SAVER
バクチ
第1話「都市」
事件現場から押収された、被害者である「ジョー・マッケンジー」警部補の手帳より
「愛する妻、そして息子へ
父でいることは大変だったが、自分で思っている通りの父親であれたでしょうか。勇気ある父親であれたでしょうか。
アマンダ。君はいつも私を支えてくれたね。喧嘩を多くしたが、いつでも君を愛していた。
そしてジミー。お前はいつもゲームばかりで、キャンプに誘っても乗り気ではないが、俺の事を愛してくれてるのは知っている。去年の誕生日にくれたプレゼントは本当に嬉しかった。
これから2人には僅かな苦しみを背負わせてしまうかもしれない。俺はいなくなる。幸い俺は警官だ。殉職手当から出される金で、金銭で困ることは無いだろう。
アマンダには苦労をかけてしまう。
最後に。I love you。」
その手帳をゆっくり眺めているのは、背丈の高い、全身青いタイツに身を染めた男だ。首元からは赤いマントが風に煽られてはためいている。
「どうです? ロードリーダー。」
現場に居合わせた警官が、彼にコメントを求める。少し離れてマスコミが彼をカメラに収めている。
「彼は……強かった。強い男だった。筆跡が震えていない。恐れていない。……"首元に爆弾を括り付けられても"、恐れなかった。英雄だ」
彼がそう言うと、警官は気まずそうに目を逸らしながら言った。「ページを捲ってみてください。」
そう言われた通りにページをめくると、「死にたくない」とミミズがはったような線で大きく書かれた文字が登場した。
「……死を恐れない者などいないのです」警官は悲しそうに呟いた。
「"アーバンゲリラ"は今どこに?」
「一切行方が分からないのです。ただ、この瞬間にも突如として現れて、あらゆるものに爆弾をくくりつけ去っていく可能性がある。"ゲリラ的"な登場には、ロードリーダー、あなたも手に負えないのでしょう」
「ああ、そうだ」
「"フラテル・ピース"は?」
「彼は基本的に17番地からは出ない。アーバンゲリラもそれをわかってかそこには現れない」
「そうですか。……アーバンゲリラの目的は何でしょうか」
「期待に添えなくて申し訳ないが、全く分からない。彼が"単独"なのか、"組織"なのか、さえ」
「……我々も同じです。彼が何者なのかすら追えていない状況です」
─────ロードリーダー。
8年前に起きた大災害から述べ980名を救い出すという偉業を成し遂げ、世界の新たな出発の"道標"として政府からヒーローとして公認されている。
彼をきっかけに"特別調査免許"という資格が創設された。とはいえ、このこの免許を受けている者は合計4人で、その上活動しているのはロードリーダーと、彼の相棒「フラテル・ピース」のみになるのだが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます