第10話 あたしが欲しい?
「…欲しい?」
「はい…」
「何が欲しい…?」
「……。」
「いいのよ?言うのはタダだから。それを『する』、『しない』は私が決める。」
「…引かない?」
「今まであんたの言うことに対して馬鹿にしたことある?」
「無いです。」
「そうだよね。」
「……。」
「嫌なの?違うわよね?」
ベットに座る彼女。
その下に座る僕…。
裸足の彼女に頬を撫でられて、
それを手でつかまえた。
「……。」
僕は彼女の足の指を無言で口に含んだ。
すると、「やめて。」と言われ、
足を下ろして、
「すみません。」と謝った。
「あんたの思い通りが嫌なだけ。」
「…足、いいですか?」
「あたしの足をどうしたいの?」
「…翠様の足…舐めたいです。食べてしまいたいです。でも、もし、して貰えるなら…ヒールで…その…」
「……。」
彼女はベットの下の引き出しから新品の真っ黒なハイヒールを出してきた。
「これでどうされたいの?」
僕はそれを受け取って彼女に履かせた。
「…蹴ってもいいし、踵、押し付けてもいいです…」
「…あんたどんどん面白くなってくわね。」
決して否定しない。
馬鹿にしない。
怪訝な顔もしない。
彼女は優しく踵を押し付けるように体を撫で下ろしてくれた。
「…嬉しそう。」
「嬉しい…です…」
「革の手袋とかはどう?ゴム手袋とかは?」
「嫌です…。翠様の手が分からなくなる…。暖かさも指の細さも…爪の感触も…そんなの耐えられない。」
「ならそれはなしね。あんたが悲しむ顔は見たくない。」
「…ありがとう。」
「…ねぇ、あんたさ。」
「はい。」
「いつからあたしと戻りたいって思ってたの?」
「…翠がご主人に手あげられてるって聞いた時。」
「相当前じゃない?」
「
「…勘づいては居たけど、あんたもしかして何かした?あまりに(刑務所から)出るのが早かったんだけど。」
「知ってどうなる?」
「隠す気?9割バレてるのに?」
「…本気で翠が欲しかった。会いたくてたまらなくて、玄関でもどこでもいいから構って欲しかった…。」
「あんたも病気ね。」
「覚えさせたの誰だよ。」
「…でもよかった。あんたを取り戻せた。」
「ぁぁっ……。」
「あたし自身もあれ以上壊れなくて済んだ。」
彼女は細い踵で体に押し込みながら下ろして行った…。
痛みが無いわけじゃない。
痛覚はある。
でも、『嬉しい』。
『彼女に触れられている』
『今この瞬間自分だけを見てくれている』
『今のこの瞬間この痛みを与えられているのは自分だけだ。』
よく分からない誰に対してかも分からない『優越感』と『満足感』と『幸福感』がそこにはあった。
暫く
彼女は靴を脱いで並べた。
そして僕の首に圧をかけて、
「隣に来て」と言う。
半分犬のように喜びながら隣に座ると、
顔をつかまれた。
「口開けて」
「はい…」
素直に従うと、彼女の口から雫を垂らされた。
「……。」
「いいって言った?」
僕は嬉しさのあまり飲み込むと彼女から強い言葉を受けた。
「ごめんなさい…。」
「…どうしたいの?」
「飲ませてください…。」
「あんたの中にあたしが欲しいの?」
「はい…」
彼女は僕の膝の上に乗って僕を包み込んだ。
「我慢させてる?」彼女が頭の上で囁く。
「なにを?」
「あたしとしたいよね。」
「今は違う。」
「じゃあ我慢させてるわけじゃないのね?」
「うん。この時間が終わって欲しくない。…みいちゃん。」
「ん?…なぁに?」
「俺、翠の事大好きだよ。」
「あたしも。侑くんが大好きよ。」
「…ねぇ翠。」
「…出したい?」
「どっちでもいい。翠が決めて。」
「本当に…可愛くなった。」
───────────────。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます