アルカナ物語

@Arukana78

第一章 旅の始まりとエースの力

第1話 目覚めた異世界とスートの力

タカシが目を覚ましたのは、青白い光に包まれた無重力の空間だった。身体は軽く、意識が曖昧なまま漂っている。死の直前の記憶が脳裏をよぎる。


「そうだ……車が突っ込んできて……俺は……」


しかし、ここはあの衝突の瞬間とは全く異なる場所だった。上下左右の感覚が曖昧で、目の前には奇妙な光の帯が揺らめいている。次の瞬間、低く響く声が空間を震わせた。


「目覚めよ、選ばれし者。使命を果たせるのはお前だけだ。」


声は優しさと威圧感を同時に秘めており、言葉を拒む余地を与えない。タカシは声の方に顔を向けたが、そこには何も見えない。ただ、言葉が頭の中に直接流れ込むような感覚があった。


「この地は四つの属性――火、水、風、土――により保たれている。しかし、その調和は50年前に崩れ去った。逆位置となった属性たちは、人々に苦しみを与え、この地を荒廃させている。」


タカシの内面には、理解し難い恐怖と好奇心が渦巻いていた。自分は死んだはずだ。それなのに、なぜ生きている?なぜこのような話を聞かされている?


普段の冷静な性格から、無意識に思考を整理しようとする。


「これは夢か?それとも……死後の世界……?」


だが、思考がまとまる前に声が続けられた。


「この世界を支えるためには、四属性と中央の力を正位置へと戻す必要がある。その使命を託す者、それがお前だ。」


「もし使命を果たせば、元の世界に戻ることを許そう。」


タカシは拳を握りしめた。心の中には戸惑いと疑念があったが、同時に、小さな安堵の感覚が湧いてくる。「帰れる」という言葉は、この異様な状況の中で唯一の救いだった。


「お前には四属性の『エース』の力を授ける。これを使い、使命を果たすがよい。」


すると、光の帯が急に形を変え、四枚のカードが宙に現れた。それぞれのカードには「ワンド」「カップ」「ソード」「ペンタクル」と書かれたシンボルが刻まれている。


「これが……力?」


タカシがそれぞれのカードに触れると、脳内に言葉が流れ込む。


ワンドのエース: 「炎の力を呼び起こせる。」

カップのエース: 「癒しの力を与える。」

ソードのエース: 「武器に力を宿す。」

ペンタクルのエース: 「守りの壁を作り出す。」


手にした力が実感として伝わってきた瞬間、タカシの中に小さな自信が芽生える。同時に、これらが何のために与えられたかを悟る。


「戦え、ということか……」


「この地図を持って行け。お前の最初の目的地は南方にある小さな村だ。そこには炎の調和が失われ、争いの絶えない人々がいる。彼らを救え。」


「行け、選ばれし者よ。」


その声を最後に、タカシの意識は暗闇に飲み込まれた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る