帰省中の新幹線で

沼津平成@空想≒執筆

第1話 正月の渋滞

 果たして、その間に何があったのだろう。瞼を開けたが、あまりの引力でまた寝落ちた。腕で目を擦り、やっと起きた。僕がこの二つの行動の間にかけた時間は、体感では数秒だったが、車内から流れる自動音声で、1時間弱は寝ていたとわかった。

 僕は新幹線に乗っていた。広島にある実家に帰省するためだ。正月、のぞみ号は全席指定席である。ひかり号も自由席はあるにはあるのだが、混雑が予想されるらしい。うるさい人が乗ってきたり、前の座席シートが僕に声をかけず、倒されたりするのは嫌である。こだま号は遅すぎる。

 ちなみにのぞみ号でも各駅停車のように新幹線の真ん中に突っ立っていれば自由席のチケットだけで乗車が可能だが、吊り革も何もないのでよろけるだろうし、トイレの外壁やゴミ箱にもたれかかっていれば、誰かが不審者として僕を通報するだろう。

 だから僕は仕方なく岡山行きの新幹線をとった。乗り換えののぞみ号はあいにくない。岡山—博多を走るのぞみが1本だけあったものの、全席予約で埋まっていた。

 僕は仕方なくひかりをとった。前の座席を倒されたくないなら、その号車のいちばん後ろの、できれば窓側の席を取り、座席を倒すだけである。

 飲み物は、膝の上に置いておく。こぼれないように、足と足で挟むと漏れてしまうから、結局廊下側に座る人との間にレバーをおろし、レバーにもたれかけさせることにした。

 こうして、僕の岡山—広島間のひかり号の旅がはじまった。

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