水星の気持ち
あめのあいまに。
第1話 春の日の夕暮れ
それはある春の日の夕暮れ。
「ねえねえ、みなちゃん」
「なあに? ひなちゃん」
遠足で欠かせないお菓子は何かという話題で盛り上がる
「私たちって星に
ひなちゃんは好奇心旺盛で、すぐに興味があっちへいったりこっちへいったり。
公園デビューからの幼馴染である私にとっては慣れっこだけど、小学校ももう中学年になるというのに、この落ち着きのなさはちょっとだけ心配かもしれない。
「そうだなあ……」
でも、私はそんなところも含めてひなちゃんが好きだった。
引っ込み思案だった私の手を引っ張って、いろんなことを教えてくれたから。
「間違いなく、ひなちゃんは太陽だね!」
「ええ、私が?」
「うん! ぴったりだよ!」
驚くひなちゃんに私は大きく頷いた。
だって、ひなちゃんって明るくて元気でいつも皆の輪の中心にいて、まさに太陽って感じだもん。
私もひなちゃんの笑顔に何度も助けられたし、一緒にいるだけで温かい気持ちになれる。
「それなら、みなちゃんは水星だね」
満面の笑みを浮かべてひなちゃんが私に言った。
「水星かぁ」
名前は知っているけれど、どんな星かはあんまり知らない。月や太陽と違ってこの目で見たこともない。
だけど、なんだかとってもしっくりきた。
どうしてだろう。水という字が入ってるからかな。私の苗字にも入ってるし、それに水泳をやってるから水にはなんとなく親近感が湧くし。
そういえば、水泳を続けてるのもひなちゃんのおかげなんだよね。
最初は親にスイミングスクールへ入れられて嫌々始めたんだけど、泳ぐ姿が格好良いねってひなちゃんに褒めてもらえたのが嬉しくて。
今では大分上達したけど、それがなければとっくにやめてたと思う。
「お姉ちゃんは金星かなー。モデルやってるもんねー。あとはー」
私が考え事をしている間にも、ひなちゃんはあれこれと知り合いを星に当てはめていた。
そういえば水星って太陽に一番近い
それってなんだか私たちみたいじゃない?
「ふふっ」
そう考えると思わず笑みがこぼれた。
「どーしたの?」
「ん-ん。なんでも」
ひなちゃんはそこまで考えていないだろうけど、私はそれでも嬉しかった。
願わくばずっと、二人一緒にいられますように。
日の沈んだ西の空に輝く名も知らぬ星に願いながら、私たちは惑星トークを続けるのだった。
きっと私は今日という日を忘れることはないだろう。そんなことを思いながら。
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