海星

第1話 瑠花のフリ

「…ルカ、俺に合う人いない?」

「いないわけじゃないけど」

「…翠か。」

「『』…だけど。」

「『翠人』いない?」

「『』?

「うん。」」


ルカが笑いながら言う。


「…私かな?」

「付け爪付けれる?真っ赤なやつで先の尖ったやつ。」

「パソコン打てない。」

「業務に支障が生じます」

「その通り。」

「…翠出して。」

「そんなね、ガチャガチャじゃないんだからさ。」

「いくら入れればいい?」

「高いわよ?」



白いスーツにピンクの髪の彼女が優しく微笑む。


「…。」

「ちゃんと話したら?」

「みぃちゃんと?」

「そう。」


彼女に抱き着くと、優しく応えてくれて頭を撫でてくれた。


「どうせ、俺なんか本気で思ってくれない。いっつも、翠の目の中には俺なんて居ない。」

「なんでそう思うの?」

「…怖いから。」

「怖い?」

「どうせ俺なんか相手にもしてない。」

「本当にそう思う?」

「…違う」

「じゃあなに?」

「…俺なんかといるより旦那さんといた方がきっと幸せだから。幸せな時の記憶の中に閉じこもってた方がよっぽど幸せ。俺なんか居なきゃいい。俺なんかといても幸せじゃない。俺なんか……。」



「…バカね。私が一言かそんな事言った?」


今この瞬間に瑠花に対して抱いていた違和感。

瑠花じゃない確実に別な人の匂い。

やっぱりそうだった。



「…だってさ。」

「……。」

「…ごめんなさい。」

「勘違いしないで。あたしはあんたが良くてあんたと居るの。どんな時でもあんたの相手をしてたいの。過去はもう過去でしかない。だからひねくれないで。不安ならちゃんと教えて。分かるまで教えてあげるから。…いい?」

「…本当に嫌じゃない?」

「嫌ならあんたを受け入れたりしないし瑠花のフリしてあんたに会ったりなんてめんどくさいことしない。」


「…みぃちゃん。」

「ん?なぁに?」


いつもの優しい声だった。


「大好きだよ。」

「私もね」

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