喧嘩領域(バトルフィールド)!

しょうわな人

第1話 掟破りにより死す

 ここに、幼少より喧嘩をしても負けた事がないおとこがいる。


 名を上棟じょうとう剣牙けんかという。


 年齢は三十一才。


 上棟が相手に突きつけるルールは一つ。


 素手すでである事、ただ一つだ。


 それ以外は髪の毛を掴んで引き摺り回しても良いし、目に指を突っ込んでも良いし、喉を潰しても良いし、指を取って折っても良いし、股間を潰しても良いし、要するに何でもありだ。


 そして、上棟はこれまで九百九十九戦無敗である。


 常勝無敗の上棟は今日も地元の暴力団員である、惡井わるい掟破じょうはに喧嘩を売られて買っていた。


「惡井よ、お前は一度俺に負けてもう喧嘩を売るような真似はしませんって土下座したのを忘れたのか?」


 その対決の時に上棟は惡井の玉の一つを潰している。


「うるせぇよ、上棟! 手前てめーみたいな素人トーシロ面子めんつを潰されたままだと俺は組にいられねぇんだよっ!! 今日は手前てめーをぶっ殺してやるっ!!」


「出来もしない事をベラベラと…… まあ良い。今日はもう一つの玉も潰してやるよ。お前みたいな奴は子孫を残すべきじゃない」


 上棟がそう言った時に惡井は懐に手を入れて拳銃を取り出した。


「おい、ルールを忘れたのか? 素手が俺との喧嘩をするルールだぞ」


「馬鹿野郎が! 勝てば良いんだよ、勝てば! 手前てめーはここで死ぬんだよっ!!」


 言い終わりに惡井は上棟に向けて発砲した。弾は上棟の心臓に見事に当たった。


「へっ、へへへ、やった、やったぞ! 上棟の野郎をぶち殺してやったぞ!! ハワイで射撃訓練を受けたからな! ちゃんと心臓に当たったぞ!! へへへへ」


 そう言ってまだ立ったまま動かなくなった上棟に近づいていく惡井。立ったままの上棟を倒してやろうと腕を伸ばした時に、上棟の右手が動き惡井を引き寄せて背中向きにしてその首を絞めた。


 一瞬であった……


 腕を取られてギョッとなった惡井が何かを言う暇もなく首を絞められ、そして一息にその首をへし折られていた。


「へっ、これで千勝だ…… ぜ……」


 その一言を残してそのまま上棟も絶命したのだった……



 気がついたのは何故だと上棟は思っていた。


『やあ、お目覚めだね。上棟じょうとう剣牙けんかくん。僕は君から見たら異世界となる星【ステゴロ】の創造神だよ』


「【素手喧嘩すてごろ】だとっ!! 上等じゃないか、あんたが俺の相手か!!」


『ストーップ! 違うから。落ち着いてドウ、ドウ! 君は地球で惡井くんによって銃を持ち出されて死んでしまったわけなんだけれど、僕から一つ提案があってね。それに乗ってくれるなら僕の創造した星【ステゴロ】に転生させてあげるよ』


「何だかキナ臭いな…… その提案っていうのは何だ?」


『フフフ、ズバリ、君に封印から復活する魔王を完膚なきまで叩き潰して貰いたいんだ!』


「何だぁ? 魔王だ? あんた神様なんだろ? 何であんたがヤらないんだ?」


『神界のルールってやつでね…… 僕たち神は例え自分の創造した世界であっても干渉は出来ないんだよ。それで、どうかな? 乗ってくれるなら君に相応しい祝福ギフトを授けるよ』


「ギフト? そりゃ何だいったい?」


『新鮮だね、その反応。最近の地球人はラノベの影響でこう言うと直ぐに「ギフト来たーっ!」とかって叫ぶから。ギフトは技能スキルと違って神からの祝福しゅくふくを授けるって事なんだ。スキルと同じように使えるけれども、使用する際の魔力消費が極端に少なくなっているんだよ』


「ふーん、そのスキルって言うのも良く分からないが、俺みたいに喧嘩しか能が無い者を転生させてもその魔王とやらを倒せるか分からないぞ」


『その点は大丈夫。君にとって相応しい祝福ギフトを授ければ、レベルさえ上げれば魔王だって目じゃないぐらい強くなるからね』


「そんなギフトがあるのか? それなら俺以外でも大丈夫じゃないか?」


『いやいや、君が適任者なんだよ。僕が授ける祝福ギフト、【喧嘩領域バトルフィールド】は君の為のものだ!』


 創造神のその言葉に上棟の血は熱くたぎった……




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る