異世界ヒーラー ~ ヒーリングスキルで教祖になっちゃいました

権兵衛くん

第一部 教団創設篇

第一章 一期一会

第1話 プロローグ~ヒーラーとしての目覚め

俺の名前はあきら、38歳の独身オジサンだ。マッサージ師として仕事をしてたんだが3年前の仕事帰りの夜に交通事故にあってしまった。




目が覚めるとそこは「剣と魔法」が支配する異世界(定番やなあw)



しかし若返りもチートもなく「現代日本人」のおっさんそのままだった俺には過酷な世界で、いきなりモンスター襲われ、なんとか撃退したものの出血が止まらず死を意識した。




とその時「ヒーラー」としての才能が開花、なんとか自らの怪我を癒して死地を脱することができた。


その後「冒険者」として登録し「初心者パーティ」の一員として活動していたが、ヒーラーとしても大した才能に恵まれず判定は「Cランクのヒーラー」

死者の蘇生や欠損部位の回復はもちろん、骨折や重症の場合は応急手当程度。中程度までの怪我の治療と風邪等の軽い病気の回復、疲労回復程度しかできなかった。


レベルもなかなか上がらず3年後にダンジョンの罠にかかってあっけなく死んでしまう(泣)。


◆◆◆◆


と目覚めると、そこは元の世界のとある病院の病室。聞けば三年間意識不明だったらしい。


「全ては意識を失っている間の夢だったのか、、、」と少し残念に思ったが、世の中そんなもんだよねw




◆◆◆




数か月の辛いリハビリを経て社会復帰。幸い元務めていたマッサージ店でまた働き始めることができた。



「いたたた。まだ身体が完全に元に戻ってないかなあ、、、」

(事故の後遺症のリハビリ兼ねてマッサージに来るお客さんいるけど、自分がそういう立場になるとはな。まあお客さんの気持ちが分かる、ってことで)


◆◆◆◆


仕事に復帰して1か月後、店に母親に連れられた若い女性客がやってきて、たまたま俺が担当することになった。


(凄い美少女だなあ、、、芸能人でもこんなに可愛い子ってあまりいないぞ。でもなんか歩くのも辛そうだし顔色も悪いよな。とりあえず状態をヒアリングするか)


母親「この子は高校三年生なんですけどね。先月子宮頸がんワクチンを接種したあと体調を崩してしまって。ワクチンの後遺症だと思うんだけど、いろいろ検査しても特に異常なしって言われるのよ。でも痛くて歩くのも辛くて学校へも行けてないの。

もうすぐ受験だってのにねえ。ここのマッサージは原因不明の痛みに効くって口コミにあったんで藁にも縋る思いできてみたんです、、、」


(「原因不明の痛みに効く」ってそんなの初耳だけど、、、)


「分かりました、効くかどうかは分からないけどやってみますね。ところで「子宮頸がんワクチンの後遺症」ということだと「下腹部」中心に施術することになります。見ての通り私は「おじさん」なんですが触られても大丈夫ですか?このお店には女性のマッサージ師って在籍してなくて」


女の子「、、、大丈夫です。少しでも痛みが和らぐならそんなこと気にしません」


「分かりました。ではこちらでスエットに着替えてください。可能であれば下着は付けずにお願いします。お母さんは待合室で待っていてくださいね」

(邪な気持ちはないからね。下着付けてると施術しにくいだけだから)


◆◆◆◆


俺は着替えてきた彼女をマッサージ台にうつぶせに寝かせ、身体全体の様子を診るところから始めた。


(う~ん、身体全体のバランスがだいぶ崩れているなあ。それにしても若い女の子っていい匂いがするよね、、、)


俺は邪念を振り払いながら全身をほぐしていった。


女の子「身体全体がぽかぽかしてきて気持ちよくなってきました」


「じゃあ次は仰向けになってください」女の子は仰向けの態勢になった。

(身体のラインも綺麗だなあ、、、って、いかんいかんそうじゃない)


「施術するのに下腹部に直接触れたいので、少しスエット下げますよ。良いですか?」


女の子「はい、、、大丈夫です(ちょっと恥ずかしいけど、、(汗))」


俺は女の子の子宮がある下腹部に両手をあてた、その時「異世界?」で先輩ヒーラーから教えてもらったことを突然思い出した。


◆◆◆◆


先輩「いいか?俺たちヒーラーってのは神官とは違う。神官は「神の奇跡」で傷や病気を治すが、ヒーラーってのは「本人の回復力」を増幅して治すんだ。

その為には患部の状態を正確に知る必要があるが、身体の中は見えないだろ?だから指先に「力」を込めて、指が身体の中に入っていくのをイメージするんだ。

そうすれば患部を「直接診る」ことができる。そうして悪い部分が分かったら、それを正常な状態に戻るように力を込めるんだ。

どの程度悪いものを治せるか?はヒーラーの腕次第なんだが、お前の力だとそう大したことはできなさそうだな、、、」


◆◆◆◆


俺は皮肉混じりの先輩の言葉を思い出した(口は悪いが面倒見のいい先輩だったな)


俺は先輩に教わったように、女の子の下腹部にあてた手の指が身体の中に伸びて、子宮まで入っていくのをイメージした。


女の子(なんか先生の指先が身体の中に入っていってるような気がする。でも全然痛くないしむしろ気持ちいいかも)


俺の(見えない)指先が女の子の体内まで入っていき子宮にまで届いたのを感じた。子宮頸辺りを探っていると違和感を感じた。

(なんかこの辺りの細胞がエラー起こしているような、、細胞のエラーである癌を予防する為のワクチンで細胞がエラー起こすなんて洒落にならんな)


「ではちょっと力を込めます。もしも痛かったらすぐに言ってくださいね」


俺は目を閉じて、両手に力を込め、女の子の子宮を構成している細胞を正常な状態に戻すように念を込めた。


女の子(なんかお腹がすごく温かくなってきた、、、え?何あれ?)

顔を上げてみると、自分の下腹部にあてられているマッサージ師の両手からキラキラした物が発せられ、自分のお腹の中に入って行くのが見えた。


と次の瞬間、子宮そのものに電気が走ったような衝撃を感じた。

(痛い、、、、んじゃなくて気持ちいい?今まで経験したことのないような快感?)


まだ性体験の無い彼女には分からなかったが、恐らくこの時彼女は初めて「イッて」しまった。


◆◆◆◆


10分くらいそうしていただろうか?俺はHPとMPの両方をごっそりもっていかれたような強い疲労感を感じた。


「どう?大丈夫?痛くなかったかな?」


女の子「大丈夫です。痛いどころかすごく気持ちよかったです。ありがとうございました。」


「そうそれなら良かった。じゃあ施術はこれで終わりです。着替えお願いしますね」


◆◆◆◆


更衣室で着替えようとした女の子は違和感を感じて自分の下腹部に手をあてた

(やっぱり濡れてる、、、しかもびしょびしょじゃない。恥ずかしい。でも気持ちよかったから仕方ないわね。私あのおじさんに恋しちゃったかな?w)


ティッシュで丁寧に拭いてから着替えて更衣室を出た。


更衣室を出るとマッサージ師のおじさんが待っていてくれた。


「身体の具合はどう?マシになった?」


女の子「マシどころじゃないです。痛みも無くなったし奇跡みたいです」


「それは良かった、、、、って、え?何?」突然女の子が抱き着いてキスをしてきた。


女の子「ふふ。これはお礼です。また直ぐに来ますね❤」


呆然とする俺を残して、彼女は母親と帰っていった。


女の子「ねえねえママ聞いて、あの先生すごいんだよ。痛みがすっかり無くなったの、、、、、、、」


これが俺と美羽との「運命の出会い」だった。全てはこの日から始まった。


美羽は週に2回通ってきた。1か月も経つとすっかり元通り、、、、ではなくて以前よりずっと元気になったそうだ。


両親は涙を流して俺にお礼を言ってきた(ほんとに泣いていた)


◆◆◆◆


その後他の患者さんにも試してみたのだが、お客さんの主流である年配者や男性にはさほど効果が見られなかった。


(美羽だけはたまたま特殊な例だったのかな?)と思っていたのだが


その1か月後、すごい美女が飛び込みで来店してきて、俺が担当することになった。


(すげえ美人。ハーフなのかな?身長高いしスタイルもいい。でもなんか疲れ果てているって感じだな)


俺は「ダメもと」くらいの感じで施術をしたのだが、これまた「劇的な効果」が発揮され、彼女に「神の癒しの手の持ち主」とまで言われてしまった。


(ただのおっさんなんだけどねw)


◆◆◆◆


俺が異世界で習得した「ヒーリング」のスキルは、条件付きのようだったが、この世界でも発揮できることが分かった。



異世界では「役立たず」のスキルだったが、この世界では「奇跡の力」だ。


たちまち評判となった俺には予約が殺到した(でも「奇跡」なんてのはそうそう起こらないから奇跡なんだよねえ、、w)


俺は手元資金(事故の保険金)と、とある人からの援助資金を使い、ほどなく独立して自分の治療院を立ち上げることにした。


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