アプリ:描く習慣を使用_2025

いちさん(えいのーと)

テーマ:君と一緒に




よし、決まった。



年末に滑り込みで美容院に行って来た。


髪はお母さんが時々使ってる

シャンプーとトリートメントを使わせてもらった。

乾かす時はお兄ちゃんのヘアドライヤーを

使わせてもらった。

さっきヘアアイロンで寝癖を解消した。


今日の私はツヤツヤサラサラヘアで決まってる。

年末年始に不摂生せず、

ちゃんと起きてちゃんと食べてちゃんと動いた。

おかげで肌のコンディションもバッチリだ。


眉毛は昨日の夜痛みを堪えて整えた。

顔剃りもした。もちろん鼻の下の産毛なんて許さない。


今朝眉毛を一本一本毛の流れに沿って書き足し、

自然なぼかしも入れた。

アイラインは自然にほんのり。

チークもほんのり。

パウダーは肌の上をくるくるさせて

毛穴という毛穴を消した。

リップはほんのり血色が良いベージュ。


ナチュラル、あくまでナチュラル。



どう?今日の私は冬においてほんのり日が差して見える

柔らかさじゃない??

前から横から後ろから。


制服に着替え、鏡の前で全体チェック。

む、アホ毛がパヤパヤしている。


慌ててヘアバームでアホ毛を押さえる。

スプレーをかけてスタイリングをナチュラルに整える。


ふう、危なかった。



ぼさぼさの髪なんて見せたくない。



だって今日は始業式!

新年初めて会うのに手抜きな姿は見せたくない。

よし!今度こそカンペキ!



鏡に決めポーズをしていたら兄の顔が映った。




「お前、今何時かわかってる?」




おげえええ。



完璧な姿に相応しくない変な声が出た。



みっともない。

冬休みの間も毎日スマホでやりとりしてた。

電話も動画付きで話してた。

でも直接は会ってない。



だから生の私は格別でしょ?をやりたかった。



明るく笑ってあけおめーと言い、

完璧な姿で、優雅に、

君と一緒に登校したかった。



なのに。



なのにどうして今

みっともなく走ることになってんの??



セットした髪はボサボサで、

ナチュラルメイクは汗でドロドロになってる。

眉毛だけはウォータープルーフなので

流れてないはずだ。


学校の予鈴がなる頃に息を切らして教室に滑り込む。



おはよ。



息を切らして席に座ると背中をちょんと突かれる。



ふっくらした、ニコニコ笑う君がいた。



「ここみちゃーん、待合せしたのにごめんなあ」

「ふふ、私もさっききたばっかやねん」



あやねちゃん、こやんから電話しよう思うたんやけど、

迷ってるうちに私もやばなってなあ。

ごめーん!て謝りながら走ってた!



「それ時間守らんかった私が悪いやん?」

「こやんのやし、はよ連絡すれば良かったねん」



おあいこ、おあいこ。

ニコニコ笑ってはいおしまい、と言う彼女の笑顔に

込み上げてくるものがある。

私はいつもにこにこ出来るここみちゃんが好きだ。


彼女に会う時は、

あやねちゃん今日もかわいいなあと言われたい。


これが友情なのか恋なのかはわからないけど、

今、世界で一番笑顔が見たくて

褒めて欲しい人は間違いなくここみちゃんだ。



新年明けましておめでとうを完璧にやりたかった。



なのに、危うく遅刻に巻き込むところだったとは!

しかも相手は寛大に許してくれる。菩薩か。



あーしくったなあ。



しょんぼりしながら先生を待つ。



つんつんと、もう一度背中ををつつかれる。



「言い忘れたけど、今日の髪綺麗やなあ」



サラサラツヤツヤで見惚れてしもうたわ。

教室入って来た時天女さんかと思うた。



こ、この天然の褒め上手め!



うまい返しをしたかったが、ようやく絞り出せたのが


『言い忘れてたけどあけおめ』



だけだった。



今年もよろしくお願いします。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る