テーマ: 追い風
いいぞ、ツイてる。
始業式の朝、廊下を競歩する彼女が通り過ぎた。
正月明け早々、
月曜日が始業式というハズレ年だったが、
その憂鬱さを吹き飛ばす幸運に
二年参りに行って良かったなあと神様に感謝する。
10円で良いことが起こるとか、コスパ良すぎる。
自分に向かい運の追い風が吹いて来たと感じてしまう。
妄想の追い風は先に進む彼女の髪を揺らす。
綺麗に切り揃えられた長い髪が素敵だ。
サラサラツヤツヤでつい見てしまう。
遅行しそうでも廊下は走らないと言う真面目さ素敵だ。
走ってはいけない、でも歩いていていては間に合わない
そのギリギリを見極めた競歩だ。美しい。
彼女の足跡を辿るように歩く。
ストーカーではない。
目的地が同じなだけだ。
ひと足先に教室に滑り込んだ彼女を目で追うと
自分の席に座り、
後ろの級友と何やら楽しげに話している。
ああー!これが毎日見れるだけで幸せだと思い出した。
嬉しさを顔に出さずに横を通り過ぎ、
一番後ろの席に座る。
残念なことに彼女は前を向いてしまった。
顔が見たかったのに残念だ。
そう思った時、先ほどまでおしゃべりしていた子が
背中をつついて何やらささやいた。
振り向いた彼女のその顔。
照れたようなはにかんだような嬉しくてたまらない
を噛み締めてようやく平常心を保っているような顔。
ぱくぱくと動く口が何を言ったかわからないが、
多分”あけおめ”だ。
ああ、ああ。
新年からいいもの見た…!
神様ありがとう、ありがとう、ありがとうございます。
神に深く感謝をしていたら起立し損ねて浮いた。
笑うクラスメイトの中に彼女もいた。
今年もよろしくお願いします。
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