曇り空とマスカルポーネ
Rotten flower
第1話
カーテンを開ける。一ヶ月ほど前までは日が燦然と差していたのだがここ最近、心做しか曇り空の日々が多いような気がする。テレビの予報ではここ来週までも晴れの日がないらしい。
袖をまくると冷蔵庫の中を見た。最近、
普段はあまり買わない「マスカルポーネチーズ」なるものを興味本位で買ってみたのもそのためだ。それ以外にも色々と普段よりも少し高い食品で今日は料理をすることにした。あの子も普段よりは元気を出すだろう。
「お母さん。」
凛音が扉を開ける音がした。寝ぼけ眼を少し擦るとリビングのソファに座った。スマホを手に取るとなにかを入力しているようだった。
「おはよう。今日はぐっすり眠れた?」
「うん。お陰様で。」
引きつった笑顔だった。その後に聞こえた笑い声もとても乾いているように聞こえた。
凛音が食卓に座る。私なりの隠したエール、心に届いてくれるかな。そう願いながら娘の食べている姿を見る。黙々と、淡々と。作業のように食べているのを見て私は少々気落ちした。
んなことに負けて溜まるか、と私は娘に少しでも笑ってもらいたい。その一心で受け売りの雑学を出した。
「今日の料理に使ってるマスカルポーネチーズ、傷みやすいのよね。鮮度が大事なんだって。」
「新鮮なものがいいってこと?」
「そういうこと、まぁそれだけなら大体のものにも言えちゃうんだけどね。」
凛音の表情が余計に暗くなった気がするのは喜のせいだろうか。私が空気を読まなかったのが悪いのかもしれない。
「おはよう。」
お父さんがリビングへと入ってきた。凛音はその頃には朝食を食べ終わっていて逃げるように学校へと出発していった。
「お父さん。」
この際凛音も居ないことだし、思い切ってお父さんに相談しちゃおう。
「ん?」
「最近、凛音、元気がないと思わない?」
「気のせいじゃないか?」
「お父さんが最近、なにかしたんじゃないかなって思って。」
曇り空とマスカルポーネ Rotten flower @Rotten_flower
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます