第7話 足を組む女

僕は足を組む女が嫌い。

そういう女とは話したくない。

と思うくらい毛嫌いしている。


『綺麗な女ほど足を組む』

『綺麗な女ほど髪をかきあげる』

『綺麗な女ほど頬杖をつく』


でもこれは僕の勝手な『思い込みの嫌な女像』

でも大抵『綺麗だと思い込んでいる女』程これをよくやる。


翠は、背が高くて目鼻立ちもすっとしてて髪もサラサラで本当に綺麗な人。


足を組んでる姿は見た事がない。

あるとしたら、僕が彼女の足下あしもとにいる時くらい。


その時は多分わかってやってる。

足組んで前屈みで頬杖ついて僕を見下ろす。


彼女の幸せそうな顔…。

僕もその顔を見て幸せで満ち溢れる…。



特に言葉はなくてもいい。

この空間とこの空気…。

それだけでお互いが幸せな気分になる。



よくネット漫画とかにはそういう行為=『性』

みたいに描かれている事が多いが、僕らは少し違う。


『安心』がそこにはある。


彼女を支配するのは僕。

でも根幹では僕が『支配される側』


彼女が望むなら何にでもなれる。

何でもできる。



そういえば一度だけ彼女の足下あしもとにいる時にに言ったことがある。


「…こんなにも幸せだって感じるなら、俺翠と別れなければよかった。」と。


すると翠は間髪入れずに答えてくれた。


「これでよかったの」と。

「なんで?だって俺が逃げなかったら俺も翠もきっとずっと一緒に居れた。翠だって辛い思いしなくて済んだ。だから全部俺のせいなんだよ。」


と僕の口調が荒れてくると思い切り頬を叩かれた。



「……ごめんなさい。」

僕が謝ると、


「この時間が無かったらあたしはあんたをこんなに愛しくは思えてない。あんただってあたしを『必要だ』って追っかけたりしない。全て起こるべくして起きてるの。その上で今あたしは心からあんたを愛してる。それ以上グダグダ言うならあたし出てくから。」


「…ありがとう。」


彼女は僕の膝の上に降りてきて優しいキスをくれた。


そして…。


「あんたはあたしに愛されてればいいの。あたしの腕の中で私を求めて吠えてればいいの。それが私の幸せだから。あたしの方こそありがとうね。」


胸が熱くなって、涙で溢れた。


僕が求めていたのはこれだった。


不安の中にずっといた。

誰といても不安で、寂しくて、孤独で…。

こんな言葉をあびせて欲しかったのに誰も降らせてなんてくれなくて…。


でもこの人はそう。昔から、普段話さない分、二人きりのこういう時間には沢山言葉を降らせてくれる。なのに僕は逃げた。多分あの時は彼女の闇に耐えられなかったんだと思う。


でも今はこの闇さえも『美しい』『愛おしい』と感じる。



「翠…ごめん。したい。」

「…愛してる。」


──────────────────。

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