第十六話: 手作りランプの灯り
エルム村の夜は静かで、星がきらめく空が広がる。しかし冬の夜は長く、村人たちはそれを楽しむための工夫を凝らしていた。その一つが「手作りランプ」。村では毎年、各家庭でランプを作るのが恒例行事となっているらしい。
「フィオも作ってみる?」ミナが誘ってくれたのは、村の広場で開かれるランプ作りの集いだった。興味津々で参加することにしたフィオは、広場に集まった村人たちに迎えられた。テーブルには色とりどりのガラス片や小枝、布切れなどが並んでいる。
村の子どもたちが楽しそうに材料を選んでいる中、フィオは何を使おうか迷っていた。すると、ミナが透明なガラスの小瓶を手渡してくれた。「これが基本の形になるの。あとは好きなものを貼り付けて、自分だけのランプを作るのよ。」
フィオは瓶を手に取り、そばに置いてあった淡い青と緑のガラス片を選んだ。瓶の周りに並べてみると、森をイメージしたようなデザインになりそうだ。
「いい感じね!」ミナが隣で笑顔を見せる。フィオは自分の手で何かを作るのは久しぶりだったので、少し緊張していたが、ミナの励ましで心が和らいだ。
ランプ作りを進めていくと、村の長老がそっと近づいてきた。「初めてにしては、なかなか見事だのう。」長老の言葉にフィオは照れながら答えた。「ありがとうございます。でも、まだまだですよ。」
「ランプはの、形だけじゃなく、灯したときの心地よさが大事じゃ。あんたのランプは、きっと優しい灯りをともすだろう。」長老の声には深い安心感があり、フィオの胸に暖かな思いが広がった。
やがて完成したランプを持ち、村人たちはそれぞれ自分の家へと戻っていく。フィオもランプを手に、自分の家の窓辺に置いて火を灯した。
ほのかな青と緑の光が室内を優しく照らし、窓ガラス越しに雪の風景を映し出していた。フィオはその美しい光景に思わず息を飲んだ。「こんなにも穏やかな気持ちになるなんて……」都会の喧騒では感じられなかった静けさが、心に染み渡る。
その夜、フィオはランプの灯りを眺めながら思った。この村の暮らしは、ただ便利さや豊かさでは語れない、本当の豊かさを教えてくれるのだと。
手作りランプの淡い光が、フィオの新しい日常に溶け込んでいくようだった。
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