青い瞳の外人さん

Rie🌸

第1話 良かったら使ってください。

セミの音がミンミンと鳴く。

真夏の暑い日。

ラジオから玉音放送が流れていた。

15歳の道子は髪を二つ結びにして、白い半袖で紺のモンペを履いて、父さんと母さんと5歳年下の弟の直樹と一緒に聞いていた。

『偲びがたきを偲び~』

父さんや母さんが啜り泣く。

弟は訳がわからないという顔で、私を見てきた。

「お姉ちゃん?」

「戦争が...戦争が終わったのよ。直樹!」

良かった。やっと終わった。

戦争なんて良くない。そう言うと非国民と呼ばれた。そんな生活がようやく終わる。

これからは好きな服も着れる。どこへだって出掛けられるんだ。


◇◇◇

戦争が終わって数ヶ月後、日本は復興の最中だ。私はさくらんぼの模様のワンピースに下駄という格好で、友だちに会いに出掛けた。

「道子。米兵には気を付けるんだぞ。」

「そうよ。何をされるかわからない。暗くなる前に帰りなさい。」

戦争が終わってから、両親はずっと暗い。


◇◇◇

街中にはアメリカの兵隊が何人もいる。

この道は学校に行く時もよく通るのだ。

下駄の音をカランカランとしていたから、金髪で青い瞳のアメリカ兵が私の前に立ちはだかる。

私はビクッとしつつも、何でしょうと尋ねた。

持ってた箱を開けた。


そこには赤い靴が入っていた。

「可愛い」


「Please use it if you want.」

道子は何と言ってるかわからない。

彼はゆっくりとした口調で日本語で話した。

「よかった..ら、使って.くださ..い」

(良かったら使ってください)

「私に?」

(靴をくれるの。)

道子は胸が温かい気持ちになる。

確か英語が話せる友だちの幸代ちゃんにお礼を教わってたな。

「thank you」

満面の笑顔で言葉にした。

すると、彼は頬が薄く紅潮した。


道子は早速靴を履いて、下駄を箱にしまう。

頭をペコリと下げて、その場を離れていく道子。

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青い瞳の外人さん Rie🌸 @gintae

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