡って離れない。

私たちはいつも一緒だった。物心つく頃からずっと一緒にいた。幼稚園も小学校も中学、高校まで。そして奇跡的に全て同じクラスだった。

暗はいつもは静かなのに、いざというときに私を助けてくれる。だから私も彼を助けていこうと思ってずっと一緒にいた。いつしか、その気持ちは恋心となった。


ずっとこの関係が続くと思ってた。


「……安全が確認されたので動きます」

私はここに来る途中でみんなに言った。『魔王は私一人で行きます』。


今思い返すと、あのときの暗は、目をそらしてた。何かあるときに彼がよくする仕草なのを思い出した。暗は何か知っているのかもしれない。

「暗と話し合わないと……!!」

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