超不定期連載 途中で挫折したらすみません【鏡堂達哉怪異事件簿外伝】〇〇大学リケジョ女子会

六散人

【序】

某日、〇〇大学近辺にある居酒屋<阿陀茂栖亭あだもすてい>。

この店は和洋中韓エスニック、何でもリーゾナブルな価格で食べられる学生向けの居酒屋で、いつも学生たちで満席状態だった。


そしてその日店の片隅で、〇〇大学リケジョの猛者たちが集う、恒例の女子会が開催されていたのだ。


会の出席者は先ず緑川蘭花みどりかわらんか

工学部流体力学講座の講師で、この会のリーダー的存在である。

彼女は〇〇県警捜査一課班長である鏡堂達哉きょうどうたつや警部補の元妻であることも、一部の関係者の間で知られていた。


そして本日の幹事は田村薫たむらかおる

薬学部薬物作用学講座の助教で、毒物研究のエキスパートであった。


彼女の同期で、工学部地質構造学講座の助教をしている弓岡恵子ゆみおかけいこは、筋金入りの鉱物オタク。

「いつかレアメタルの大鉱脈を掘り当ててセレブになる」などと常々息巻いているのだ。


そして最後に控えるのが〇〇大学きってのフードファイター、薬学部微生物講座助教の栗栖純子くるすじゅんこだった。


「今日もいつもの<1,480円目一杯飲み放題3時間コース>で予約してますんで、遠慮なくガンガン飲んじゃって下さい。

蘭花先生はいつものように、テキーラをボトルごと出してくれるよう頼んどきました。


食事もいつもの<2,980円コースデザート付き>ですので、計4,460円になります。

純子さん、事前準備OKですか?」


田村に訊かれた栗栖は彼女に笑顔で返す。

「来る前に<カドヤ食堂>で、カツカレー特盛とナポリタン食べて来たから大丈夫」


「相変わらず凄い組み合わせですねえ。

まあいいや。


それじゃあ飲み物持って来てもらいましょうか。

恵子も純子さんも、いつものでいいですよね?」


田村がそう言って振り返ると、ベテラン店員が飲み物とお通しを用意して既に待ち構えていた。

4人とも長年の常連客なので、店の方も慣れたものである。


田村の音頭で乾杯し、一皿目が運ばれてくると、何時ものように<貢物>として弓岡・田村コンビからもらった皿と自分の分の計二人前を、栗栖純子がペロリと平らげてしまう。


その間に蘭花は既にテキーラ3ショットをキュイッと飲み干し、弓岡恵子と田村恵も焼酎ロックの2杯目に入っていたのだった。


少し酔いが回った所で弓岡が蘭花に、

「今日は於兎子さん来ないんですか?」

と尋ねた。


「於兎子ちゃん(〇〇県警捜査一課天宮於兎子てんきゅうおとこ刑事)も由紀子さん(〇〇県警国松由紀子くにまつゆきこ鑑識課員)も今日は忙しいみたい。

佐和子先生(国松佐和子、工学部材料形態制御学講座准教授)も出張みたいね」


「そうなんだ。残念。

ところで例の鏡堂さんと於兎子さんの仲は、その後どうなんでしょうか?」

弓岡の突っ込みに、蘭花は渋い表情を浮かべた。


「由紀子さん情報によると、達哉は超にぶいし、於兎子ちゃんは超奥手だから全く進展なしみたいね。

しかしあなた、元妻の私に向かってよくそんなこと訊くわね」


「いやあ、だって。

お二人は蘭花先生ご推奨の仲じゃないですか」

「まあ、そうなんだけどね」


「今度女子会に鏡堂さんと於兎子さんを呼んで、無理矢理くっ付けちゃったらいいんじゃないですか?」

そこで一品目の皿を二人前平らげながら、栗栖純子が笑顔で口を挟む。


「そのシンプルな発想が、ある意味凄いです」

田村薫が二品目の<貢物>を栗栖に差し出しながら、心底感心したように言った。


「そんなことより今日の議題って何だったっけ?」

ここで蘭花が強引に話題転換を行った。


「そうでした。

今日の議題は「過去の不思議体験」です。


鏡堂さんや於兎子さんと付き合ってるせいか、最近この手の話題多いですよね。

という訳で皆さんが体験した、不思議な出来事をシェアしましょうという趣旨です。


ホラー、ミステリー、SF何でもありということで。

科学者らしからぬ議題で盛り上がりましょう。

では初っ端は私が切らせて頂きます」


そう言って幹事の田村薫はグラスの焼酎ロックをグイっと飲み干すと、お代わりを頼んでおもむろに語り始めたのだった。

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