パンツくんは女の子の〇〇〇に帰りたい。

佐藤ゆう

第1話 パンツオブヒーロー


 付喪神――。物には精霊が宿るという、日本古来から信じられている神的現象だ。


 それが『苺パンツ』だとしても、例外ではない。


 ――――――。


 神奈川の住宅街のマンション――。


 平均的な家賃で貸し出されている一室に、女子高生 安奈 くりすが慎ましく暮らしていた。

 田舎から上京して、ここで半年ほど一人で暮らしている。


 今日は学校の休みで、洗濯して洗い終わった衣服をベランダに干していた。

 お気に入りの苺パンツを、るんるん気分でカラフルで可愛いハンガーにかけた。


 ピピピピピっ。


 タイマーの鳴ったスマホを手に取った。


「もう、12時か……。 今日はひさびさにマックでも食べようかな♪」


 くりすはベランダから出て、スマホでデリバリーサービスの注文サイトを開く。


 スマホに気取られていた時、ベランダに突風が吹く。

 ハンガーがガタガタと揺れて、かけられていた苺パンツが風で飛ばされる。


 うおおおおおおおおおおっ!


 苺パンツはぐるぐると回転しながら数百メートル離れた公園の木の枝に引っかかった。

 苺パンツの付喪神 いちごは目を回しながら、木の枝の上によろよろと立ち上がり、遠方に見えるくりすの住むマンションを見つめた。


「必ずオレは、あの場所に帰ってみせる!」


 意気揚々と枝の上からひらひらと舞い降りた。

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