大地の洞窟 9
湿った大地の洞窟をようやく脱出し、帰還アイテムを取り出す。この小さなクリスタルに全ての希望を託す瞬間は、何度経験しても緊張する。両手で慎重に握りしめ、精神を集中させる。周囲の景色がゆがみ始め、身体が浮かび上がるような感覚に包まれる。次に目を開いた時には、既に街の帰還ポイントに立っていた。
乾いた風が頬を撫で、街の喧騒が耳に戻ってくる。戦いの緊張感が少しだけ薄れ、疲労が全身に押し寄せる。それでも、足を止めるわけにはいかない。今日の成果を確認し、次への準備を整えなければならない。換金所へ向かう道すがら、足音が無意識に軽くなっている自分に気づいた。
換金所の扉を押し開けると、金属の響きや冒険者たちの話し声が耳に飛び込んでくる。自分と同じように素材やアイテムを持ち込んだ冒険者たちが列を作り、順番を待っている。換金所のスタッフがテキパキと対応する様子が見え、どこか安心感を覚える。
自分の順番が来ると、大きなカウンターに素材を一つずつ並べていく。まずはアースクローラーの結晶核。光を受けてわずかに輝くこの結晶は、洞窟の序盤で得た最初の成果だ。それから体液結晶、ストーンガーディアンの破片、守護者の大地の結晶。こうして一つずつ並べるたびに、あの戦いの場面が頭に蘇る。これらが全て自分の努力の証だと思うと、胸の中に少し誇らしい気持ちが広がる。
スタッフが慣れた手つきで素材を確認し、端末に情報を入力していく。大地の結晶や結晶核の希少性を説明されながら、査定額が伝えられる。すべての素材が計上されるまで、数分間がやけに長く感じられる。結果が出るたびに、少しずつ期待と安堵が積み重なっていく。
アースクローラーやアースサーペントの素材だけでもなかなかの額になり、さらにストーンガーディアンとラヴァストンビーストの素材が加わると、最終的な金額は大きな数字になった。端末に表示されたその数字を見て、心臓が一瞬だけ跳ねる。合計320万円。この額が、すべての苦労を形にしてくれた。
紙幣が詰まった封筒を受け取り、スタッフに軽く会釈して換金所を後にする。この320万円は、単なる金額ではない。一つ一つが自分の力で勝ち取ったものであり、次の冒険に向けての重要な資金だ。この成功を糧に、さらに成長するためにどう使うべきかを考える。
街の喧騒に戻ると、成功の余韻に浸る間もなく次の目標が頭をよぎる。新たな装備を購入すること、ポーションや道具を補充すること。そして何より、次のダンジョンでどんな敵が待ち受けているかの情報を集めること。考えるべきことは山積みだが、この街の中にはそれを叶える手段が揃っている。
次の一歩を踏み出す準備を整えながら、街の賑わいの中を歩いていく。今手にしている報酬は、自分の未来を切り開くための力だ。この一瞬を無駄にせず、次の冒険を成功させるために全力を尽くそうと心に誓う。
***
防具専門店に向かう。この先、さらに厳しいダンジョンに挑むことを考えると、装備の充実は最優先だ。防具に300万円近く費やせる余裕がある今、妥協は許されない。最高の防具を手に入れるため、店の扉を押した。
店内に足を踏み入れると、並び立つ防具が視界に飛び込んでくる。その中でもひときわ目を引いたのは「ガイアプレート」。圧倒的な防御力を誇るこの胸当ては、地属性モンスターの素材から作られており、価格は120万円。外殻には強化された硬化岩が組み込まれ、どんな強力な一撃にも耐えうる設計だという。重さを感じさせない構造で、動きやすさも申し分ない。手に取ると、冷たい金属の感触が伝わり、これが頼りになる相棒だと確信した。
次に選んだのは「テラシールドガントレット」。80万円の価格は高いが、それだけの価値がある代物だ。この腕防具は、敵の物理攻撃を受け流す特性を持ちながら、土属性攻撃の威力をさらに高める補助効果も備えている。指先までフィットする設計で、持った武器に違和感なく力を込められる。これなら、攻防両面で役立つことは間違いない。
最後に目を奪われたのは「グラウンドスタビリティブーツ」。地形に応じて足元の安定感を保つ魔法が組み込まれており、険しい地形でも抜群の性能を発揮する脚装備だ。価格は100万円。特に悪路や振動の激しい場所での使用を想定して作られており、次のダンジョン攻略には欠かせないだろう。実際に試着してみると、足首を包み込む安定感が頼もしい。
店員が精算を進める間、新たに手に入れる防具の性能を頭の中で整理する。ガイアプレートが前線での防御力を一手に引き受け、テラシールドガントレットが攻撃と防御のバランスを取る。そしてグラウンドスタビリティブーツが悪路での安定感を提供する。これだけ揃えば、次の戦いへの準備は十分だろう。
支払いを済ませた後、購入した防具をその場で装備する。新たな防具の重量感とフィット感が、戦いへの自信を高めてくれる。店を後にしながら、これらの防具がどれほど自分を支えてくれるのかを思い描く。次の冒険に向けた期待が胸の中で膨らみ始めている。準備は整った。さあ、次は腹ごしらえだ。
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