第5話 憑きモノ
男の子にってか、その「石」に残滓した霊ってのが、このアシッド・アタックの被害者の女性だったの。
その子はずっとお母さんが言っていたような現象が、今度は自分にも現れ出してその事をお父さんに相談すると、お母さんの時にも馴染でお世話になった霊媒師を手配してくれた。
霊媒師の人は部屋に入るや否や、玄関先にある靴箱の上にインテリアっぽく並べて置かれていた「石」を指さして、この時は速攻で事の原因を突き止めたらしい。それまでは押し入れに収納されたままだったけど、今はあからさまに外へ出してたから直ぐに分かったみたい。まぁ、そこそこの霊媒師って感じだよね。
しかしその人は「感じる」だけでそれ以上、例えばお祓いとか除霊とか何かが出来るわけでも無く、案件が巡りに巡って古杣さんの所へと話がやって来た。
あ、因みにその石を捨てればいいとか、そんな中途半端なことしたり考えちゃダメよ。特にこの子の場合、年月が長すぎたの。霊の居場所が川から完全に「この子の傍」へ移っちゃってるから、霊の思念を成就するしかもう方法はない。『浄霊』するしかないの。
要するにこの霊は生前、ある日BARとかで飲んでた時に近くに住む外国の人に一目惚れされて、突然にも求婚されたんだけど断ったらアシッド・アタックを顔とかに受けて自分の人生に絶望を感じ、あの親子が遊んでいた川に身投げしちゃった霊なのね。その恨みが強く残り、なんとか復讐をしたいと此の世に残っちゃっている。
その霊との話を、古杣さんが聞いたってことね。
その後、犬のチャコの時と同じように桃ちゃんの『クレア・タンジェンシー(霊触感能力)』でその石に触れてその時の残滓を感じて、ボクの『クレア・ボヤンス(霊視感能力)』で犯人の顔を確認して、シャルの『クレア・サリエンス(霊嗅感能力)』で足取りを追う。
今回は残滓そのものである霊自体が近くに居るから、「共鳴感現象」は簡単だったよ。
そうすると、その犯人はまだ同じ場所で暮らしていることが分かった。
改めて幽霊さんにどうしたいかを聞くと、この女性の怨念、願いはその石を犯人の部屋に置いて来て欲しいとのことでした。
みんなで色々と話し合ったけど、結論的にはどうしてもそうしないと男の子への憑きモノとして『浄霊』が出来ない所まで憑いちゃってたのよ・・・・・・
ボクの目の前で泣き崩れ、無念として震えているその姿は怖いとかの恐ろしさは全く無くなって、可愛そうで切なくて、いつの間にかボクも一緒に号泣してた。共鳴しちゃってるその場では他のみんなも泣き出して、どうしてもこの女性の霊に思入れしちゃうのも無理はなかった。
この幽霊さんの事件からもう、十年以上経っている。
梓さんのお得意先である病院関係者の偉いさんに頼んで周辺の皮膚科、形成外科のデータを見せてもらうと何件も何らかの酸や火傷を負った女性の被害が浮き彫りとなり、この犯人の犯行だろうと思われる似た事件がいくつも出てきた。
これはもう、流石に許せない!!
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